第12話「借り物」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
「そう焦るな」
「それなら僕にどうしろと……」
焦るなと言われても、逸る気を抑えられるわけがない。
「お前にはまず国の危機を知ってもらいたかった。その目で見た人間の窮地はどうにか救いたいと思うだろう?」
「僕の力で救うことができるなら、ですけど。誰であっても困っている人を見過ごすことはできません!」
そこで困っている人がいるなら、碧空の民でも、皙氷の民でも、琥獣の民でも、黎火の民でも、誰であってもシュカは救ってあげたいと思う。
「そうだろう、そうだろう。だから、他でもないお前にしたんだ。責任感の強さ、誰にでも公平な優しさ、そして未知の世界にも飛び込んでいく勇気。大切な心を持つお前だからこそ、その白い翼が託された。その石がお前のもとにあるのは単なる偶然かもしれないが」
「この翼が託されたもの!? それにこの石も、何か特別なものってこと……?」
突然知らない情報ばかりを知らされて、シュカの頭は混乱していた。
「白き翼は英雄の証。力を持たないわけではない。まだ使い方を理解していないだけなのだ。お前は確かに英雄の力を引き継いでいるのだから」
「……僕が、英雄?」
それが本当なら、自分は英雄シヴォンと何か関係があるということなのだろうか。
「しかし、力の使い方を手解きする時間は無いようだ。今すぐに目の前の戦いを止められなければ、悲劇が起こるのだろう?」
「はい……」
英雄の話はさておき、時間が無いというのは明らかである。
「そこで、未熟なお前に一度だけ力を貸そう。良いか、この力は一度しか使えないぞ」
そう言って、碧空の護り手が目の前に風を発生させる。
意識だけのシュカがその場から吹き飛ばされることはなかったが、突如目の前に災害が発生したかのような暴風だった。
「……!? この力なら!」
碧空の護り手が貸してくれるというその霊力なら、あの二人を止められるかもしれない。
「お前はもっと自分の力を知り、そして自信を持ちなさい。その石に少し力を貰っていたようだが、躊躇いは真に守りたいものを守れなくしてしまうぞ」
「……僕は自分の力で大切な人を守れるようになりたいです。……ですが、今だけはこの力をお借りします!」
いつかは必ず自分の力だけで大切な人たちを守れるようになりたいとは思うが、今はまだそれができない。
それでも、できないなりに足掻きたいとシュカは思っている。
「気持ちは固まったようだな。それなら戻りなさい。皆の危機を救えるのは、白翼を託されたお前以外にはいない……のだ、から……」
碧空の護り手には他にも聞きたいことが山ほどあったが、そんなシュカの意志とは関係なく、意識は薄れていくのだった。
* * *
「……い……ュカ……おい、シュカ!」
「……! ホムタっ!」
目を開けると、目の前にホムタの顔がある。
氷都に戻って来れたようだ。
今は自分の身体も自由に動かすことができる。
「急に倒れて、どうしたんだよ?」
ずっと支えてくれていたらしいホムタが心配そうに覗き込んでくる。
「いや、僕は大丈夫なんだけど、どれくらい気を失ってた?」
二人の戦いが終わっていないことを確かめるためにシュカは起き上がった。
まだ戦い続けているようだ。
ふと身体の内側から込み上げてくる力を感じて、先程の光景が夢ではなかったと理解する。
この力を使ってあの二人を止める絶好の機会を見つけなければいけない。
「大丈夫って、マジでびっくりしたんだからな! つってもそんなに時間は経ってねえよ」
ホムタの心配はもっともだと思うが、正直そんなことはどうでも良かった。
とにかく、あまり時間が経っていないことに安堵する。
激しかった二人の戦いも、大分穏やかになっていた。
お互いが決め手にすべき霊術を準備しているのだろうか。
決着は近そうだ。
「良かった……。なんとか間に合ったみたいだね」
シュカは笑顔を浮かべ、二人が動き出すのを待つのだった。
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