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第3話「砦」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

 砦を去る犬橇を見送った三人は砦の正面に立った。


 石造りの砦は氷都付近でも石資源が豊富なのか、南天から持ち込んだものなのかはわからないが、頑強なものであることは理解できた。

 雪の下には南天の街で見たような石組の基礎部分が確認できる。


 三人はその砦の中に入った。


 この中には誰一人として皙氷の民がいない。

 ホムタとヤヒコは顔立ちだけなら皙氷の民に似ているが、肌の色が全く異なっている。


 そもそも皙氷の民以外の種族が砦を訪れたことが無かったのか、中ですれ違う兵士たちから怪しむ視線を犇々(ひしひし)と感じた。


 それでも氷王の書簡を見せて責任者の所在を問うと、若めの兵士が案内してくれた。ただし、案内中は終始無言ではあったが。


 砦の指揮官に書簡を見せると、形だけは王の客人として迎え入れてもらえることになった。

 つまり、異種族である三人が全く歓迎されていないということだ。


「私が直接案内したいところだが、いつ琥獣の民が襲って来るかも分からず、今はちょうど手が離せない。代わりの者に案内させよう」


「こちらこそ、忙しい時にお邪魔してしまい、申し訳ありません」


 指揮官に呼ばれたのは、執務室に案内してくれた若い兵士だった。

 明らかに嫌そうな雰囲気を醸し出しているが、そこは仕事だからと割り切って欲しいところだ。


 砦の中を歩いていると、中央広場の傍を通りかかる。


 そこでは怪我をして手当を受けたであろう兵士たちが、あちらこちらに横たわっていた。

 この光景を見ただけで砦の状況が芳しくないことがわかってしまう。


「彼らは皆、琥獣の民に怪我を負わされた兵士たちです……。幸いと言って良いのか、命を落とした者は一人もいません」


 怪我で苦しみ呻いている兵士の姿はたくさんいるが、人の死による重苦しい悲壮感は感じられなかった。それでも空気が悪いことには変わりない。


「なぜ琥獣の民は一人も殺めないのでしょうか? 彼らの目的はわかっているんですか?」


 若い兵士から明確な答えは返って来ないかもしれない。

 もしその答えがわかっているならば、今すぐにでも無駄な争いを止められただろう。


「いえ、わかりません。彼らは何をしたいのでしょうか。……大怪我を負って自力で動けなくなってしまった同胞もいます。殺していないとはいえ、これが許される行為だと思いますか?」


 シュカは兵士の問いかけに答えることができなかった。攻めて来る琥獣の民の事情がわからない以上、一方の立場だけで善悪の判断をしたくないと考えていたのだ。

 皙氷の民が苦しんでいることには同情するしかない。


 若い兵士に聞いた話では、わざわざ砦から皙氷の民が出兵して琥獣の民を刺激することは無いのだという。


 琥獣の民が攻めて来た場合にやむを得ず出兵するが、戦っても得る物がなく、頻繁に攻められてしまうため、兵士たちのほうが疲弊させられているそうだ。


 攻めて来る琥獣の民について、さらに情報を得ることができないかと思ったシュカは、他の兵士たちにも話を聞いて回ることにしたのだった。

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