第13話「目覚め」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
「あ?」
シュカが呟いた言葉をホムタはまだ理解できていないらしい。
それはシュカにとって好都合だった。
また飛び出すことがないようにと、押さえつけられてはいるが、シュカが目覚めたばかりだからか、そこまで力は込められていない。
「ホムタ。ごめん……!」
しかし、シュカはその手を振り切って飛び出す。
「バカ!! 今だけはマズい――」
「冷備。……俺はもう限界だ。これで終わりにする」
シュカの視線の先で、馬威が立ち止まって言った。
「馬威……。俺もクタクタだ。これはお前への餞にさせてもらおう」
対する冷備も不敵な笑みを浮かべている。彼も決め手を準備していないはずがない。
「『天駆ける暴れ馬、総てを薙ぎ倒す』」
馬威が放ったその技はまるで空を駆けていく天馬のような姿をしていた。
雄々しき天馬は冷備目掛けて駆けて行く。それは周りのすべてを砕かんとする衝撃波の塊だった。
「『乱れ舞う剛凍、塵芥残さず』」
冷備が放った術は幾千もの氷の欠片の集合体だった。
それらが一つとなって蠢いているように見えるが、それぞれが鋭利なナイフと同等で、触れたものを切り刻まんとする。
相手に決定的な攻撃を与えようと放たれた二人の一撃は磁石のように惹かれ合う。
その光景を周りの者たちが固唾を飲んで見守っている。
決着が付くであろうその瞬間をーー。
しかし、二つの技が衝突する直前、その間にシュカが割り込んだ。
「あんのバカ! あほんだらぁぁああ!!」
ホムタの罵声が聞こえてくるが、もう止まらない。
「大丈夫。僕が皆を……『一切合切を護りし、荒雄風』」
言葉を紡いだシュカの周りに風が集う。
旋風はさらに新たな風を呼び、それが連鎖して巨大な暴風へと成長する。
それは碧空の護り手が見せてくれた通りの力だった。
シュカが辛うじて制御しているその暴風は辺りに積もっていた雪を巻き上げて吹雪を生み出し、一帯を白で包み込んだ。
大技を放った二人はというと、自分の技が破られてしまえば、その時はどうなっても構わないとでも言うようにその身を委ねているようだった。
しかし、二人の想定とは裏腹にいつまで経っても衝撃が訪れることはない。
ようやく二人が目を開けた時、目の前の光景に驚愕したことだろう。
「「はっ?」」
二人は宙に投げ出されていたのだ。
なぜそうなっているのか理解が及んでいないのだろう。
時が止まったかのようにぽかんと固まっている。
そして、そのまま地面に投げ出されて二人並んで尻餅をつく。
二人は何が起こったのかとお互いの顔を眺めている。
だが、それだけで原因がわかるわけもない。
すぐには立ち上がれない二人のもとに、その元凶であろう人物が姿を現した。
「こんな戦い、もう止めてください! 親友だったあなたたちが戦う必要なんて無いじゃないですか! 二人だけじゃない! なんで、かつて共存できた民同士がいがみ合っているのか、疑問に思わなかったんですか!?」
二人はシュカの言葉に耳を傾けてくれている。
どうにか自分の想いが届いて欲しい。
とにかくその一心でシュカは話し続ける。
「あなたたちはこれからの世界を生きていく子供たちのことを考えているんですか? こんなに振り回して、巻き込んで、琥獣の民には命を落とした子供だっています。皙氷の民で未来を断たれた者は数え切れません。もうこれ以上、人が無駄に命を落とす悲しい世界に……しないでくださいよ」
シュカは思いの丈を二人にぶつけた。
この国に来てから知った悲しみや怒り、憎しみ。知ってしまった感情を無かったことにはできない。
この苦難を乗り越えて明るい未来を築くことができなかったら、命を落とした者たちが全く報われないことだろう。
シュカはどうか戦いをやめると宣言して欲しいと祈りながら、静かに二人の返答を待つのだった。
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