第8話「謁見」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
また歩き出した二人が謁見の間の付近にやって来ると、目的の部屋からは明かりが漏れていた。
さらに近付くと話し声が聞こえてくる。
他と比べてもひと際重厚な扉であり、おそらくこの部屋が謁見の間だろう。
部屋の中の話を聴こうとして二人が耳を欹てると、王の他に二人の声が聞こえてきた。
ヤヒコの推測では、この国の宰相と将軍が傍にいる可能性が高いとのことだった。
「おいシュカ、押すなって」
中の話し声が小さく、その内容がよく聞き取れない。
いつの間にか、二人は押し合うような形になっていた。
「ホムタこそ、そんなに押さないでってば」
だが、二人で押し合うあまり、シュカが扉の氷で手を滑らせてしまう。
二人がその場に倒れ込み、迂闊にも物音が響いてしまった。
それは謁見の間内の人物が気付くのに十分すぎる音だった。
「そこにいるのは誰だ! 姿を見せろ」
重く厳しい声が中から聞こえてくる。
「隠れよう、ホムタ」
シュカが合図を送りつつ小声で言うが、ホムタは一切耳を傾けてくれない。
既に謁見の間の扉を開けて仁王立ちしており、それは威厳すら感じる佇まいだ。
「もう見つかってんだ。今さら隠れてたって意味ねえよ」
こちらを見ることなく、ホムタがあっさりと言ってのけた。
「やれやれ、こんな夜更けに堂々と……。二人で俺を殺しにでも来たのか?」
殺される可能性がある人物ということは、今話しているのが王ということだろう。
「俺は殺しなんてしねえ。この国の王、アンタに頼みがあって来た。なあ、シュカ?」
王への礼儀を全く感じないその様子にシュカも諦め、渋々姿を見せることにした。
「……失礼、します」
そして、二人が謁見の間に入って行く。
しかし、その途中で玉座の傍に立っていた細身の男が口を開いた。
「貴様ら! 謁見の予約もなく、王宮に入ってただで済むと――」
「いい、今回は俺が許可する。だからお前たち、早く来い」
王が細身の男を制する。一応話を聞いてくれるつもりらしい。
「出過ぎた真似を……」
王に対しては平伏しているが、細身の男が二人を見る目には怒りが籠っている。
おそらく、彼が宰相の雪駿だろう。
その反対側に立ち、屈強な身体を持つ男が軍を司る黎雄将軍に違いない。
そして、シュカたちの姿をその目に捉えてから一切視線を逸らさない玉座の主、彼こそが氷王冷備。
氷魂草を求めてやって来たシュカにとって、頼みの綱である。
第一印象はかなり若いという印象を受けた。王たる威厳には気後れするが、どこか青年のようなあどけなさを持ち合わせているようにも見える。
特に目に留まったのは瑠璃唐草のような美しい青髪で、それは同性が見惚れてもおかしくないだろう。
「お前ら、我らが王に会うためにわざわざ忍び込んだのか? ちっせえのに肝が据わってんなあ」
先ほどまで無言だった黎雄がその巨体に見合った大声で挑発してきた。彼がその身体を揺らして豪快に笑うため、纏っている鎧の音が響き渡る。
だが、シュカの翼を見た途端、その音が止んだ。
「へえ、碧空の民か。面白いお客さんが来たもんだ」
黎雄は碧空の民について何か知っていそうな雰囲気だ。
王の側近を務める男には、それくらい常識ということなのだろうか。
「さて、本来なら王宮に侵入した者は極刑に処すのだが……その度胸に免じて、率直に聴かせてもらう。俺にお願いしたいこと、とはなんだ?」
冷備の冷たい視線がシュカに突き刺さった。
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