第5話「作戦会議」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
ヤヒコの提案により、氷王宮を後にして、まず空腹を満たすことにした。
飲食店が多いという東街区へと足を運び、氷都付近の寒冷な地域にのみ生息しているセプトゥルス(北域に住む熊)の煮込み料理を提供してくれるお店に入ることにした。
「それでどうすんだ、大人しく一ヶ月も待つわけねえんだろ?」
肉にかぶりつきながら、ホムタが言う。
「そうですね……。帳簿を見た限りですが、貴族が予約を割り込ませて、王との謁見を優先している形跡がありました。最悪、一ヶ月経っても会えない可能性もあるでしょう。……はて、困りましたねえ」
そうは言っているものの、シュカから見えるヤヒコの表情は全く困っているようには見えなかった。
「俺は知ってるぞ。ヤヒコには別の案がある。だからこうやって引き返して来たんだろ? たとえば兵士には聞かれたくない話がある、とかな」
ヤヒコへの信頼か、ただ人任せにしているだけなのか、ホムタは推理を楽しんでいる。
「いえ、今回ばかりは私も参りました。こんなにも重要なことを失念していただなんて……。ああ、どうしましょう……」
本当に困ったように振舞うヤヒコがバッと顔を上げた。
「ちなみに、ミコは何か良い考え、ありませんか?」
「なんだか、ヤヒコらしくなくて気持ちわりいなあ。……あー、ダメダメ、俺じゃあわかんねえ。シュカはなんかあるか?」
ホムタも考える素振りを少しだけするが、早々に諦めてたらい回しにしてきた。
「んー、僕も考えてはみたんだけど……、さすがに王様と話すためだからって、王宮に潜入するのは良くないよね?」
何か良い作戦がないかと考えてはいたのだが、そう簡単に思い浮かぶわけがなく、とりあえず却下される前提で言ってみた。
「おお! それだよ、それ。それ良いじゃんか。後のことはヤヒコに任せて、王宮にこっそり入っちまおうぜ。うん、それが一番いいに決まってる! どうせ、他に案は無いわけだし」
ホムタが言う通り、妙案は無い。
このまま一ヶ月も待つわけにはいかないし、そんなに待ってしまえば、ジュナの命に係わるかもしれない。
待たずに王への謁見ができるに越したことはないが、本当に潜入作戦を決行して良いものか、言ったシュカ自身も迷っていた。
「できる限り早く王様に会えるなら、僕は構わないけど……」
代わりの案を出して欲しいと思ったシュカは、用意周到な男に何も策が無いとは考えにくく、ヤヒコの顔を見た。
きっと助け舟を出してくれるだろうと期待して――。
「あっ、言い忘れてましたが、王宮内への侵入経路なら調査済みです」
ヤヒコはこぶしを掲げており、満面の笑みを浮かべている。
全く予想もしてなかった返答が来て、シュカは何も言い返すことができない。
最初から王宮への潜入を前提に動いていたのだろうか。
その可能性に気付いてしまって、項垂れるしかなかった。
「さすがヤヒコ! それなら話が早えな」
シュカの不安をよそに、能天気なホムタが乗り気になっている。
王宮に入る約束はできていなかったのに、潜入用の道の調べがついているのは、どう考えても目の前でニコニコしているヤヒコの思惑通りに行動させられているとしか思えない。
ホムタは何一つ疑問に思っていない様子で、なぜ一切疑うことなく傍にいる人物を信じることができるのだろうか。
二人にはそれだけの信頼関係を築く時間があったのかもしれないが、その奇妙な関係をシュカは理解できずにいた。
三人が考えた作戦は、シュカがホムタを運んで潜入するという非常にシンプルな方法だった。
事前にヤヒコが調べたという最適のルートを通過することで、それが可能になる。
そして、王宮の氷でできた壁をホムタの火術を使って融かし、二人が入れる穴を開けて入り込むのだ。
それはホムタによって「こっそり潜入大作戦」と名付けられ、人通りが少なくなる夜に作戦を決行することになった。
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