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碧空アルバム ~氷雪の王国編~  作者: 白浪まだら
1章「ゲオルキア」
23/102

第11話「用心棒」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

「噂をすれば、ビスティアのお出ましだぜ」

 用心棒として同行していた忠猫は、早く身体を動かしたくて、ずっとうずうずしていたのだろう。全身でこれから戦えることの喜びを感じているようだった。


 周囲の空気が変わったことに気が付いたシュカも、剣を抜いて一帯を警戒する。

 べラクイラに先制攻撃された時は、大陸に辿り着いた安堵から警戒が緩み切っていた。同じ過ちは繰り返さない。


 忠猫は嬉々として荷台から飛び出し、何回転もした後に見事な着地を決めて、臨戦態勢に入った。

 その手に持っている武器は槍。彼は槍使いの戦士のようだ。


 準備万端で敵の登場を待つ忠猫の前に、武装した二足方向の蜥蜴たちが並んで現れた。

 それぞれが剣を構えている。


挿絵(By みてみん)

(サウレクエのイメージイラスト)


「あの蜥蜴(とかげ)たちもビスティア? でも、一対五なんて卑怯じゃないか!」

 ビスティアに正々堂々という言葉が通じるわけがないだろうが、シュカはそう叫んでいた。


 だが、まさか本当に蜥蜴たちに言葉が通じたのか、横並びだった蜥蜴たちが慌てて縦に並び直す。それは忠猫に挑む順番を示しているかのようで、妙に律儀なビスティアたちだ。


「騎士の名前は、伊達じゃないってか」

 振り返らずに忠猫が言う。


「あれは、サウレクエ(蜥蜴の騎士の意味)って呼ばれてる。騎士みたいな姿をしてるけど、知能は高くないし、そこまで強くもないから忠猫一人で大丈夫」


「美貂の言う通りだ。シュカも下がってな」

 忠猫が蜥蜴たちに向かって駆け出し、槍を一閃する。

 いや、本当は一閃だけではなかったかもしれないが、シュカの目にはそう見えた。


 気付けば、先頭にいた蜥蜴の首がその場にボトリと落ちていた。


 その様子を見た後方の蜥蜴たちは、この一瞬で目の前の人間が自分よりも強者だとわかったのか、怯えで自然と後ずさりしている。


 残るは四匹だ。


 忠猫は既に次の一匹に狙いを定めている。


 しかし、殊勝なことに、怯えていた蜥蜴たちも逃げ出そうとはしなかった。一応騎士としての誇りもあるのかもしれない。


 とはいえ、さすがに一対一で戦うのはやめたようで、覚悟を決めたように一斉に駆け出した。


 それから、忠猫は四度槍を振るった。

 洗練されたその動きには一切の無駄がなく、彼がその場で踊っている間に蜥蜴たちが勝手に倒れたようにも見えた。


 流れるような忠猫の攻撃が蜥蜴たちに死をもたらす。

 忠猫の戦いは、槍舞いとも表現すべき優雅なものだった。


 サウレクエをあっという間に(ほふ)って戻って来た忠猫は、ようやく身体を動かすことができた開放感か、楽しそうだ。一つ不満があるとすれば、彼にとって相手が弱すぎたことだろう。


「やっぱり蜥蜴なんかじゃ、忠猫の相手にならない。龍にでもなって出直して来なよ」

 自分のことのように美貂が言ってのける。


「いやいやいやいや、龍なんか出て来てみろ。そんな格上に俺が敵うわけないし、それだけは絶対に勘弁してくれ。むしろ龍と出会わないようにだけ、必死に祈っとけよ。万が一にもそんなことは無いだろうけど、そん時はシュカも荷物なんかすべて投げ捨てて、とにかく逃げるんだぞっ!」


 シュカは尋常ではない焦りを見せる忠猫に両肩を掴まれて、前後に揺られてしまうのだった。


「あぁあああ、ああぁぁあ、忠猫おぉぉ、わ、わかったから、放してよぉぉおお」

 しばらくの間シュカは揺すられ続け、忠猫が力を緩めてくれるまで逃げられなかった。


 ビスティアとの戦いで用心棒の実力を見せてくれた忠猫だが、おそらくまだ本気ではないだろう。

 シュカがべラクイラに勝てたとはいえ、忠猫相手には十中八九、手も足も出せずに負ける気がした。

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