第14話「止めたい想い」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
「……これは、お前がやったのか?」
しばらくの沈黙の後、状況を把握しようと辺りを見渡していた馬威がシュカに向き直って言った。
「はい、僕がやりました」
しかし、その大きすぎる力の代償にダンシュの剣は折れてしまった。
「面白い。どこにそんな力を隠していたのか、俺たちの渾身の技をまとめて消し飛ばしやがった」
冷備は吹き飛ばされたのにも関わらず、なぜか楽しそうにしている。
「そんなことはどうでも良いんです! 結局この戦いはやめてくれるんですか!?」
シュカの要求はただ一つ。
最初からそれは変わっていない。
「それは……」
答えに詰まった馬威が俯く。
すると、その視線の先に何かを見つけたようで足下にあったそれを拾い上げた。
「これは……俺が冷備にあげた御守り。お前はこれをずっと持っていたのか?」
馬威はそれを懐かしそうに眺めている。
「お前だって……こんな石ころをいつまでも」
冷備も近くに落ちていた宝石をその手に掴んだ。
吹き飛ばされて宙に舞った拍子に落ちてしまったのだろうか。
「……わかった。琥獣の民はもう戦わないことを誓う。シュカの想い、確かに聞き届けた。恩人に仇で返すような不義理はしない」
「皙氷の民も撤退を約束する。琥獣の民が氷都に入ることを禁じていた決まりも撤廃しよう。シュカには苦労を掛けたな」
そして、二人が立ち上がる。
馬威は体力が限界なようで少しよろけてしまったが、隣に立つ冷備がそれを支えた。
かつての親友だった二人は、戦いが終わったことを示すように拳をかかげてぶつけ合う。
それを合図に周囲の皆が長き戦いの終わりを理解し、喜びを分かち合うのだった。
「やった……。ついに、戦いが終わった……」
シュカはようやくこの瞬間が訪れたことに歓喜し、膝から崩れ落ちる。
最後は借り物の力ではあったが、戦いを終わらせるきっかけになったのはその勇気に違いなかった。
「王よ、その宝石は本来ここにあってはいけないもの。私がお預かり致します」
戦いが終わったことを見て急いで来たのか、雪駿が冷備に駆け寄る。
「なぜここにあってはいけないのだ? 理由を話せ。お前は何を隠している!」
冷備が雪駿を問い詰めるように迫った。
彼に宝石を渡してはいけない。なぜか胸騒ぎがする。
しかし、力を使い果たしたのか、上手く立ち上がれない。
気付いた時には、ヤヒコとホムタが傍に来ていた。
「やはり! それが楔石でしたか!」
ヤヒコが冷備の持つ石を指差しながら、大声を上げる。
「まずい――」
その声を聞いた雪駿が咄嗟に踵を返す。
「いえ、もう遅いです……。絶対に逃がしませんよ」
しかし、瞬時に移動したヤヒコが雪駿の喉元に短剣を突き付けていた。
「さて、聞かせてもらおうか。雪駿!」
冷備は雪駿にすべてを話させようと脅しかける。
「くっくっくっ……。最後くらい馬鹿な王に教えてやるよ。そいつが言った通り、それは楔石だ。寒冷化を人工的に引き起こすな。つまり、皙氷の民と争わせるために、俺が琥獣の民を煽ってたんだよ!」
雪駿は一切悪ぶれることなく、堂々と真実を語った。
「あなたが犯人であることは調べがついていました。ただ、その証拠となる物が見つからなかったのです。あの時は見間違いだと思っていましたが、本当に楔石だったとは……」
ヤヒコも今回ばかりは本当に落ち込んでいるように見える。
だが、その調査力のおかげで雪駿の逃亡を防ぐことができたのだ。
「つまり、二十年前に先代の王と王妃が暗殺された事件も、お前の企みだったのか?」
「ああ、そうだよ」
冷備の問いを雪駿が頷いて肯定する。
「これまでのことが、すべて貴様の企みだった……だとっ!」
馬威が怒りに任せて雪駿の首元を掴む。
複雑な心境に違いないだろう。
父親の死、苦しめられた琥獣の民。
それもすべて一人の男によるものだったのだ。
よそ者のシュカでさえ雪駿のことが許せそうにない。
そもそも二つの民を争わせてこの男が何をしたいのかも理解できなかった。
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