第8話「一件落着」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
そうこうしているうちに衣服屋に辿り着くと、その前でホムタのお供の男が待ちくたびれた様子で立っていた。
そういえば、ホムタがヤヒコと言っていただろうか。
「ず、い、ぶ、ん、と、遅かったですね!」
散々待たされたせいか、機嫌はあまり良くないようだ。
「あの盗人が悪いんだ。あいつ街の端っこまで逃げやがって、そりゃあ時間は掛かるし、さすがの俺様も疲れたぜ」
「目立つ行動は控えてくださいと言っていたんですが。はあ……」
ヤヒコは無神経な行動を取ったホムタに呆れているようだ。
もう何を言っても無駄だと思ったのか、ため息をついたヤヒコは一緒に現れたシュカと視線を合わせた。
「あなたがシュカ殿ですね。私はホムタ様の従者をしているヤヒコと申します。以後御見知りおきを」
そう言って恭しく頭を下げる。
「あ、シュカです。って、どこかでお会いしましたか?」
「ヤヒコは、なんでも知ってるんだ。わからないことがあったら聞くと良いぞ。機嫌が良ければ教えてくれるさ。もうそんなことよりさ、さっさと買い出しなんか終わらせて氷都に行こうぜ!」
シュカは自分の名前を呼ばれたことに驚かされたが、それよりもその後にホムタが言ったことのほうが気になった。
「あれ? ホムタも氷都に行くところだったんだね」
「ああ、こんなに寒いって知ってたら来なかったんだけどなあ。……ん? 『も』ってことはシュカもか? 一人で?」
「うん、ちょっと訳ありなんだけど。氷都の王宮にならあるかもしれないっていう氷魂草を求めて来たんだ」
シュカはこの旅の目的を彼らに話す。少なくとも、この二人は信用して良いと思えた。
「氷魂草、ですか……。確かに、氷都の王宮にある可能性は高いでしょう」
その根拠はどこからやってくるのかわからないが、ヤヒコもそう思っているらしい。
たとえ王宮になくても、生えている場所を聞いて探しに行く覚悟はできている。
「シュカにも事情があるってことだよな。……なら、一緒に氷都まで行こうぜ。どうせ俺たち二人だし、一人増えてもそんなに変わらねえ。旅は道連れっても言うしな」
「ミコ、また勝手に……」
「どう見たって、シュカは悪い奴じゃねえし、ヤヒコだってそう思ってんだろ。行き先も一緒なんだから、な? 良いよな」
二人の話はシュカが合流する方向にどんどん進んで行く。ホムタが一方的に進めているだけだが。
「どうせ私が何を言っても拒否するくせに……。良いですよ、ミコの子守りは多い方が楽ですからね!」
「子守りってなんだよ! 俺をガキ扱いすんな!」
彼らに合流して氷都へ向かえるのは、シュカにとっても有り難い提案だった。
「あはははは。ホムタとヤヒコさん、氷都までの短い間ですが、どうぞよろしくお願いします」
シュカは彼らのやり取りが微笑ましいと思いつつ、共に氷都へ向かう決断をするのだった。
「お二人共、とてもお似合いですよ」
衣服屋の前で並んで立っているシュカとホムタにヤヒコの声がかけられる。
その二人はというと、先ほど取り合ったコートをお揃いで着ていた。
どちらも譲り合うあまり、試着をして決めようという話になったのだが、小柄なホムタにとっては丁度良い大きさで、シュカは背中の翼が邪魔をして同じサイズのものを着ることができなかった。
つまり、その時点でホムタが着ることに決まったのだ。
しかし、それで話が決着したと思っていた所、店主からもう一回り大きなものがあることを聞かされ、その話にシュカが飛びついた。
改めて他の防寒具を見て回っても、これといったものが見つけられかったからでもある。
さらに、シュカのコートはいつでも翼を出せるように少し調整をしてもらった。
碧空の民用に服を加工するのは初めてだったという店主はとても満足そうだ。それだけ服が好きなのだろう。
ひと悶着あったが、結果的に双方が満足する形に収まって良かった。
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