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第7話「奇遇」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

 ヤヒコの言葉に従い、三人は砦を出たものの、そのまま堂々と砦を越えて西方に向かうわけにもいかず、氷都に向かって少し戻りつつ、一行は立ち往生することになった。


 その空気を知ってか知らずか、寒さを克服して以来のホムタからは緊張感が感じられず、今はなぜかのんびりしている。


 ヤヒコに至っては変わらず落ち着いており、何か来たるべき時を待っているようにも見えた。


 このまま時間が経ってしまうのかという何とも言えない不安に、シュカは平静ではいられなかった。


 ついに何も事態が進展しないことに我慢できなくなって飛び上がる。

 少しでも息抜きができればと思ったのだ。


 すると、東のほうからこちらに向かってくる集団が目に入った。


 樹氷林の中を隠れるように進んでいる彼らは、砦に向かっているというわけではなさそうだ。


 彼らの姿を確かるためにシュカが近付くと、彼らも警戒を強めたが、はっきりと姿が見えた時、お互いに安堵した。


 幸運なことに、彼らは氷都の前で出会い、スぺラグに戻ると言っていた羊昭たちだったのだ。


「ふう、シュカ殿でしたか……。またお会いしましたね。それにしても、こんな所でいったい何を……?」


「ちょうど良かったです。ご相談があって、僕たちもスぺラグに行きたいと思っていた所だったんです」


 まさかヤヒコは先日のやり取りからこの出会いを予想していたのだろうか。


 すべてヤヒコの予想通りにいっているとは思いたくない。


 急いで二人と合流し、砦を大きく南に迂回するつもりだという羊昭たちに同行して、スぺラグへと向かった。


 その道中は砦周辺の兵士に見つからないように遠回りしたこともあり、そこまでの距離ではないのに時間が掛かってしまった。


 シュカとホムタは慣れない雪の深さに苦労させられるが、ヤヒコは飄々と歩いている。


 歩き慣れていない二人にペースを合わせて一行は歩みを進め、なんとか暗くなる前にはスぺラグに辿り着くことができた。


 そこには特徴的な建物があるわけではないが、なぜか心の奥がじんわりと温かくなり、まるでサヴィノリアに帰って来たかのような感覚に陥った。


 どことなく懐かしい雰囲気に目を細めていたシュカの目に写ったのは、天幕を張った住居群だ。それらは深く積もった雪に半ば埋もれているようだ。


 遊牧民である琥獣の民は移動に適したこの住居をかつては重宝していたが、今は全く意味が無くなってしまったのだと羊昭が嘆く。


 異種族の三人は琥獣の民の同胞を救った恩人として集落に迎え入れられた。


 羊昭たちに出会った時にも感じたが、スぺラグに住む琥獣の民は江原の村で出会った美貂たちよりも、ひと回り大きな身体を持つようだ。


 シュカが大人と顔を合わせるためには見上げなければならない。


 この体格ならば言わずもがな個々の力は強大で、皙氷の兵士が相手にならないのも無理はないだろう。


 とはいえ、琥獣の民には女性や子供、老人もいる。全員が戦うわけではない。


 そして、外からやって来た三人に向けられる彼らの柔和な表情はどう見ても好戦的な種族とは思えなかった。


 もう一つ特徴的だったのは、彼らの身体のほとんどが獣と変わらない見た目をしていることだった。


 寒さを凌ぐために毛皮を使った服を着ていることもあり、獣と見違えてしまってもおかしくないだろう。

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