第11話「碧空の護り手」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
「え、誰!?」
それは全く聞き覚えの無い声だ。
未知の老爺の声にハッとして目を開けると、目の前に広がる光景にシュカは自分の目を疑った。
そこには氷王宮が見当たらない。
先ほどまで立っていた雪深い土地ではなく、周囲には雲が浮いている。
見上げるほど巨大な柱が立ち並ぶ神殿のような場所で、似たような建物は見たことがあった。
「あれ……ここは、サヴィノリア?」
「サヴィノリアではないぞ。こっちだ」
老爺の声が真後ろから聞こえてきて、シュカは咄嗟に身構えながら振り返る。
そこにはシュカの身体よりも大きな椅子に座り、白く長い顎髭を生やした老人がいた。
「あなたはいったい……?」
「私は碧空の民を密かに見守るただの老いぼれだ。仮に碧空の護り手ということにしておこう。お前は何故力を求める?」
目の前の老爺がなぜそんな問いかけをするのか、シュカにはわからなかったが、自然と口が開いた。
「僕が力を求めるのは妹を助けるため、目の前の二人の戦いを止めるため、そして皆の想いを守るために、力が必要なんです!」
シュカは碧空の護り手に迫ろうとするが、思うように体が動かない。
まるで自分の身体ではないような感覚だった。
「力なら既に持っているだろうに、それでは足りないのか?」
「今の僕の力では、ダメです……」
「今すぐ力が欲しいということか。それは困ったな……」
老爺が顎髭を弄りながら思考していたが、何かを思いついたようでパチンと指を鳴らすと、突然辺りの景色が変わった。
「え!?」
そこは今度こそサヴィノリアの上空だった。この景色を見間違うはずがない。
落下してしまうと思ったシュカは慌てて翼を広げようとしたが、そもそも身体が自由に動かず、不思議と地面も近付いてこなかった。
「飛ぼうとしなくても問題無い。今は意識だけを飛ばしている」
いつの間にか碧空の護り手がシュカの隣にいる。
原理は理解できなかったが、先程の空間と同じように自由に動き回ることはできないようだ。
そのまま流れに身を任せていると、見覚えのある家が見えてきた。
「ここは僕の家……ってことは、ジュナ!」
自宅の屋根を通り過ぎ、そこにいたのは妹のジュナだ。
彼女は今も炎呪と戦い、苦しんでいる。
出発時よりも赤い斑点が広がって病状は悪化し、衰弱しているように見えた。
傍にはドルナがいてくれて、寝る間を惜しんで看病しているのか、かなりやつれているようだ。
「お前の妹だな。さぞ苦しいだろう……。ところが――」
碧空の護り手がまた指を鳴らすと、見知らぬ家の寝室に移動する。
寝床には横たわる男と看病している者の姿がある。
そして、寝ている男の肌にはジュナと同じ赤い斑点が浮かび上がっていた。
「あれは、炎呪……」
「炎呪にうなされているのは、もうお前の妹だけではないのだ」
「もう、そんなに時間が……!」
それから、シュカは炎呪に罹って苦しむ民の様子を止め処なく見せられた。
その中には同年代の見知った顔も幾つか混ざっている。
大抵が誰かに看病してもらっているが、一人で苦しむ者の姿もあり、薬師たちが忙しなく患者の家を回っているようだ。
シュカが見せられただけでも、既に数百人以上の患者がいた。
浮島全体に広がってしまうのも時間の問題だろう。
ただ、王宮関係者の患者がいないためか、国が動くほどの危機と捉えられていないことがもどかしい。
やはりジュナを救うためには、自分が氷魂草を持ち帰らなければいけない。
「急がないと! 早く僕を氷都に帰らせてください!」
とにかく時間が惜しい。
早く氷都に戻らなければいけないのに、戻り方すらもわからない。
頼れるのは目の前にいる碧空の護り手だけらしい。
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