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第4話「悲痛な叫び」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

「あいつらは凶暴な化物だ。ビスティアと何も変わらねえ。話は通じないし、ひたすら暴力を振るう。きっと人間の心がねえんだ」


 初めて話を聞いたその兵士は、琥獣の民にひどい怪我を負わされたらしい。

 その時のことを思い出す度に身体の震えが止まらなくなるのだという。


 おそらくその怪我が治ったとしても、まともに戦うことはできないだろう。


「琥獣の民が、人間では、ない……?」


 ふと氷都の前で出会った羊昭たちのことが頭によぎる。彼らが理性を失って戦うだけの人たちとは到底思えなかった。


 それに江原の村で美貂や忠猫も琥獣の民であり、楽しく会話を交わしたことを確かに覚えている。


 砦を襲撃する琥獣の民には、何かそうせざるを得ない理由でもあるのだろうか。


「見ろよ、ここにはこんなに怪我人がいるんだぞ。救護の手も足りてなくて、カトゥリス(猫のような獣)の手だって借りたいんだよ。お前は俺たちが悪いって言うのか? この惨事を見たら、どちら悪いかなんてはっきりしてるだろ」


 広場で怪我人の介抱をしている兵士が少し手を止めて話を聞いてくれたが、その声からは苛立ちが感じられる。


 何百人と怪我人が横たわるこの悲惨な現場を見せられたら、救護の手が足りなくて皙氷の民のほうが困っていると思ってしまいそうだ。


 しかし、本当に琥獣の民が一方的に悪いのだろうか。

 何か見落としていることがあるのかもしれないと考えたシュカは、さらに聞き込みを続けることにした。


「こちらから攻めたことは一度も無いんだぞ。あいつらがいつも攻めて来るんだ。俺たちは何も悪くねえ」


 隅のほうで一休みしていた兵士が水を飲む手を止めて言った。


 案内してくれた兵士の言葉とも一致している。

 琥獣の民のほうから攻めて来ることは事実なのだろう。


「それでも、何も悪くないってことは無いだろうに……」


 自分たちには全く非が無くて琥獣の民が一方的に悪いのだと、どの兵士も同じ主張をする。


 琥獣の民が凶暴で危険だと怯えている姿や怪我人たちのことは憐れに思うが、彼らから恐怖と憎悪以外の情報を引き出すことができなかった。


 何のために琥獣の民が攻めて来るのか、一般の兵士たちは何も知らずに戦っているのだ。

 その理由は砦の指揮官ですら知らないのだろう。

 

 どれだけ同情したとしても、相手のことを理解しようとしない彼らの態度に、シュカは苛立ちを覚えた。


 まるで皙氷の民側は一切悪いことをしていないような言い草で、自分勝手な話をそれ以上聞いていることができなかった。


 このままでは判断材料にも乏しく、攻めて来る琥獣の民側の事情を知ることもできないだろう。


「琥獣の民が攻めて来たぞぉぉ!!」


 そんな折に、兵士の一人が砦内に響き渡るほどの大声で叫んだ。

 その声を聞いた途端、砦内の兵士たちが立ち上がり、慌ただしく臨戦態勢に入っていく。


 またかというようなうんざりとした表情を見せながら配置につこうとしている兵士たちをよそ目に、三人は邪魔にならないよう広場の隅のほうで静かにしていた。


 シュカにとっては二つの民が戦う姿をこの目で見る良い機会でもある。

 皙氷の兵士たちが出払った後、砦の戦いがよく見えそうな高台へと移動することにした。

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