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第3話「帰路」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

 氷都を出発したシュカは南に向かって、我武者羅(がむしゃら)に飛ぶ。


 途中、南天らしき街も通り過ぎ、その後は江原の村を目指して飛んで行く。


 だが、しばらく経たないうちにシュカを悩ませる存在が現れる。


 それはゲオルキアで初めて遭遇したべラクイラよりも一回りくらい小さな巨鳥の群れだ。


 地上で馬車に乗って移動していた時には遭遇することが無かったビスティアだったため、シュカにとっては想定外の事態だった。


 まさか、それが一番厄介な問題だと、その時は思いもしなかった。


 見た目はべラクイラに似ているが、彼らはアキピテル(鷹に似た鳥類)だろうか。

 実は美貂たちから空飛ぶビスティアの話を聞いていたのだが、すっかり失念していた。それだけ焦っていたということでもあるだろう。


 群れで行動しているアキピテルたちは、もしかするとべラクイラよりも厄介な敵の可能性がある。

 とはいえ、早速ホムタが貸してくれた短剣を使う時が来たようだ。


「あの頃の僕とは、一味も二味も違うよ」


 意気揚々と迫ってくるアキピテルたちに対して、牽制をしようとして短剣を振り被る。


「は?」


 シュカは目の前で起きた出来事に愕然とした。

 軽く力を込めたはずが、アキピテルの翼を簡単に斬り落としていたのだ。


 それに初めて振るったにも関わらず、妙に馴染む。


 桁違いの切れ味を誇る短剣を見つめて舌を巻くシュカだったが、一瞬怖気づいていたアキピテルたちが再び襲い掛かって来るのに気付いて我に返る。


「この短剣、上等すぎて絶対傷物にできないんだけど……」


 傷物にする心配もそうだが、もしシュカが死んでしまえば、短剣を返すこともできなくなってしまう。受けた恩を仇で返したくはない。


 だから、まずはサヴィノリアに帰らなければいけない。

 決意を固めたシュカは、踊るように敵の急所を狙う。


 しかし、アキピテルたちも単純ではない。

 シュカを仕留めようとして、一斉に襲い掛かってくる。


「『未来を切り開く一番風!』」


 越冬の時期を間近に迎えた陽気な気候の中、シュカの短剣から一陣の風が吹き荒れる。

 ここで死ねないという想いが一撃に込められたのは間違いないが、あまりにも衝撃的な光景がそこに広がった。


 シュカを取り囲んでいたアキピテルたちは自分が斬られたことを認識する間も無かっただろう。その身が真っ二つに切断されて、墜落していった。


「えええ。この剣ヤバすぎ……」


 地上に落下していくアキピテルたちが二次被害を起こすことがないかを見届けるために、シュカは下降することにした。

 そうしたのはこのまま飛び続けて、空のビスティアと戦いになるのを避けるためでもあった。


 だが、地上付近を飛ぶようにしたシュカにさらなる困難が待ち受ける。

 今度は忠猫が退けてくれていたような地上のビスティアが襲い掛かって来たのだ。


 彼との実力差を知りたいと思って、彼らと戦おうと考えたのは完全な間違いだった。


 いざ戦ってみると、ホムタの短剣のおかげで苦戦はしなかったが、体力の消耗が激しい。

 改めて忠猫の強さを思い知ることになった。


 ビスティアと戦いながら帰ることもできなくはないが、それでは時間が掛かり体力も無駄に消費することになるだろう。


 仮に大陸を抜けたとして、最終的にサヴィノリアに辿り着くまでには長距離長時間の飛行が待っている。


 地上のビスティアを避けようとすると、空のビスティアとの遭遇が避けられず、陸空双方のビスティアの存在がシュカを酷く悩ませるのだった。


 大陸に来た頃よりも多少は強くなったという自信を持っていたが、あまり足止めを食らうわけにもいかない。


 そこで極力ビスティアとの戦いにならないように、南へ直進する道から外れるようにした。


 しかし、その選択のせいで、余計に時間が掛かってしまったのだ。


 そうは言っても、確実に勝てないとわかるような存在感を放つビスティアも確認したため、戦闘を避けたこと自体が間違いとは言い切れない。


 結局、南天から江原の村に着くまでに五日も掛かってしまった。


 地上を馬車で進んだ時よりも明らかに時間を失っている。

 今更だとわかってはいるが、南天で乗り合い馬車を探したほうが早かっただろう。


 距離だけ考えれば、南天から二日もかからずに江原の村につけるものだと思っていたのだ。


 シュカの想定では村で少し休憩させてもらった後、サヴィノリアに向けて出発するつもりだった。

 だが、ビスティアたちに追い掛け回されたせいで、かなり疲労が溜まっていたらしい。


 ついに江原の村の敷地内にシュカが降り立つと、足に力が入らずに膝をついてしまう。

 そこにいたのは、別れを告げた際にはここまで早く再会すると思ってもいなかった美貂だった。

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