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第10話「足りないもの」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

「話し合って解決できるならなあ……そもそもこんな戦いは起こらねえんだよ! どうしても止めたいって言うなら、熱くなってる二人の間に割り込んでみろよ。お前なんか一瞬で氷漬けにされて、拳で粉々に砕かれて死んじまうんだぞ!」


 ホムタの怒りはもっともだった。

 シュカの死は妹の死に直結してしまう。それだけは避けなければいけない。

 無謀と勇気は違うのだから。


「だけど、僕は二人を止めたい。二人を止める方法は本当に無いの!?」


 感情が昂っている今なら、押さえられているホムタの手でさえも振り払えそうな気がしたが、それはしない。

 今がその時ではないことをシュカもわかってはいる。


「俺だって、止めたいって思ってんだよ。……でも、まだその時じゃねえ。二人が疲れて動きが鈍くなった時、そこに一縷(いちる)の望みがあるんじゃねえか」


 両者の実力が均衡しているため、いつか二人が疲れを見せる時が来る。

 行動を起こすなら、その瞬間しかないということだろう。


 ホムタのおかげか、シュカも少しずつ冷静さを取り戻し始めていた。


「シュカ殿、あなたまで熱くなってはいけません。今はどうにか(こら)えてください。あの二人もこのまま戦い続けることはできません。必ず来る絶好の機会まで何卒我慢を」


 ヤヒコも協力してシュカを引き戻そうとする。

 確かに一時の感情に支配されてはいけない。


「最善の時を待つとして、僕には……何ができるんだろう?」


 シュカは首飾りの白石を握り締める。

 微かに力が湧いてくるが、それでも二人を止めるには全く足りていない。


「もっと力が無いと……」


 シュカの視線の先では馬威が冷備との距離を取った。

 彼も苦戦を強いられている。食糧難による空腹とこれまでの疲労が積み重っているのだ。


 冷備も疲労を感じているのは同じかもしれないが、明らかに馬威のほうが状態は良くなかった。


 黎雄将軍の氷の鎧を砕いた技も冷備には通用しない。

 馬威が最大限の力を発揮できないように計算されて氷が生み出されているのだろうか。


「まったく、相変わらず邪魔な氷だ」


 冷備は距離を取った馬威に近付かず、眺めている。相手の体力が限界に近付いていることを冷備もわかっているのだ。

 それは誰もが感じていることであり、琥獣の民が不安そうに見つめている。


 だが、冷備は自ら攻めようとはしない。

 それは決め手を欠いているからだろうか。


 冷備が生成した氷は馬威の攻撃を受け止め続けたが、すべての攻撃を防ぎ切れているわけではない。

 必ずしも冷備側が優勢とは言い切れなかった。


「お前こそ、歳の割にちょこまかと動きやがって」

「それはお互い様だろ」


 いったん距離を取った二人がなかなか距離を縮めない状況に、疲労が限界に近くなっていることを誰もが悟った。

 ホムタとヤヒコが言っていた絶好のタイミングも近いのかもしれない。


 しかし、このままでは二人を止める術が無いことも紛れもない事実だった。どちらかが相手にとどめを刺してからでは遅いのだ。


 盗人を捕らえた時のようにホムタと連携できれば可能性はあるのかもしれないが、手を出せないホムタに期待することはできない。


「僕がやらなきゃ誰も止められないのに……。でも僕には力が無くて、何もできなくて――。二人に勝る力があれば、止められるのに……。なんで僕には力が無いんだっ!!」


 そして、シュカは誰にでもなく願う。


 二人を止めるための力が欲しい。


 とにかく祈り続ける。


 すると、握り締めていた白石が熱くなる。


 この白石はいつもシュカに力をくれた。


 べラクイラの時も、盗賊の時も――。


「――お前は力が欲しいのか?」

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