第6話「激闘」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
「そう来なくっちゃな。お二人さん、楽しくやろうぜっ!」
嬉々として寒大猩が突っ込んで来る。
今回先制したのは馬威だったが、その強化された一撃さえも防がれてしまう。
それでも、寒大猩には先ほどまでの余裕が無くなっていた。
とはいえ、続けて放たれた冷備の氷槍への注意も怠らない。
数では不利な状況にも関わらず、寒大猩はこの状況を楽しんでいるらしい。
二人の度重なる攻撃は巨斧で防がれるか、巨体には似合わない俊敏な動きで回避されてしまう。
決定的な深手を与えることができず、二人はもどかしさを感じていた。
その一方で、寒大猩の攻撃を受けることもなかったが、相手が本気を出していない可能性に思い至ると、むしろ不安が加速する。
「お前ら、良いねえ。ずっとこうして戦ってたいんだがなあ、そろそろ時間みてえなんだ。決着つけようぜ」
そして、寒大猩の顔からすっと笑みが消えた。
その手に持つ巨斧が周囲に冷気が放っている。
それを見た二人は咄嗟に身構えた。
やはり、寒大猩という男は底が知れない。
「あれで本気なわけがないよな……」
予想通りではあったが、圧倒的な実力差に思わず後ずさりしてしまう。
冷備は一度冷静になろうと努めた。
巨斧が冷気を帯びたということは、その破壊力が増すのは間違いないだろう。
まともに受けてしまえば、二人共命の保証はできないかもしれない。
「これを受けて立ってた奴はいねえ。『すべてを断つ氷震斧』」
振り下ろされた巨斧が大地に触れると、発生した氷の衝撃波が二人に襲い掛かって来る。
「どけろっ! 冷備! 『瞬く蹄拳!!』」
突如、冷備の前に馬威が割り込む。
そのまま冷備は突き飛ばされ、迫り来る衝撃波に向かって馬威が技を放った。
その技が進路を逸らし、衝撃波を後方の壁に激突させたのだ。
そして、衝撃波のぶつかった壁はというと、あっけなく崩れ落ちていた。
辺りに舞った土煙が落ち着くと、衝撃波の通った道がすべて凍りついていることに気付いた。
「おいおい、直撃してねえのかよ」
さすがの寒大猩も、放った大技の反動ですぐには動けないようだった。
「くっ……」
確かに衝撃を逸らすことには成功した馬威だが、衝撃波に直接触れた拳が凍ってしまい、右手が封じられてしまった。
「無理するな。今度は俺が前に出る」
「済まない、少しだけ任せたい……。拳は使えなくても、とっておきの秘策があるんだ。時間を稼げるか?」
馬威が言う秘策を冷備は知らなかったが、この状況で言ってくるということは、それなりに自信があると思って良いだろう。
というよりも、冷備にはその秘策を信じるより他に選択肢は無かった。
「はっ、時間稼ぎ? 誰に言ってるんだ? 余裕だ余裕」
一度後退した馬威は集中し始める。
強がった以上はその秘策のために時間を稼がなければならない。
自分の技で寒大猩の巨体に致命傷を与えられないことは自身が最も理解しており、馬威の力が必要なこともわかっている。
正直に言えば、二人でなんとか互角に戦っていた相手に単身で戦い抜ける自信は無い。
それでも、ここで時間を稼げなければ、馬威共々倒れてしまうだろう。
大きく息を吸った冷備は覚悟を決めた。こんな所で終われるわけがない。
危険なことをしている自覚は以前からあったが、氷都すら平和にできない男が王となって国を治めることなどできるわけがないと考えていたのだ。
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