第7話「炎龍」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
「……え、何これっ!?」
思わずまばたきしたシュカが目を開けると、そこには盗人が築いた氷壁を取り囲むように君臨する巨大な炎の竜巻があった。
それはまるで、天に昇る真っ赤な体躯の龍のようだ。
さすがに炎の竜巻に四方を囲まれてしまっては、盗人も逃げることはできないだろう。
巨大な竜巻を見て何事かと、街中の人が少しずつ集まって来ている。その中には南天の兵士の姿もあった。
竜巻が落ち着くと、熱波に充てられた影響か、盗人が気を失って倒れていた。
そこに南天の兵士が集まる。
後のことは彼らに任せるべきだろう。
少し離れた所に盗まれた首飾りが落ちていた。
シュカはそれを拾い上げる。混戦の中で既に落としていたのか、あの爆炎を避けれたようだ。
首飾りを盗まれた当の本人は、満足そうに笑みを浮かべている。
兵士たちが後処理に追われている中、シュカは盗人から取り返した首飾りをホムタに差し出した。
「お、ありがとな。あんな奴本気出せば、一人でも余裕だったんだけど。ま、シュカだってやるじゃん? 最後のアレ、めちゃくちゃカッコよかったぜ!」
「ホムタには敵わないよ。僕だけだったら、間違いなく逃げられてただろうし、それにさっきのはたぶん、まぐれだから」
ホムタとは対照的で強気になれないシュカだったが、二人で力を合わせて一つのことを成し遂げた達成感か、自然に握手を交わしていた。
「へっ、俺様にはこれぐらい朝飯前だからな」
照れ隠しなのか、ホムタは頭を掻いている。
協力して盗人を捕らえた頃には、二人共喧嘩のことは忘れていたのだった。
「って、やっべえ。早く戻んねえと、ヤヒコに怒られちまう」
そう言うと、ホムタは踵を返して来た道を戻って行く。
だが、その途中で急に立ち止まる。
そして振り返ると、シュカを見て右手を振りながら大声を上げた。
「おーい、シュカ! 何してんだよ、さっさと戻るぞー」
同じ衣服屋に戻るなら一緒に戻れば良いという考えなのだろう。
シュカもそれを否定するつもりは無い。
「待ってて。すぐに行くから」
シュカの声を聞いて、また走り出したホムタを追いかけて飛び上がる。
シュカの顔もいつの間にか笑顔になっていた。
「ていうかさ、飛べるとかずるくね?」
傍で飛んでいるシュカに向かって、ホムタが言った。
「えー、そんなこと言われてもなあ。……それなら、一緒に飛ぶ?」
「いいのか!?」
ホムタの笑顔はノーと言う隙を与えない。
即座に諦めたシュカは、ホムタの脇を抱えてその身体を持ち上げる。
「へえ、これはずいぶん楽ちんだなあ。助けてもらっちまったし、さっきのやつはシュカに譲ってやるよ」
ホムタは先ほど二人で取り合っていたコートを譲ってくれるらしい。
「いや、僕のほうこそ別のものにするから。あのコートはホムタが着てよ」
しかし、シュカもそれを否定する。
冷静になった今となっては、なぜあそこまで執着したのか疑問であり、ホムタにコートを譲ろうと考えていたところだった。
「いいから、遠慮すんなって」
「別に遠慮してないから。ホムタこそ、実はまだ着たいって思ってるんじゃないの?」
今度は譲り合いが止まらなくなってしまう二人だった。
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