表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/102

第9話「条件」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

「まずは、非礼をお詫びさせてください。僕はシュカと申します。妹が罹ってしまった炎呪の治療に必要な氷魂草がここにあると聞いて参りました。一般に出回らないというその薬草を、どうか恵んでいただけないでしょうか?」


 そう言ってから、シュカは頭を下げた。


「面を上げろ。氷魂草を求めて、わざわざこんな所まで来たというお前の事情はわかった」


 冷備はシュカの話を疑うことなく、真剣に聞いてくれているようだ。

 氷王をなんとか説得するためにも、シュカはさらに話を続ける。


「王宮の番兵には一ヶ月待てば謁見できると言われました。ですが、妹の命が関わっているのに、一ヶ月も待つことはできません。この国の者ではない僕には他に頼れる人もいなくて、ご無礼を承知で忍び込むしかありませんでした」


 その話を聞いていた冷備の顔つきが急変する。


「ほう……? そんなに予定が詰まっているという話は聞いたことがないなあ。雪駿、貴族の奴らなんかよりも、民を優先しろと言っていただろ」


 一度シュカから視線を外した冷備が、雪駿を睨みつける。


「恐れながら王よ。貴族との良好な関係を築くことも、国の運営には必要不可欠なこと。これは平和のためでもあるのです」


 だが、雪駿も動じることなく、反論する。


「贅沢するしか能のない奴らなど、気にしなくていい。お前を信頼して今後の優先度調整は任せるが、もし下手な貴族が来たら容赦はしない」

「御意……」


 シュカはすっかり放置されてしまったが、全く話の通じない頑固な王というわけではなさそうだ。

 むしろ、願いを聞き届けてくれそうな予感さえした。


 冷備が一度喉の調子を整えてから、シュカに向き直った。


「見苦しい所を見せたな」

「いえ。それより――」


「氷魂草ならこの王宮にある。ただ、今ではその数を減らし、一株しか無くなってしまった。そんな貴重な物を余所者にどうぞと渡すわけにはいくまい」


 氷魂草が王宮に一株しかないことは、さすがに予想していなかった。


「一株……それなら、氷魂草の自生地を教えてください。自分で取りに行きます!」

「いや、今は訳があって荒雪山には近付けないのだ」


 何かを悩んでいる様子の冷備だったが、妙案を思いついたように顔が明るくなる。


「そうだ。我が国では、北西の国境付近を騒がせる野蛮な者たちに頭を抱えている。もしもお前たちがその悩みの種を取り払ってくれたなら、残っている一株を渡しても良い。私からの書簡を預けるから、それで琥獣の民を()き止めている砦に向かえるようにしておこう」


 王が合図すると、雪駿がシュカのもとへやって来た。

 シュカは唐突に差し出されたその書簡を慌てて受け取りつつ、冷備が言い放った言葉に引っ掛かりを覚える。


「え、琥獣の民って――」

「よろしく頼んだぞ」


 氷王はそれ以上何も語らず、質問の隙を与えなかった。

 

 突然笑顔になり、徐にその手を上げたと思いきや、二人が立っていたはずの地面がその姿を消した。


「「あ……」」


 二人は咄嗟の出来事に反応できず、突然出現した穴の中へと吸い込まれていくのだった。

高評価やいいねボタンを押していただけると、作者のモチベーション維持・向上に繋がります! 泣いて喜びます! よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ