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第8話「再会」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

 謁見の間の玉座で、退屈そうに座っていた冷備が立ち上がる。


「そろそろだな……」

「な、何をなさるつもりですか?」


 冷備の行動を不審に思ったのか、雪駿が尋ねる。


「あ? 何って、俺が出るに決まってるだろ!」

「王自らですか!?」


 雪駿が慌てて聞き返すが、冷備にとっては当然のことだった。


 一瞬の沈黙の後、数人の兵士たちが慌てて謁見の間に入って来る。

 彼らは大きな何かを担いでいる。


 それは馬威に敗れたであろう黎雄だった。


「恐れながら申し上げます。黎雄将軍が率いていた部隊はあえなく敗戦、撤退しております」

「ご苦労。やはり荷が重かったな」


 想定通りの報告に冷備は笑う。

 しかし、雪駿のほうは報告に驚いているらしい。


「これ以上の犠牲は無駄だ。黎雄で勝てぬなら、俺が決着を付けるしかあるまい」

「ですが、彼らも限界が近い様子。わざわざ王が骨を折らずとも、もうじき決着がーー」


 雪駿が引き留めようとするが、冷備は止まらない。


「俺に指を咥えて見ていろと? ふざけるなよ! 氷都の民に被害が及ぶなんてことは俺が王である限り、絶対にさせない!」


 強者の霊気を辺りに撒き散らした冷備はそのまま謁見の間を後にする。

 最も近距離でそれを受け、尻もちをついた雪駿は恐怖で手足の震えが止まらず、立ち上がれなかった。


      *           *           *


 黎雄の隊を退けた後、琥獣の民の窮地を救う出来事に遭遇する。

 普段なら厄介でしかないビスティアの群れに出くわしたのだ。


 その量は決して多くはなかったが、貴重な食糧になっただけでなく、自分たちが神に見放されているわけではないのだと、一行が立ち直るきっかけにもなった。


 目標としていた氷都も目前に見えている。

 それだけで彼らの士気が上がらないはずはなかった。


 ここまでの数日間、非常に長く苦しい時間が続いた。

 子供たちは疲労困憊といった様子で、大人に縋りつきながらもなんとか歩みを進めている。

 既に大人たちでさえも、足取りが覚束なくなっていた。


 そして、ようやく辿り着いた氷都の外壁手前には、今までと比べ物にならない数の兵士を引き連れて一人の男が待っていた。


 兵士たちの数は一万を超えているだろうか。


「冷備……二十年振りだな」


 馬威がいち早く氷王の存在に気付き、声を上げた。

 氷王の傍には宰相の雪駿もいる。


 王直々に出て来たということは、これ以上は進行させられないという意志表示でもあるだろうか。

 良くも悪くも、これが最終決戦になるということだ。


「老けたな、馬威」


 二十年振りの再会だというのに、彼らの間には張り詰めた空気が漂っている。


 二人はどことなく悲しそうに見えた。

 かつての親友との再会がこのような形で良いとは思えない。


 しかし、シュカの考えに反して、二人はいつでも戦えるよう臨戦態勢に入っている。

 相手の一挙手一投足に集中する二人の間に割って入ることなどできそうもない。


「誰一人として、手を出すことは許さない」


 冷備が後ろに控える兵士たちを見ずに言った。

 彼らは戦いの結末を見届けるため、そして氷都に被害を出さないため、配備されたのだろう。


 兵士たちのほうもこれから始まるであろう頂点同士の戦いに巻き添えにならないよう距離を取る。

 だが、雪駿一人だけがまだ冷備の傍から離れない。


「王よ、考え直してください。まだ間に合います。もしもあなたが負けることがあったなら、この国はどうなると言うのですか!?」


 しつこく詰め寄るその男を冷備は相手にしない。


「くどいぞ、雪駿。お前が琥獣の民をわざとここまで呼び込んだんだろう? お前の狙いなどは知らんが、これは俺と馬威の戦い。手も口も出すことは許さん」


「そ、それは――」


「言い訳は不要。ここで俺が勝てばすべて済む話だ。そういう意味ではあいつらをここまで連れて来てくれたお前には感謝しなければいけないな」


 身も凍るほどに冷えた冷備の視線が雪駿に向けられる。

 雪駿はその圧に怖気づき、何も言い返すことができないようだ。無言のまま他の兵士たちと同様に退避していった。


「だそうだ。こちらも手出しはいらない。巻き込まれないよう俺たちの戦いを見守っていてくれ」


 馬威も琥獣の戦士たちに合図を出して下がらせる。

 黎雄の時とは違い、前に出てこようとする戦士はいない。


 そして、馬威はいつも通り武器を持たずに身構えた。


 一方の冷備も、何も持たずに立っている。


 黎雄将軍のような重装備でもなく、動きやすさを前提とした軽装備ではあるが、素手で戦う姿を想像することができない。


 氷王は長身とはいっても、黎雄将軍と比べたら小柄で細身の男だった。

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