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第15話「偽善」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

 本来、無関係のシュカが出張るのは良くないことだろう。


 それでも、食べるものが無いと困っている人々に、僅かな食糧すら分けることもせず、挙句の果てには侮蔑の視線をぶつけるだけの商人たちを見て、我慢していられなかった。


「どいて、どいて! みんなどいてっ!」


 怒りで半分我を忘れているシュカが、商人たちの前に割り込んでいく。


「これ、少ししかありませんけど、子供たちに食べさせてあげてください」


 そして自分用に蓄えていた保存食を代表の男に差し出す。

 氷都までの道のりを耐えるための分であり、目前に氷都がある今はもう必要の無いものだった。


「……! 本当に良いのか。白翼の少年よ」


 シュカから保存食を受け取ったその男は、深々と頭を下げて感謝の気持ちを表現する。


「どうか頭を上げてください。……あっ! ホムタとヤヒコさんの分も良いですか?」


 シュカはヤヒコのほうを振り返った。


「ええ、私は構いませんよ。ミコの分はご本人に直接お聞きください」


 ヤヒコの言葉を聞き終える前にシュカは飛び上がっており、急いで馬車に戻る。


 馬車の中からホムタが顔を覗かせているようだったが、すぐに引っ込んでしまった。

 気になって様子を見ていたのかもしれない。


 シュカは馬車の中で毛布にくるまっているホムタに話しかけた。


「ねえ、ホムタも話聞いてた? 琥獣の民の人たちがご飯も食べれてないみたいで……僕の分だけじゃ全然足りないんだ。ホムタの分もいいかな?」


 とは言いつつ、ホムタの分もその手に取っていた。

 短い付き合いだが、ホムタなら断らないと思っていたのだ。


「勝手にしろよ。だけどな、俺たちの少ない食糧を分けたところで、乞食ってのはいなくならねえぞ。たとえ今日の飢えが解消できても、明日また飢える。飢えている奴らがいなくなるか、その原因を解決しなけりゃ、また別の誰かが飢えることになるんだ」


 そう冷たく言い放つホムタは、シュカと視線を合わせてくれない。


「……お前のそれは、ただの偽善なんだよ」


 無慈悲な言葉を面と向かって言わないホムタの表情は悲哀に満ちている。

 ホムタにはそう言い切れるだけの過去があるのだろうか。


 とはいえ、今は目の前で困っている人を救うべきというのがシュカの結論だった。


「さっさと行けって」


「うん。僕は困っている人を見て見ぬ振りすることはできないから。協力してくれて、ありがとう!」


 二人分の食糧を得たシュカは、疾風のように飛び出した。

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