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第8話「族長」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

 彼らの土地、スぺラグを一通り見た後、羊昭が琥獣の民を統率しているという族長に会わせてくれた。


「俺が馬威(マーウェイ)だ」


 三人も自己紹介を済ませて、馬威の硬くて大きな手と握手を交わした。


 集落のリーダーというには少々若さを感じる馬威は、琥獣の民の中でも飛び抜けて大きな巨体をしている。


 彼が立っている時はまるでエクーズが後ろ脚で立ち上がったかのような見た目であり、その威圧感に身震いした。


 だが、その自然と生じる威圧感からは全く想像できない温和な笑みによって緊張が解れた。


 その後、帰還の挨拶周りをすると言う羊昭と別れ、三人は馬威の家に招かれた。


 食糧不足に困窮してはいても、できる限りのおもてなしをしてくれるそうだ。客人は族長が手厚くもてなすのが彼らの決まりなのだとか。


 今は老いてしまった家畜であるアグニュスやカペリーヌ(山羊に似た獣)の肉を焼いたものや蒸した料理が食卓に並んでいる。


 遊牧民独特の味付けで民族料理を披露してくれた。


「我らの恩人たちを十分にもてなすことができずにもどかしい……。すまないが、今はこれで我慢してくれるか?」


「いえ、とんでもないです。僕たちのほうこそ、あなた方の大切な食糧を奪うのは心苦しいですし、お構いなく」


 そうしてシュカが遠慮していると、馬威の陰に隠れ、指を咥えて目の前の料理に見入っている子供たちがいるのに気が付いた。


 やや小柄な子供は(よだれ)が出るのを我慢できず、垂れ流しにしている。


「はい、お食べ」


 放っておけなかったシュカは馬威の子供たちであろう彼らに、自分たちが食べるはずだった肉のほとんどを差し出した。


 ホムタもそれを拒否しない。

 むしろ、二人共そうしてくれと言っているような気がした。


 見るからに痩せ細った彼らを見てしまっては、どれだけ美味しそうな料理が目の前にあっても食欲が湧いてこなかった。


「いいの?」


 弟のほうだろうか、涎まみれで尋ねてくるので、シュカは笑顔で頷いた。


 本来彼らが食べるべきものを自分たちが奪っていると思うと、気が気でなかった。

 

 彼らが食べてくれたほうがシュカの心も晴れるというものだ。


 シュカの許可が出た後は馬威の顔を窺っていたようだが、彼が(うなず)くのを確認して二人が飛び出して来た。


「やった!」


 シュカに許可をもらった子供たちは、必死になって肉に(かじ)り付く。


「仲良く食べてね」

「「はーい」」


 良い返事をした時には、既に二人で分け合った肉塊をガツガツと食べていた。


「「お兄ちゃんたち、ありがとう!!」」


 それもすぐに食べ終えると、子供たちは外に出て行く。


 二人が立ち上がった時、シュカとほとんど変わらない背丈だったことに一番驚愕した。


「息子たちが、すまない」


 そう言って子供たちの声が聞こえなくなるまで頭を下げていた馬威の背中が目に焼き付いて離れなかった。


 シュカは改めてスぺラグに来た理由を馬威に共有することになった。


 氷魂草を求めてはるばるこの国を訪れたこと。


 その道中で出会ったホムタとヤヒコが同行していること。


 氷王宮にある氷魂草を手に入れるためには、冷備から悩みの種である琥獣の民の問題を解決するのが条件だと言われたこと。


 それらをできるだけ掻い摘んで話すのだった。

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