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第10話「鉄鎚」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

 それは盗人対策用に作られたものだろうか、二人は氷の回廊を滑ることしかできない。

 右に左に何度も曲がりながら、ひたすら氷の上を滑っていた。


「なんで、こうなるの~」

「俺たち、なんか悪いことしたか?」


 あっけらかんとホムタが言うので、シュカはその能天気さに呆れてしまった。


「……はあ、僕たちは王宮に忍び込んだんだよ」

「ああ! そういえばそうだった」


 ホムタはそこでようやく納得した様子を見せた。今まで自分たちがしていたことを本当に忘れていたらしい。


「「ああぁあぁ~」」


 止まるどころか、氷の床と絶妙な傾斜のせいで、さらに速度を上げていく。


 このまま最後はどこかの壁にぶつけられてしまうのだろうか。それとも、ビスティアたちの檻の中にでも放り込まれてしまうのだろうか。


 滑っている間はとにかく不安な考えばかりが頭をよぎる。


 しばらく流れに身を任せていると、突然氷の床が消えた。


「「え!?」」


 その時、二人は空中に放り出された。

 宙に浮いたのは一瞬のはずが、その時間はとても長く感じられる。


「もしかして、僕はここで死んでしまうの、かな……」


 嫌な想像しかできないシュカは、自分には翼があって飛べるということを忘れていた。


 しかしその事実に気付いた時には、降り積もった雪の中に頭から突っ込んだ後だった。


 二人は上手いこと王宮外に追い払われてしまったようだ。


 見事な人型が作られ、二人は仲良く雪の中に埋もれる。


 なかなか抜け出せずに藻掻いていると、そこへちょうど雪をかき分けて、人がやって来た。

 ヤヒコが二人の足を引っ張り上げて、救出してくれたのだ。




 救世主であるヤヒコに連れられて、寒さに震える二人は宿に戻って暖を取る。


「要するにさ、自分たちが抱えている問題を代わりに解決してくれってことだろ?」


 ホムタは濡れた顔を拭きながら言う。


「厄介事を押し付けられてしまったわけですね」


 ヤヒコは厄介事と言いつつも、あまり重く受け止めてはいないように見える。

 何か条件を付けられることくらいは予想していたのかもしれない。


 氷魂草を手に入れるためには王が言った通り砦へと向かい、琥獣の民をどうにかする以外に方法は無いだろうという結論になった。


「あ……。忘れてたんだけど、ホムタの目的のほうって良かったの?」


 シュカはホムタの目的が達せていないことに気付いて問いかける。


「ああ、今はダメなんだ。こんな状況じゃあ、どうせ俺たちの頼みも聞いてもらえねえし、できる限りシュカのこと、手伝うぜ。な、ヤヒコ?」

「もちろん、私はミコに従います」


「決まりだな。そんで、砦まで行く方法はもうヤヒコが準備してんだろ?」

「ええ。お二人がいない間に準備しておきました」


 そんなに準備が良すぎると、実は盗聴をしていたのかとヤヒコを疑いそうになるが、そんなことをしても仕方が無い。


「やっぱりな」


 ホムタは自信満々の笑みを向けて来るのだった。


          *       *       *


 突然の来訪者を追い払った後、雪駿と黎雄との定期会議を終えた冷備は、謁見の間で一人物思いにふけっていた。


「果たして、外から取り込んだ新たな空気はこの国を変える呼び水になるのか、それとも厄災となるのか……」


 冷備の冷たい笑い声が響き渡る。


 自分から見ても明らかな若造が国を変革してくれると思ったわけではない。

 それでももし、そのきっかけになる可能性があるなら、信じてみても良いのではないかと。


 シュカと名乗った少年の目に宿る信念が、どこか懐かしい気持ちにさせたのだ。


 執務をすべて片付けた冷備は、盃に注いだ酒を口に含む。

 特別な行事でもなければ酒を飲むことは稀だが、今はそういう気分だった。


 冷備がシュカと重ねた旧き友の名は馬威(マーウェイ)

 その男は琥獣の民だった。


「馬威……。お前はなぜ俺を、皙氷の民を裏切った……!」


 乱雑に放り投げられた盃が床に転がった。

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