第15話「企み」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
「全部が俺のシナリオ通りに進んでいた。まんまと踊ってくれて最高だったなあ。それなのに、なぜかこのタイミングで黎火の民の二人組がシャンに現れやがった」
雪駿は下卑た笑みを浮かべながら話している。
「俺たち、警戒されてたのか」
ホムタとヤヒコは顔を見合わせて苦笑いするしかなかった。
「むしろ、碧空の民のガキなんか取るに足らない存在だと思ってた。そんなガキが俺の計画を阻止するなんてな」
「なるほどな……。俺は王になる以前から、お前に騙されていたのか」
冷備は過去を悔やむように空を見上げる。二十年という時間は長すぎる。
「俺は……。父を殺し、我らを苦しめ続けたお前のこと、絶対に許さない」
怒りで震える馬威の右拳に力が込められると、雪駿の鳩尾に一撃を叩き込む。
抵抗もできない雪駿はそのまま地面に倒れ込むだけだった。
「殺して、しまったのか?」
冷備の問いに馬威は首を振る。
「いや、生きてる。お前との戦いの後でそんな力は残ってないさ。それとこれも壊したかった。……これでようやく、我らを苦しめるものが無くなるんだ」
そして、馬威が力を込めた拳の中で楔石が砕け散った。
「そんな石ころを早く壊してくれていたら……なんて今更か。こいつは生かしてくれて助かった。聞きたいことは山ほどある。兵士たちよ、こいつは厳重に拘束して牢にぶち込んでおけ!」
指示を受けた兵士たちは白目を剥いている雪駿を手際よく拘束し、氷都に戻って行く。
それを見届けると、もう立っているのも限界だったのだろうか。馬威はその場に座り込んだ。
すると、興奮した様子のホムタがシュカに詰め寄って来た。
「あのタイミングで突っ込むとか、命を捨てる気の大バカ野郎って思ったけど、大活躍じゃんか! それで、どこにあんなすげえ力を隠してたんだよ」
「あれは僕の力じゃないよ。一度だけ僕にも使えるように貸してもらったんだ」
借りた力で二人が止まらなかった場合、他に打つ手は無かったわけだが、なんとか止まってくれて良かった。
「あん? 貸してもらったって、誰にだよ?」
「あれは誰だったのかな……碧空の、英雄?」
碧空の護り手とは言っていたが、シュカはどことなく英雄シヴォンの面影を感じていたのだ。
「なんで疑問形なんだよ」
「正直、僕もよくわかってなくて……。まあ、戦いは終わったし、今は細かいことなんて気にしなくていいんじゃない? そんなことより王様、氷魂草はいただけるのでしょうか?」
双方の民の代表は和平を約束してくれた。
しかし、シュカにとっては氷魂草を持ち帰れるかのほうが重要だった。
「シュカよ、大義であった。約束は違わぬ。王宮にある氷魂草は明日渡すことにしよう。今は兵も街も混乱しているだろう。少しだけ時間をくれるか?」
「はい。ですが、実は一株だけでは足りないみたいで……」
碧空の護り手に見せられた光景では少なくともそうだった。
時間が掛かるほど広まる以上、量が不足しているのは間違いないだろう。
「そうか……。であれば、琥獣の民が氷都に入れるようになるには少し時間が掛かる。その代わり、彼らには荒雪山へと氷魂草を取りに行く協力をしてもらう。なあ馬威、良い案じゃないか?」
「それくらい構わない。シュカにも少し恩を返せそうだ」
冷備の提案を馬威が受け入れる。むしろ乗り気に見えた。
「だそうだ。皙氷と琥獣の民が協力して、まとまった量の氷魂草を届けよう」
「ありがとう、ございます!」
シュカは深く頭を下げる。
シャンに暮らす二つの民が助けてくれることに感謝の気持ちでいっぱいだった。
顔を上げると、二人も笑顔になっている。
シュカは初めて彼らの笑顔を見たかもしれない。
そこでようやく、自分の力では無いとしても、偉業を成し遂げたということを実感した。
「これはシュカ殿の功績ですから、もっと胸を張って良いんですよ。ほら、ミコのようにこうやってね」
ヤヒコが示したホムタは、まるで自分がこの戦いを終わらせたと自慢するかのように、仁王立ちしていたのだった。
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