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碧空アルバム ~氷雪の王国編~  作者: 白浪まだら
1章「ゲオルキア」
19/102

第7話「エクーズ」

本職もあるため、更新遅めです……。

ご了承くださいませ<(_ _)>

 柔鼬の頼み事というのは、村を出発する前にエクーズ(馬やロバのような駄獣のこと)に乗れるようになって欲しいとのことだった。


 南天へと売りに行く馬にシュカが乗れるなら、村を離れる大人の数も最低限に減らせるそうだ。


 ただ、シュカにはエクーズの乗り方がわからない。そもそも翼を持ち、自力で飛べる碧空の民がエクーズに乗ること自体が稀なのだ。


 とはいえ、シュカにとっても、いつかまた飛べなくなってしまった時のために、移動手段が増えて困ることはない。


 柔鼬に勧められて、この村の中でもひときわ獣と心を通わせることが得意だという美貂に乗り方を教えてもらうことになった。


「エクーズ、乗ったことない?」

 エクーズに乗って颯爽とやって来て、シュカの前でピタリと止まって見せた美貂が、不思議そうな顔で尋ねてきた。


「うん、初めてなんだ。僕たちの国では飛ぶのが当たり前だから、それ以外の手段で移動する機会はほとんど無いんだよ。王様みたいな偉い人は別だけどね」

「ふーん、変なの」


 シュカの話にあまり興味が無さそうな美貂はエクーズの首筋を撫でている。彼女からは幸せそうな雰囲気が感じられ、エクーズのほうも、とても気持ち良さそうにしている。


 動物に対しては美貂も心を開いているのだろう。むしろ、人に対しての距離感を掴む方が苦手なのかもしれない。


 この時初めて見た彼女の自然な笑顔は、とても魅力的だと思った。


「じゃ、この子に乗って」

 青毛のエクーズに乗ったまま、美貂があっけらかんと言った。


 シュカは彼女の笑顔に感動していたせいで、何と言ったのか理解できず、固まってしまった。エクーズに乗るのは初めてだと言わなかっただろうか。


「……えっと、どうやって乗れば良いか、教えてもらってもいい?」

 全く乗り方を知らないから教えてもらおうとしているのに、さすがにスパルタすぎる。


 もしかすると、美貂は誰にも教わることなく、エクーズに乗れるようになったのかもしれない。琥獣の民ならあり得ない話でもないだろう。


「ん、どうやってって……。ほら、ひょいっと?」

「え、ひょいっと?」

 なぜ疑問形なのだろうか。全くその言葉を理解できなかった。


 シュカが困惑しているのを感じ取ったのか、彼女なりに身振り手振りを加えて、乗り方を伝えようとするのだが、エクーズに乗ったまま教えようとするので、わかりにくい。


 美貂もそれに気付いたようで、説明を途中で切り上げた。


「んー、じゃあお手本、見せる」

 エクーズからサッと降りた美貂は、シュカにもよく見えるようにゆっくりと実演を始める。

 左足を鐙にかけ、右足が地面から離れると、流れるように彼女の華奢な身体が宙に浮く。


 その美しさにシュカは思わず瞬きしてしまった。目を開けた時には、彼女はもうエクーズに跨っていた。


「こんな感じ」

「それが、ひょいっとってこと……?」

 最後は見逃してしまったが、身体を浮かすまでの流れは覚えている。美貂の手本を真似して、左足を鐙にかけて右足を上げてみた。


 しかし、思ったように身体が浮かず、醜態を晒しただけだった。傍に美貂しかいなかったのは幸いだろう。


 翼を怪我したのも影響しているのか、身体のバランスが上手く取れなくなっていた。


「よっ、ほっ。……あれ? これ以上は身体が上がらない……」

「違う。よっ、ほっ。じゃない」


 掛け声の微妙な違いを突っ込まれても、それだけで乗れるようになるとは思えなかった。

 自分と美貂では何が違ったのだろうか。思い返してみても、美貂と同じようにやったつもりだった。


 美貂はまたわけのわからない身振り手振りで、コツを教えようとしてくれるが、やはりわかりにくい。


 シュカが唯一理解できたのは、彼女が人に何かを教えたり、伝えたりするのが得意ではないということだった。


 シュカは美貂の手本を思い出しながら、何百回と挑戦する。

 懲りずに何度も挑戦するシュカだが、エクーズの方が飽きているように感じた。


 時折り休憩を少し挟みつつ、シュカはその後も根気強く挑戦し続けるのだった。

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