第2話「一人と二人」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
その後、美貂たちは早急に帰り支度を済ませ、江原の村への帰路に就いた。
シュカでさえ感じた皙氷の民の冷たい視線をあれだけぶつけられてしまったら、仕方が無いだろう。
一行との別れ際、忠猫に一つ忠告された。
――氷都は南天よりも想像を絶するほどの寒さだ。今の服装のままだとマジで死ぬぞ――と。
その言葉に従い、旅装を整えようと衣服屋を探すことにした。
シュカが一人で歩いている間は、見知らぬ人間がいるという懐疑的な視線を感じることはあったが、嫌悪感の孕んだ眼差しを感じることは無かった。
「服屋の場所くらい、聞いておけば良かったかなあ……」
自分だけでは衣服屋が見つけられず、後悔しながら彷徨っていると、ふと赤髪の少年と細身の男の二人に目が留まった。
皙氷の民の青白い肌と異なり、その二人は赤黒い肌をしている。肌の色さえ除けば、皙氷の民に似ている。
皙氷の民に赤黒い肌の人がいるとは聞いたことが無い。おそらく、シュカと同じく外国から来たのだろう。
赤髪の少年が街中をキョロキョロと見渡しているため、余所者であるということは容易に想像できた。
少年は傍の青年に何やら愚痴を零しているようだったが、シュカの距離では何を言っているかまでは詳しく聞き取れなかった。
青年の話をいい加減に聞いている様子の少年は、何かの視線を感じたのか、突如振り返る。
やや興奮しているように見えた少年が視線の先に捉えたのは、シュカだった。白い翼に関心を持ったのだろうか。
シュカも同様に目を逸らすことができず、二人は目と目が合ったまま固まった。
明らかにこの国の人間ではないお互いのことを見つめ合ってしまう。
「赤黒い肌の二人はどこから来たんだろう……」
その時、シュカの目の前を一台の馬車が横切った。赤髪の少年の姿が見えなくなる。
馬車が通り過ぎるまでの時間が異常に長く感じた。
馬車が通り過ぎると、シュカが見ていた二人は忽然と姿を消していた。
もし、二人と話ができていれば、何か異国の話が聞けたかもしれないのに。
気を取り直して、シュカは他種族向けの衣服屋探しに戻った。皙氷の民向けの衣服屋はすぐに見つかったが、目的の店は全く見つからない。
南天が皙氷の民の街とは言っても、他種族向けの店はどこかにあるはずだろう。
しばらくして、シュカは自分で店を探すことを諦めた。
道行く皙氷の民に話しかけて、目的の店の場所を教えてもらうことにしたのだ。最初からこうしておけば良かったと、一人で反省した。
話してみると意外に気さくで、皙氷の民の女性はシュカの後方を指差した。
シュカが見落としていただけで、目指していた場所は近くにあったのだ。
恩人にお礼を告げたシュカは、教えてもらった衣服屋へと向かった。
「……! すごい!」
外から見ていた印象とは打って変わり、店内は明るかった。
色鮮やかな防寒具が店内に所せましと飾られている。
その分歩く幅が限られており、人とすれ違うのも苦労しそうだ。豊富な品揃えに目移りしてしまう。それだけでもこの店に入って良かったと思える。
だが、これといって気に入った防寒具を見つけられないまま、店内をブラブラとする時間が続き、そろそろ一周するかという所で、ひと際目を引くものを見つけた。
元になった素材まではわからないが、この辺りの寒さに強い獣の毛皮で作られたコートだろうか。
見るからに暖かそうで、デザインも好みのものだった。
自分の直感がこれしかないと告げている。
いざ、そのコートを試着してみようかと、その手を伸ばした時、その直前で何か硬い物にぶつかった。
「……!」
驚いたシュカがぶつかったそれを確かめると、その正体は自分と同様に伸ばされた赤黒い色の手だった。
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