第14話「苦悩の二人」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
それがまるで死に急いでいるかのようにしか見えないシュカは胸が苦しくなる。
自分に何もできない不甲斐なさを痛感させられた。
気付くと周りの大人たちの姿はなくなっており、その場に残っているのは馬威だけだった。
そして、三人のもとに近付いて来た馬威が声を掛けてきた。
「恩人たちは手を出さないでくれるか? 我らを試す戦いに他の者の手を借りるわけにはいかない。そして、我らの邪魔をしないと約束して欲しいのだ」
真剣な面持ちでそう告げた馬威が頭を下げる。
「邪魔するつもりはありませんし、僕にはそれだけの力もありません。ただ、この戦いが本当に正しい選択なのか、今もわかりかねています。だから……僕は自分の目で見て、それを判断したいと思います。近くであなた方の選択を見守るため、裏で些細な支援をすることだけは許してください」
氷都に攻め込むにはまだまだ時間が掛かる。
それまでには答えを見つけることができるだろうか。
いや、見つけなければ絶対に後悔することになる。
「人手が必要な我らとしても有り難いことだが、本当に良いのか?」
シュカの決意を聞いて、顔を上げた馬威がホムタのほうを確認する。
「直接戦いに参加するのは御免だが、それぐらいはたぶん大丈夫だろ。どうせ、こんな寒くちゃあ、俺の力もほとんど使えねえしな」
ホムタが普段通りのあっけらかんとした調子で言ってのけ、ヤヒコもそれに同意する。
「私たちが直接戦わなければ、氷王も文句を言ってくることはないでしょう」
三人は夕飯を非常食で簡単に済ませて早めの就寝となったが、シュカはなかなか寝付けずにいた。
明日から本当の戦いを始めようとしている琥獣の民への不安と、彼らがより良い未来を描くために何か良い考えはないのか、ずっと考え続けていたせいもあり、なかなか寝付くことができなかったのだ。
外の風を浴びるために、音を立てないように注意しながら寝床を抜け出した。
「……あ? どうしたんだ、シュカ?」
シュカが外に出たことに気が付いたのだろう。
ホムタが声を掛けてきて、馬威たちを起こさないように忍び足でついて来た。
「……ちょっと、眠れなくて」
「そりゃあ仕方ねえって。これから戦いが始まろうとしてるんだから、安心して寝れる奴のほうがおかしいだろ」
どうやらホムタもシュカ同様に寝付けていなかったようだ。
「そうなんだけど。もし二つの民が戦い始めたら、この後どうなっちゃうんだろうなって不安で……」
琥獣の民の未来についてもそうだが、自分が本来この地へやって来た目的のことも忘れてはいない。
それもあって、気疲れしてしまったのだ。
「どちらかが降伏しない限り、この戦いは続くぜ。始まってしまった戦いは悲惨だぞ? 力の無い人間は簡単に死ぬし、その分さらに憎しみが募る。戦ってる奴らは次第に歯止めが利かなくなって、最後は目標を達成するか、命が尽きるまで止まれなくなっちまうんだ」
それが実際に起こった出来事のようにホムタは語る。
きっと実際に見た光景もあるのだろう。
彼の言葉には重みが感じられる。
「悲しい未来は簡単に想像できるのに、それを止める方法が思い付かないのが悔しいよ……」
「俺だって、戦いをどうやって止めれば良いのか、今も考え続けてる。それでも、やっぱりわからねえんだ。どうしたら争いが無くなる? どうしたら俺たちは悲劇を生まなくて済む?」
シュカは憂いを帯びたホムタの問いに答えることができなかった。
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