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第4話「追いかけっこ」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

 シュカが店を出て盗人を探すと、軽い身のこなしで家屋の屋根に飛び上がるのを見つけた。屋根の上を駆けて、遠くへ逃げようというのだろう。


 シュカは迷うことなく飛び上がり、盗人を追いかけ始めた。


「翼が治っていて、良かった」


 いざという時に飛ぶことができなかったら、きっと後悔していたに違いない。


 屋根の上を飛び始めたシュカの視界に、下の路地を俊敏に駆ける赤いものが目に入る。

 首飾りを盗られた少年も走って追いかけているようだ。


 通行人を避けながらも、走る速度は落とすことなく、少年が駆けている。


 下からでは、屋根の上を走る盗人の様子が見えないようで、飛んでいるシュカを目印にして追いかけているらしい。


「なんで、お前も追いかけてんだよ!」

「身体が勝手に動いたんだ。別に君のためじゃないから!」


「はあ? よくわかんねえけど、とりあえず助かったぜ。盗人野郎の追っかけはお前に任せるから、絶対に見失うんじゃねえぞ!」


「お前じゃないし、僕の名前は『シュカ』って言うんだけど!」


 なんとなく自分よりも年下だと思った少年に『お前』と言われたことが気に障ったのもあるが、口喧嘩の名残もあって、語調は強いままだった。


「おう、シュカっていうのか。へへっ、俺は『ホムタ』ってんだ!」


 ホムタと名乗った少年はどことなく嬉しそうで、シュカの語気の強さはそこまで気にしていないようだ。


 それよりも今はとにかく、目の前の盗人を見失わないほうが重要だろう。


「ちょっとミコぉ! コートはどうするんですかー?」


 二人が飛び出して来た店のほうから拍子抜けした声が聞こえてくる。遅れて店を出て来たホムタの付き添いの男が叫んでいたのだ。


「うるせー! すぐ戻るから待ってろっ!」


 ホムタは自身の首飾りが盗まれたというのに、この状況を楽しんでいるようにしか見えなかった。


 驚くべきことにホムタの走る速度はシュカの飛行速度とほとんど変わらない。むしろシュカに合わせているのだろうか。


 翼の具合も十分に確かめられたシュカは一層力を込めて羽ばたき、その速度を上げた。


 必死に逃げる盗人との距離も、徐々に縮まってきている。盗人を追う二人のスピードは、地を駆けるどんなエクーズよりも早いだろう。


 度々皙氷の民の通行人たちが何事かと振り返っていたが、あっという間に置き去りにしてしまう。


 ようやく盗人との距離が半分くらいになった。この距離なら風術を当てられるかもしれない。


「『遥かに、放て! 放て! 放てっ!!』」


 遠距離型の風術を幾つか放つが、背後にも目がついているかのように素早く回避する盗人に当たることは無かった。


 当たれば御の字くらいにシュカも思っていたので、それでも構わない。今は牽制さえできれば良かった。


 捕まりたくない盗人もただ屋根の上を走るだけではない。

 地上に飛び降りて頻繁に右左折を繰り返したり、通行人に紛れたり、氷術を使ってきたり、二人から逃げるためにあらゆる手を使ってくる。


「ホムタ、今降りた!」

「任せろ」


 地表に飛び降りた盗人をホムタが追いかける。

 盗人との距離が縮むことはあっても、開くことはなかった。


「おっさん、もう諦めろって。早く投降したほうが罪は軽いと思うぜ」

「そう簡単に捕まるわけねえだろっ! くそがぁぁああ!」


 盗人はまだまだ諦めるつもりは無さそうだ。


 ホムタの首飾りを盗んだ男の目的は、ただのお金目的なのだろうか。

 シュカは目立つ赤髪を目印にしてその後を追いながら、そればかり考えていた。

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