第6話「碧と黎(くろ)」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
盗人はやり手のようだ。シュカが放った風術に目を配って回避しつつも、対峙するホムタへの注意も怠らない。
風術は生成した氷の壁で防がれてしまうこともあった。
一方、ホムタの方も負けていない。
シュカの牽制を利用して盗人の死角を突こうと、その剣で襲い掛かる。
だが、盗人に明らかな隙と呼べるものが無く、上手く防がれてしまう。
それから攻防を続けていると、盗人に疲れが見え始めてきた。逃亡劇の影響もあるのだろう。
次第に動きが緩慢になってきており、大きな隙ができるのも時間の問題だ。
ホムタは盗人の死角を狙っての攻撃を繰り返す。しかし、ここまで一度も霊術を使う様子を見せない。
決め手にするために温存しているのだろうか。
純粋な瞬発力と膂力だけでホムタは戦っているということだが、シュカよりも小さなその身体のどこにそれだけの力が秘められているのか、非常に疑問だった。
未だ疲れ知らずのホムタは、盗人に休む暇を与えないように襲い掛かる。
すると、防戦一方になっていた盗人がついに躓いて、態勢を崩した。
「まずいっ!」
「『翔り焔』」
盗人が見せた一瞬の隙を見逃さなかったホムタが、空いている右腕を振るう。
その右手から発生した赤黒い炎が盗人へと向かって飛んで行く。
温存していた隠し玉を出したということは、ここが勝負どころだと判断したのだろう。
「くっ、『守れ』!」
慌てて盗人も氷の盾を発生させる。
しかし、氷の盾に衝突した炎は簡単に消えることなく、その盾ごと盗人を焼き尽くすかのような勢いだった。
瞬く間に辺り一帯に蒸気が発生し、白く靄がかかっていく。
「シュカ、今だっ! 全力を叩き込めええ‼」
「うん、待ってたよ。『白き猛虎、空昇る烈風』‼」
それは今までは成功させる自信を持てず、失敗してばかりの大技だ。
それでもなぜか、今だけは必ず成功すると思えた。
ホムタのおかげか、ドルナがくれた白石のおかげか、その自信がどこから湧いたものかはわからない。
とにかく、目の前の盗人を捕まえるために今こそ成功させる。
自信というよりも意志の力が強かったのかもしれない。
明確な要因はわからないままだったが、その手元からは確かに突風が発生した。
「『罪人に慈悲なき業火を』」
ホムタの持つ剣が、全てを焼き尽くしそうな燃え盛る爆炎を纏った。
この技はすぐに放てるようなものではないだろう。最初からこの大技を放つために力を制御していたに違いない。
シュカの大技に少し遅れて、燃え盛る豪剣が振るわれた。
発生したのは先ほど飛ばした炎が子供の悪戯と思えるほどの獄炎だ。
そして、シュカが放った爆風と連なり、盗人目掛けて飛んで行く。
先の小炎をかき消し、態勢を立て直した盗人は、自分を守るために巨大な氷の壁を生成する。
その対応の早さは敵ながら見事だった。
瞬時に築かれた大氷壁に向かって、二人の術が迫る。
しかし、氷壁に当たろうかという時、二人の術が引き寄せ合い、衝突してしまった。
大技がぶつかり合う様子は、衣服屋で喧嘩をしていたシュカとホムタのようだ。
押し、引き、互いに一歩も譲らずにぶつかり合っていた二つの術がまばゆい光を放ち、周囲の視界を遮った。
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