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第2話「火術」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

「ふむふむ、こうだな!」


 ヤヒコの言葉を自分なりに理解した様子のホムタが力を込めた途端、一瞬で火達磨(ひだるま)になる。


 その様子を見たシュカは驚きのあまり動けない。

 身体を温める火術には絶妙な匙加減が必要なようだ。


「おっと、やり過ぎちまった。へへっ、これはこれで寒くねえけど、俺がずっと燃えてたらシュカも困るよな」


 ホムタが脱力すると、火はすぐに収まった。

 そして、一度冷静になるために深呼吸をする。


 力加減を考えているのだろうか、何か呪文を唱えるように口ずさんでいた。


「……よし、わかった。じゃ、もういっちょいくぞ!」


 またホムタが力むが、今度は何も起こらなかったように見えた。

 だが、今の表情はさっきまでと丸っきり違っている。


 その目に輝きが戻り、次第に驚愕の表情に変わっていく。

 いつの間にか身体の震えも止まっているようだ。


「寒く、ない……」


 ホムタがボソッと呟いた。


「なんでだ……、なんでもっと早く教えてくれなかったんだよっ!!」


 その口調から判断すると、ホムタが怒っているのかとシュカは思った。


 しかし、その顔は今にも泣きそうに見える。

 怒りと悲しみ、達成感など様々な感情が混在しているのだろうか。


「ふむ、若いミコにはまだ早いとばかり思っておりましたが、御身のご成長を実感することができ、私もまるで自分のことのように喜ばしく、飛び跳ねたいくらいですよ」


 ヤヒコはホムタを未熟者だと馬鹿にしていたように思っていたが、今は本当に嬉しそうにしている。


 彼にとっては成長を見守る子のようでもあり、師として冷静に弟子の実力を見極めるようでもあり、家族と言っても良い関係なのかもしれない。


「なんでも正直に言えば、俺が許すと思うなよ! ……でも、身体があったけえ。あんなに寒くて、ブルブル震えて、マジで辛かったのに、今は全然寒くねえんだ」


 やはり怒りのほうが強かったのかと思いきや、ホムタの怒声はすぐに収まる。

 自分の気持ちが整理できず、一番は驚きが勝っている感じだろうか。


「ヤヒコぉ。教えてくれて、ありがとうな」


 ホムタ自身も怒りたいのか、感謝を伝えたいのか、分からなくなっていそうだ。


 顔はぐちゃぐちゃになって混沌としているが、それも今は仕方無いだろう。


 南天を出る時に教えてもらっていれば、今まで寒い思いをしないで済んだはず。

 とはいえ、寒さを経験しないのもホムタのためにはならないだろう。


 寒さを経験したからこそ、火術の有難みを感じることができるというものだ。

 それも含めて、すべてヤヒコの思惑通りだったのかもしれない。


「あんたらよお。騒がしくするのは勝手だが、ほれ、もう着くぞ」


 犬橇の主が進行方向に見え始めた砦を指差した。

 話に夢中になっている間に砦の付近まで来ていたようだ。


 その距離がみるみる近付いていくと、大きな石造りの建物の全貌が見えてくる。

 

 そして、気付けば砦の前に到着し、三人は橇から降りた。


 砦に到着した後、カニテスたちに少しの間休憩を取らせた犬橇の主は、氷都に戻りたいという兵士を見つけて、早々に帰路へとついた。


 シュカ一人が飛ぶだけなら大した距離ではなかっただろうが、この極寒の中でも楽に移動できるというのは非常に有り難く、貴重な経験もできて一石二鳥だった。

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