表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碧空アルバム ~氷雪の王国編~  作者: 白浪まだら
1章「ゲオルキア」
24/102

第12話「油断」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

 順調に旅程は進み、あと一つ山を越えれば、南天の街に着く辺りまでやって来た。


 今は山道に入る直前の草原地帯で、エクーズたちを休ませるためにひと休憩していたところだ。


 そこでシュカは、一匹の可愛らしい小型の白い獣を見つけた。


 それは顔と同じくらいの大きさで、似た生物を見たことがある。色は異なっているが、おそらくレプス(兎のような獣)という愛玩獣だろう。


 レプスは多少警戒しているように震えていたが、それがむしろ愛くるしく、近付いて触ってみたいと思ってしまった。


「シュカ、ダメっ! 今すぐ離れて!!」

 シュカがレプスに触れようとする寸前、美貂が叫んだ。


 珍しい出来事にシュカは驚き、即座に美貂の方を振り返る。

 すると、その視線の先では何かが物凄い速さで通り過ぎて行く。


「へっ?」

 シュカが拍子抜けした声を上げた時には、それは彼方へと消え去っており、もうその姿を見ることはできない。


 頬の辺りに僅かな痛みを感じて触れると、手にうっすらと血がついた。

 そこでようやく、何が起こったのか理解する。


「さっきのはラピドゥレプス(漢字で「瞬兎」表記)。見た目は可愛いけど、騙されちゃダメ! すっごく憶病だけど、あの子のせいで命を落とした人、たくさんいる」


 母が子を叱るように、シュカは美貂に注意を受けた。彼女はシュカの命を本当に心配してくれているのだ。


「美貂の叫び声に救われたな」

 そう言った忠猫が一応手当てをしてくれる。


「間一髪、だった……」

 緊張感から解放されたシュカは、尻もちをついた。


 愛らしい見た目で人目を引き、怯えているような様子も保護欲を掻き立てる。

 油断している相手に対して、瞬発力のある突進で気絶させたり、脱兎の如く逃げ出したり、どちらにしても一瞬で姿を消す。


 一度意識を失ってしまえば、他のビスティアに襲われて命を落としてしまうこともあるという。


「誰かと一緒なら、大丈夫。でも、せっかく治ってきた翼、また怪我しちゃったら大変……」

 怪我のこと以上にも、何か言いたげな視線だ。


「……そうだね、心配かけてごめん」

「ううん、シュカが無事ならいいの」

 反省したシュカが真摯な気持ちで謝罪すると、彼女も微笑み返してくれた。


 ここが危険なゲオルキア大陸ということを改めて痛感させられた。

 

 危険な大陸とは知りつつも、初めて見るものばかりで興奮が抑え切れていなかったのだ。


 忠猫という強き戦士がいてくれる安心感で、はっきりと危機感を抱く状況も少なく、気が緩んでしまっていたのかもしれない。


 だが、油断や慢心はこの世界ではいとも簡単に死を招く。

 シュカは気を引き締めるためにも、自身の両頬を思いっきりつねった。


「痛い!! けど……僕は死ねない、からっ!」


 決して手加減はしない。


「ははは、そんなに気を張っていると、疲れるぞ~」


 相変わらず忠猫は気の抜けた調子だが、シュカの気を紛らすためにあえてそうしているのかもしれない。


 とはいえ、ジュナを救うためにはシュカが道半ばで死ぬわけにはいかないのだ。

高評価やいいねボタンを押していただけると、作者のモチベーション維持・向上に繋がります! 泣いて喜びます! よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ