第2話「氷都」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
健老と別れた後、街の外からも見えていた巨大な氷の建物の全貌が見えてくる。
それは、元々この地にあった大氷河を皙氷の民の技術を駆使して作られた王の居城のようだ。
中央に最も大きな宮が君臨し、それを守護するように四つの宮が存在する。それらを合わせて氷王宮と呼ばれるそうだ。
超然と聳え立つ氷王宮を中心に扇のように城下が広がり、氷都という街が形成されていた。
氷都と言うだけあってか、街中の建物は氷や雪を用いているものが多い。
この街では年中寒く、氷や雪が融けることはほとんど無いそうだ。皙氷の民にとっても住みやすい気候ということだろう。
その代わり、育つ植物も限られてしまうため、木材などの物資調達に商人たちの活躍が欠かせないらしい。
だからといって、氷都近辺に樹木が存在しないわけではない。どちらかというと、外で育つ様々な樹木をしっかり乾燥させて持ち込んだほうが楽なだけのようだ。
それらの情報のほとんどはヤヒコに教えてもらった。彼は本当に物知りで、この大陸に関して豊富な知識を持っている。
シュカたちが街中を歩いていると、時折り風が吹きつける。
凍えるほどに冷たい風にも関わらず、通りすがる皙氷の民たちは普段より今日は暖かくて、汗をかくと暢気に話していた。
「これでもあったかいほうとか、こいつらおかしいって」
ホムタは風が吹こうが吹くまいが、とにかく寒そうに震えている。
確かに、南天と比べても一層寒さが厳しくなった今、長時間の飛行なんて考えたくもない。
「南天で防寒具を買ってなかったらって思うと恐ろしいや。……あ、ちゃんと聞いてなかったけど、ホムタの借り物ってどこでする予定だったの?」
自分が王宮へ行く必要があることはわかっているが、二人がどこで用事を済ませるのか聞いていなかった。
またはぐらかされる可能性もあったが、それはそれで構わないと軽い気持ちで聞いてみようと思ったのだ。
「あ、言ってなかったっけ? 俺らも氷王に用があるんだ」
「え……、そうだったの?!」
予想もしていなかった答え、かつ意外にもあっさり教えてくれた。
氷魂草を求めてやって来たシュカとは違って、二人はいったいこの国の王に何を借りるつもりなのだろうか。
「き、奇遇だね……」
しかし、シュカにその話題を深掘ることはできなかった。少なくとも今は、聞いても教えてくれないような気がしたのだ。
「ま、気にすんな。目的地も一緒なことだし、さっさと王宮に行っちまうかあ」
ホムタは氷王宮を見つめている。
いつもふざけているようにしか見えないが、たまに真剣な顔をする時があった。
まるでその心はここにあらずといったように。
「それなんだけど……。王宮に行くのって、一つだけ用事を済ませた後でもいいかな?」
門の前で約束したシュカにとっては、王宮に行くよりも先にやらなければいけないことがあったのだ。
商人から得た報酬も使い、必要な買い物を済ませた後、三人は再び氷都の門前にやって来た。
氷都の前で出会った琥獣の民へと追加の食糧を届けるという約束を果たすためだ。
少し歩いたところに、彼らの家々がある。
雪のみで作られたそれらは非常に簡素であり、この寒さを凌げているのだろうか。
「お待たせしてすみません。お約束した通り、食糧を届けに来ました」
三人が簡単に自己紹介を済ませると彼らの代表である中年の男が羊昭と名乗った。
並んで立つと、長身のヤヒコでさえ見上げるほどの大きな体躯をしている。
早速羊昭の仮住まいに通してもらった。雪を固めて作られているが、風雪を凌ぐための機能しか持たず、寝る場所だけがある。
しかし、中は以外にも温かかった。
そこでは羊昭の子供たちが寄り添い合い、シュカが持ち込んだ食糧を一心不乱に頬張っていた。
「ここまでしていただけるとは思ってもいませんでした……。いつか必ず、恩返しをさせてください」
そう言って羊昭の頭が深く下げられる。シュカが頭を上げてと促すまで、彼は決して頭を上げようとしなかった。
人に頭を下げられるというのは、やはり慣れない。
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