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第1話「出陣」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

 早朝、馬威率いる琥獣の民たちはスぺラグに再び戻るという誓いを立てた後、砦に向けて出立した。


 戦うことができない者は羊昭たちのグループと共に遅れて来ることになっている。


 しばらく雪道を進んだ琥獣の戦士たちは砦を確認できる辺りまで来て歩みを止めた。


 後衛に控えるシュカからもこれから攻める砦の姿が見て取れる。

 こちらはいつでも攻め込む準備が完了していた。


 琥獣の民が姿を見せたことで、皙氷の兵士たちが慌てた様子で砦から飛び出て、陣を形成し始める。


 連日の襲撃は初めてだったのだろうか。彼らが油断していたということはその可能性も考えられる。


「これから、戦いが始まる……」


 この後戦場になる砦と次々に現れる兵士たちの姿を恐る恐る見つめて、シュカは呟いた。


「そうだな。俺は慣れっこだから良いけどさ、見たくねえならもっと離れるか? どうせ俺たちは戦わねえんだからさ」


「いや……僕は、大丈夫」


 ホムタなりに気を遣ってくれていることがわかる。人同士の醜い戦い、本物の戦争が始まろうとしていることを考えると、鼓動が激しくなってきた。


 なんとか動悸を抑えようとしているシュカを気にすることなく、先頭に立っていた馬威が大声を上げる。


「我らの戦いは今ここから始まる。見せてやろう、琥獣の力を! 我らの怒りを! 手始めに、あの砦を攻め落とす!」


 その呼びかけを聞いた琥獣の戦士たちが士気を高め、開戦を今か今かと待ち構えている。


 それぞれがその巨体に合った剣、槌、槍などの様々な武器を持っている。まさに鬼に金棒と言えるだろう。


 だが、皆を鼓舞する馬威だけは何の武器も持っていなかった。


「馬威さんが武器を持ってないのは、戦わないってことなのかな……?」


 シュカの疑問にホムタが答える。


「そりゃあつまり、武器なんて必要ねえってことだろ」


 ホムタは武器を持たずに素手で戦うか、それとも得物を自身で生成するかのどちらかだと言いたいらしい。


 とはいえ、琥獣の民は基本的に何かを生成する(すべ)を持たないはずなので、その可能性は低いだろう。


「あんたらは族長の恐ろしさを知らねえんだな。それもすぐにわかるから、ちゃんと見ておけよ」


 集団の最後尾、三人の傍にいた若めの男が振り返って言ったが、シュカたちの反応を見ることなく向き直った。


「いくぞおおぉぉぉ!」


 馬威の掛け声を合図にして、琥獣の戦士の固まりが陣取っている敵兵たち目掛けて一斉に雪崩れ込んでいく。その数は三十人にも満たない少数部隊だ。


 対する皙氷の兵士たちの数は最低でも千人程度はいるだろうか。数では明らかにこちらが劣っている。


 しかし、琥獣の屈強な戦士たちは一切怯むことなく立ち向かう。


 琥獣の民は巨大な体躯と強靭な力を併せ持ち、戦闘に特化している種族である。


 一方の皙氷の民は決して体格に恵まれている種族とは言えない。


 皙氷の兵士が数で秀でているとはいえ、開戦直後は一方的な形になった。


 琥獣の民がその勢いのままに皙氷の兵士たちを蹂躙(じゅうりん)し始めたのだ。


 だが、皙氷の兵士たちもただやられているわけではなかった。


 氷の盾や壁が生成され、強固な守りとして琥獣の戦士たちの前に立ち塞がる。


 皙氷の兵士側に勢いが傾き始めるようにも思えたが、こればかりは相手が悪かったとしか言えないだろう。


 琥獣の戦士がその圧倒的な力の差を見せつける。

 頑丈なはずの氷の盾や壁は、戦士たちの激しい攻撃によって瞬時に破壊されてしまったのだ。


 たとえ皙氷の兵士が矢の雨を降らせ、槍で突き、剣で斬りかかっても、他の追随を許さない戦士たちの膂力(りょりょく)の前に捻り潰されるだけだった。

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