第14話「門前」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
山道の途中にあった山小屋にて、一行は寝泊りすることになった。
氷都までの道のりも既に終盤へと差し掛かっていたようで、雪深くなった土地でエクーズに休息を取らせることが目的のようだった。
そこにあった暖炉で十分に温まることができたはずなのだが、また寒い馬車の中に戻るとホムタは震えだし、震えが激しくなるほど騒がしくなっていく。
「ヤヒコっ! 氷都にはまだ着かないのかよっ!」
震えが止まらなくて苛ついているホムタから、この言葉を聞くのはもう何回目になるだろうか。
シュカもかなり寒いとは思っていたが、防寒具のおかげもあってホムタほどではなかった。
ホムタも同じ防寒具を着ているはずなのだが。
「先ほど商人たちに聞いた所、もう少しで着くとのことです」
淡々とホムタに告げるヤヒコはやはり寒そうにはしていない。
やせ我慢に見えないのは疑問でしかなく、同じ黎火の民でも個人差があるのだろうか。
「もう少しって、どんくらいだよ! もっと俺にもわかるように説明しなきゃダメだろ!」
もう我慢できなくなったホムタがヤヒコに掴みかかった時、馬車がその動きを止めた。
不運にも、ちょうど立ち上がってしまったホムタは、壁に激突してしまう。
だが、さすがと言うべきか、何事も無かったように馬車の壁を蹴ってその場で一回転し、華麗な着地を決めていた。
「お、やっと着いたか」
ホムタは到着の嬉しさのあまり、痛みは気にしていないようだ。
しかし、意気揚々と馬車から出ようとするホムタをヤヒコが制止する。
「お待ちください、ミコ。外の様子がおかしいです……。何かいますね」
「は? それなら俺の出番じゃねえの?」
「いえ、そうではなくて。ビスティアというわけではないようです」
じゃあなんだよと言いたげだったが、ヤヒコが譲らなかったので、ホムタは大人しく毛布にくるまった。
「……よくわかんねえけど、早くしてくれよ」
シュカとヤヒコは戸を開けて、外の様子を垣間見た。
外では商人たちが何やら騒がしくしている。何やら他の集団と揉めているようだった。
詳しく事情を知るために、二人が外に出る。
氷都らしき都市をすぐそこに捉えることができたが、目の前の問題を解決しなければ氷都には入れなそうだ。
氷都は南天よりも大きな城下町であり、その先にはさらに巨大な氷の建物が見て取れる。
氷都の入り口、氷の彫刻が印象的な大門の手前でしゃがみ込む人々と、その前に立つ商人たちで人だかりができていた。
よく見ると、裂けた服の隙間から見えるのは体毛ではないだろうか。
つまり、美貂たちと同じ琥獣の民だろうが、彼らより一回りも二回りも大きく見える。
とはいえ、彼らは皆明らかに痩せ細っているようだ。
二人がその人だかりに近付いて行くと、ようやく会話の内容が聞こえてきた。
「……ですから、どうかお願いします。少しだけで構いませんから食べるものを恵んではいただけませんか?」
琥獣の民の集団内で代表と思しき中年の男が、かなりの低姿勢で物乞いをしているようだ。
「だから、何回も言ってるだろ。食べ物の代わりになる物となら、交換してやるって」
琥獣の民を見下している商隊のリーダーが冷たく答えた。
自分たちの利益になる者には上手く取り入り、利益にならないとわかった弱者は簡単に切り捨てる。それが商人だとシュカもわかっている。
そうは言っても、満足な食事をできていない人たちを見下す彼らに賛同はできない。
「そこをなんとか、お願いできませんか……? 私たちにはもう、あなた方にお渡しできる物が何も残っていないのです」
額を地に擦り付けてでも乞い続けるその姿を見ているだけで、シュカの胸は苦しくなる。
その集団の中には、子どもたちの姿も少なくはない。
商人たちは彼らに飢え死にしろとでも言うのだろうか。
低姿勢で乞うことしかできない琥獣の民に向かって、彼らは蔑んだ目で見たり、嘲笑ったりするだけでそれ以外は何もしなかった。
南天の街中で美貂たちが投げつけられた軽蔑の視線と同じものを感じたシュカは、憤りが抑えられず、歩き出していた。
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