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第16話「虐げられる者たち」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

 興醒めしたのか、野次馬のように集まっていた商人たちの数が減っている。

 今度は割り込む必要も無く、シュカは持って来た食糧を代表の男に渡す。


「本当に、ありがとうございます! なんとお礼を言えば良いか……。私たちは何もお返しできないのに」


 琥獣の民の男はとても申し訳なさそうにしているが、シュカがしたのは些細なことだと思っている。良いことをしたと自慢する気にもならなかった。


「いえ、残り物ですからお返しなんていりません。それよりも後で必ず追加を持って来ます。もう少し辛抱してください。その時に、ちょっとだけ事情を聴かせていただけますか?」


 シュカは小声でそう告げて、彼らと別れることにした。

 皙氷の商人たちには絶対に聞かれたくなかったのだ。


 琥獣の民たちの足取りは重いままだったが、彼らは雪で作られた住居らしき、かまど型の建物へと帰って行った。


「おい、余計な事をしてくれたなあ。お前は俺らと琥獣の民の関係を知らないのか?」


 シュカの背後にやって来た商隊長が威圧してきた。


「そんなこと、僕には――」


 ――関係ない。

 その勢いのまま、シュカは商隊長に掴みかかってしまいそうになる。


「すみませんねえ。彼は遠く離れた国の出身で、この辺りの事情には明るくないんですよ。あなた方と争うつもりはありませんので、どうか怒りを鎮めてください」


 ヤヒコが頭に血が上ってしまったシュカを止めて、庇ってくれた。

 奇妙な威圧感を発する彼に、商隊長も一歩引くしかなかった。


「俺だってそんなバカはしねえよ。おい兄ちゃん、長生きしたかったらなあ、首を突っ込んじゃいけないこともあるって覚えておくんだな!」


 シュカはそう言う商隊長に釘を刺された。

 やはり、皙氷と琥獣の民の間には根深い問題があるようだ。


 とはいえ、商隊長もそれ以上絡んでくることはなく、氷都に入るための準備に戻った。


「はあ……。ヤヒコさん、助かりました」


 張り詰めた緊張から解放されて、シュカは深いため息をつく。

 そして、ヤヒコにお礼を告げた。


「まあまあ、ミコに比べれば楽なものです。それに、シャンという国が抱えている問題は、私もどうにかしなければとは思っていましたから」


 黎火の民であるはずのヤヒコとシャンの関係性についてはやや気になったが、シュカは氷都に入ることのほうが不安だった。単純に琥獣の民を軽蔑するような人々がいる街に入ることが嫌だったのだ。


 とりあえず、二人はホムタが待つ馬車に戻ることにした。


「琥獣の民は氷都に入ることを禁じられているそうです。先ほどの彼らの事情はわかりませんが、街に入れない以上は乞食をするしかないのでしょう……」


 ヤヒコは彼らが抱える問題について、多少の事情は知っているようだ。


「今から数十年前、二種族の友和を進めた王がいました。ですが、次に即位した王がその協定を破棄し、琥獣の民を虐げるようになったそうです」


 過去の事実をヤヒコが教えてくれる。

 しかし、そこにどのような理由があって協定が破棄されてしまったのか、そこまではヤヒコにもわからないらしい。


 シュカはその話を苦々しい思いで聞いていた。


「だからって、街に入ることもできずに、乞食をしているだけなんて……」


 その心の中ではやるせない想いが燻るが、余所者であるシュカにはこの国が抱える問題をどうすることもできない。


 まずはなぜ彼らが乞食をしているのか、この国の事情を知るべきだろう。

 シュカの目的と関係があるわけではないが、できるなら彼らのこともなんとかしてあげたいと思うのだった。

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