第13話「雪」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
シュカが気晴らしのために外へ視線を向けると、白い粒が空から落ちてきた。
それは雲のように白くて、ふらふらと舞い落ちる。これがカロムに聞いた雪だろうか。
「ああ、雪が降ってるぜ。どうりで寒いわけだ」
変わらず寒そうにしているホムタは、外の景色を見てうんざりしているように見える。
「やっぱり、これが雪なんだ……。実際に見るのは初めてだよ」
「初めて?」
「サヴィノリアでは雪が降らなくて。だから、不思議だなあって」
シュカは初めて見る雪を感慨深く見つめていた。
雪はまだ降り始めたばかりで、降り積もるようには見えない。
サヴィノリアから見えた白い大地はこの雪が降り積もってできた土地だと聞いていた。氷都に近付けば近付くほど、さらに雪が強まって次第に白一色の景色が見られるようになるのだろう。
窓から深々と降り続ける雪をシュカは見つめ続ける。
「雪、触ってみたいな……」
その呟きにホムタがすぐに反応を示した。
「今はやめとけ。氷都に向かってるんだから、この後呆れるくらい見ることになるんだぞ。それからでも遅くねえよ。氷都は見渡す限りの雪景色が広がってるらしいからな」
「もっと見れるなんて、少しだけ楽しみだね」
「はあ?! 楽しみなわけねえだろ。寒い場所で雪が降るってことは、氷都はもっと寒くなるとか、マジで勘弁してくれ」
ホムタはげんなりしている。
ずっと丸くなって寒さを耐えようとしているのに悪いが、これ以上寒くなった時はどうなるのか、気になってしまった。
「初めて雪を見るってことはさ、シュカの故郷はあったけえってことか。それなら、いつか行ってみてえなあ」
「ミコ、それは無理ですよ」
二人の会話にヤヒコも混ざり、ホムタの希望が打ち砕かれる。
「あんでだよ!」
「確か、碧空の民以外がサヴィノリアに来るのは、相当難しいんだって」
シュカがサヴィノリアで暮らしていた間、碧空の民以外の人を見たのは数えられる程度だった。
「そこはほら、ヤヒコがなんとかしてくれるって」
「はあ……。ミコが御自身の役割を果たせた時、私との約束をきちんと守り抜くことができたなら、構いませんが?」
若干ホムタを煽るようなヤヒコの言葉では、二人が何をするために氷都へ向かっているのか全くわからなかったが、シュカのようにそれなりの事情があることは理解できた。
「よっしゃ! わかった、俺ちゃんと大人しくする。絶対だからな! 約束破るんじゃねえぞ」
その時だけはホムタも気分を高揚させていたが、落ち着きを取り戻すと再び寒がりだしたため、そのカタカタと震える音が馬車内で響き出す。
しばらくすると、馬車の外はもう雪が降り積もり始めていた。
その中でも変わらず、一行は氷都への道を進んでいく。
「にしても、寒すぎだろ! あー、あー、あー、寒いっ!!」
ホムタは南天で買ったコートに加えて、ヤヒコがどこからか取り出した毛皮の毛布にもくるまり、その中で身体をさすって温めている。それでもまだ寒そうだ。
「確かに寒いけど……。そんなに震えるほど寒い、かな?」
シュカはヤヒコを見る。ヤヒコも薄手の毛布を掛ける程度で過ごしており、厚手のものを被っているのはホムタだけだ。
外は雪の勢いがさらに増している。どこを見ても真っ白で、馬車が通る道の周りには膝丈くらいまで雪が降り積もっており、一面も白一色に様変わりしていた。
一行が氷都への道を進むにつれて、寒さは厳しくなり、雪はさらに積もっていく。
道中、幸いなことにビスティアは一切出なかった。
それもホムタをうるさくさせる一因だったのだ。
戦って動けば少しは温まることもできただろうに、それが一向にできないのだから。
降り続ける雪によるものなのか、異様な空気を纏うその静けさを奇妙に思ったシュカは、何も悪いことが起こらないようにと祈るのだった。
高評価やいいねボタンを押していただけると、作者のモチベーション維持・向上に繋がります! 泣いて喜びます! よろしくお願いいたします!