第6話「戦う理由」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
「あれが、琥獣の民の力、なんだ……」
去り行く彼らの背中を見て驚愕していたシュカは口が開いたままになっていた。
皙氷の兵士との力の差は一目瞭然で、琥獣の戦士たちは紛れもない強者だった。
「でもよ、琥獣の民は比較的温厚な種族って話だろ。あまり戦いは好まないんじゃねえのか?」
「ええ、それは間違いありません。本来理性的な彼らは好んで戦わず、むしろ友好的な種族です。そんな彼らが問答無用で砦を攻めるには何か理由があるはず……。それに、皙氷の民を殺さないという配慮はミコも感じましたよね?」
「そうなんだけどさあ。なんか気持ち悪いんだよなあ。何かを訴えたいなら、いっそのこと殺しちまえば良いのに」
「おそらく、それが彼らの信念なのでしょうね」
シュカは静かに二人の話を聞きながら、ずっと頭を抱えていた。
琥獣の民が攻めて来る理由がどうしてもわからない。
温厚な民でありながらも、砦を攻めることになった事情。
その二つを繋げるためのピースが欠けている。
「兵士たちが言ってたことも、あながち嘘じゃなさそうだしなあ……」
ホムタがボソッと呟いた。
「そうですね。誰も嘘はついていません。今戦っている兵士たちはただ大きな荒波に巻き込まれてしまっただけでしょう。発端は氷都の前で出会った羊昭という男が言っていた急激な寒冷化、という点にありそうですが……」
「急に寒くなった原因……。それってさ皙氷の民の誰かが関わってるってことか? 本当のとこはどうなんだよ。鬼才のヤヒコさんなら、実はその理由も分かってんじゃないのか?」
「申し訳ございません。詳しい原因についてはまだ調査中でして。現状あの氷王宮と何らかの関係があると踏んでいますが、力及ばずで真相に至れておりません」
シュカからすれば、ヤヒコは寒冷化の原因について幾つかの可能性に気付いているようにも見えたが、決定的な事実に辿り着くにはまだ時間が掛かるとのことだった。
「羊昭さんみたいにさ、事情を直接聞けたら早いんだけどね……」
心の中でふと思ったことがつい口に出てしまった。
彼らに話を聞くには直接会うことが一番の近道である。少なくとも戦いの場で話を聞くのは困難であり、落ち着いた場所で会う必要があった。
そういえば、氷都の前で会った羊昭たちがスぺラグに戻ると言っていた。
「なら、琥獣の民に会いに行こうぜ」
ホムタは今はもう琥獣の民の姿が見えなくなった砦の先、西方を指差す。
「……ちょっ、ホムタ。確かにそれが一番手っ取り早いんだけど、でも彼らが暮らすスぺラグってどこにあるんだろう……?」
ホムタの提案はその通りだが、方法が問題だった。
雪深い地で闇雲に彼らの住処を探して遭難するわけにもいかず、これといった策もない。
それでもこのまま砦に留まったとしても、琥獣の民の事情はわからないままだろう。
冷備には悩まされている琥獣の民の問題を解決しろと言われただけで、砦にいなければいけないわけではない。
シュカの心の中では自分がどうしたいのか、気持ちだけは既に固まっていた。
「とにかく、俺は琥獣の民に会ったほうが良いと思うぜ。皙氷の奴らってあんま好きになれねえし、どうせこの戦いなんかも他人事としか思ってねえみたいだしな」
「ミコ。そういうことはあまり大きい声で言ってはいけませんよ」
悪口を言いがちなホムタをヤヒコが窘める。
「はいはい、わかってるよ。まあ行くのは良いとして、どうやって行くかだったよな」
「さすがのヤヒコさんでも、スぺラグの場所まではわかりませんよね……?」
シュカは頼みの綱であるヤヒコに問うた。
「シュカ殿、そんなに私を見つめられても何も出ませんよ。ここで話し続けるのもなんですから、まずは砦を出ましょうか」
ヤヒコの提案に従うことにした三人は、負傷した皙氷の兵士たちの治療を手伝った後、砦を去ることにしたのだった。
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