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第4話「予約」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

「ちっ、今度こそ王宮に行くぞ」


 舌打ちをしたホムタも、琥獣の民を取り巻く理不尽な状況にやるせなさを感じているようだ。

 鬱屈(うっくつ)とした想いを抱えたまま、三人は氷都内に戻って来た。


 街中を歩いていると、擦れ違う皙氷の民から懐疑的な視線が向けられる。

 三人揃って余所者であるため、ジロジロと見られるのは仕方無いだろう。


 その視線を感じる度にホムタが威嚇して人を追い払ってくれるのは、とても有難かった。


 そうこうしているうちに、目的地である氷王宮の前に辿り着く。

 しかし、三人が王宮の正門前に立つと、それを遮るように掲げられた二本の槍によって前方を防がれてしまった。


「ここで止まれ。謁見の予約はしているか?」


 右手に立つ兵士が口を開いた。


「あ、予約だって? そりゃあもちろん、ヤヒコのことだから、してるよな?」


 ホムタが自信満々の様子でヤヒコを見る。


「あ、ああ。私としたことが、申し訳ございません! ……すっかり、忘れておりました」


 大袈裟に謝って見せるヤヒコだが、その顔から悪びれる様子は感じ取れず、まるで失敗したとは思っていないかのように飄々(ひょうひょう)としている。


「そっか。それならしょうがねえか」


 ホムタはヤヒコを信頼し過ぎているせいか、疑うことなく納得している。


 何事も完璧にこなしてしまいそうなヤヒコでも失敗することがあるのだろうか。

 まだ関係値の浅いシュカに真偽のほどはわからない。


「あのー、今からだといつ謁見できますか?」


 予約をしていないことは仕方が無い。どれくらい待てば、王に謁見できるようになるのか確認しておいたほうが良さそうだと思ったのだ。


 仮に今日謁見できなくても、近いうちに謁見できるだろうと気軽な気持ちで尋ねた。


「今確認する。少し待っていろ」


 もう一人の番兵が一度退くと、分厚い帳簿を持ち出して来た。

 それで謁見許可を出す相手と王宮に入る人物をこまめに記録しているようだ。


 しかし、帳簿を一枚ずつ捲っていく兵士の手がなかなか止まらない。捲っても捲っても、いっこうに終わりが見えない。


 次第にじれったくなったホムタがその場で身体を動かし始めた。

 ただ待っているだけのその時間が我慢できなくなったようだ。


 周囲を走り回る少年の我慢が限界に達しようという時、ようやく兵士の手が止まり、合わせてホムタの動きも止まった。


「遅くなって済まないな。早くても今日から一ヶ月後ってところだ」

「「一ヶ月!?」」


 わざわざ調子を合わせなくても、シュカとホムタの声がピッタリ揃ってしまうほど仰天させられた。


「え、さすがに冗談ですよね?」


 まだ頭が整理できていないシュカが兵士に詰め寄る。


「いや、本当のことだ。一ヶ月分は既に埋まっている。我らの王は大変お忙しいお方だ。民に会う時間が限られるのは仕方があるまい」


 おいそれと通すことができない兵士も厳しい言葉を言ってくるが、その表情を見れば申し訳無いという想いもあるようだ。


 彼らにはどうしようもないことくらいシュカにもわかっている。

 だが――。


「そんなに待っていることはできません。どうにかなりませんか!?」


「そう言われてもなあ……」

「僕はどうしても、王様に会わなければいけないんです! 妹の、命が!!」


「申し訳無いが、我々にはどうしようも……」


 王に会えなければシュカが困るのは確かだが、今はむしろ番兵のほうが困惑している。

 それにここでいつまでも兵士と問答していて、王に会えるわけでもないだろう。


 その時、熱くなっているシュカと番兵の間にヤヒコが割り込んで来た。


「……一度、引き返しましょうか」


 彼の有無を言わさぬ笑顔を見た途端、シュカも冷静さを取り戻すのだった。

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