第6話「江原の村」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
なんだか良い香りが漂ってくる。その匂いにつられて目が覚めた。
美貂が朝食を作っていたようで、シュカの空腹を知らせる音が響く。
昨日よりも随分身体が楽になっており、自力で起き上がる分には問題無さそうだ。
今日も美味しいご飯が食べられることを二人に感謝しながら、シュカは朝食をご馳走になった。
朝食を済ませた後、シュカは村長宅の縁側に座り、元気に遊び回る村の子供たちや、せっせと働く大人たちの様子を眺めていた。
ただ、少し気になったのは村の子供たちの輪の中に美貂の姿が見つからなかったことだ。彼女はどこにいるのだろうか。
シュカは彼女を探すため、かつ自身のリハビリも兼ねて、村を見て回ろうと立ち上がった。まだ飛ぶことはできないが、歩くくらいは平気だ。
村の周りは手を伸ばしても届かない高さの木の柵で囲まれている。
村の隅の方には大きな畑があり、そこでは農作業をしている大人とそれを手伝う子供たちの姿があった。
十軒ほどの家が村の中心に集まっている。形はそれぞれ僅かに異なるが、村の周辺にある木々や植物の葉を加工して作ったのだろう。
サヴィノリアには木造の家がほとんど無いため、それはとても新鮮だった。
中央付近にある広場では、大人の女性たちが初めて見たシュカの話や昨日食べたべラクイラの話など、他愛無い会話に花を咲かせているようだ。
そして、美貂を探し回っているうちにシュカはあることに気が付く。
この村に住んでいる人々は差はあれども、誰一人の例外なく琥獣の民だった。
「シュカ殿は碧空の民かのう。ここ最近はすっかりその姿を見なくなったが、滅びたわけじゃなかったんじゃな。ちなみに、どちらを目指していたんじゃ?」
シュカは不意に背後から現れた柔鼬に驚かされてしまった。
彼らにならゲオルキアに来た目的を話しても問題は無いだろう。
「僕はシャンの奥地に行かなければならないんです。妹が炎呪という病に罹ってしまい、その治療のためには氷魂草が必要とのことで……」
「はて、炎呪とな……。そちらは知らんが、氷魂草のほうは話に聞いたことがあるのう」
「それは本当ですか!?」
シュカは柔鼬がもたらした思わぬ情報に飛びついた。
「ええ。シャンの都である氷都よりもさらに奥地、寒さ厳しい雪山に自生する薬草だとか。氷都の王宮にならあるやもしれぬ……」
「氷都の王宮……。今僕が飛べるならすぐにでも向かいたい所ですが、陸路で向かう方法は何かありますか?」
試しに翼を動かしてみるが、案の定まだ痛みが残っている。飛んで向かうのは難しい。
「数日休めば、また飛べるようになろう。それまで無理をするでないぞ!」
柔鼬にきつく念を押されてしまった。
さすがに無茶しがちなシュカでも、今の状態で無理ができるとは思っていない。
「……まずは南天という都市を目指すと良い。南天を経由して氷都へと向かう商隊に同行させてもらうと、楽に氷都まで行けるはずじゃ。南天より先は猛吹雪が多いと聞く。もし、困った時はそうしてくだされ」
氷都に行くためにまず目指すべきという南天。そこはどんな街だろうか。
それと氷都までに猛吹雪があるという情報。今の服装では心もとないだろう。
「シュカ殿は本当についておる。ちょうど村の者たちを南天に向かわせて、家畜や農作物を売りに行く時期だったんじゃ。良ければ、一緒にどうかの?」
シャン南部には大きな街がなく、稀に商人がこの村を訪れる以外は、中央部にある南天まで売りに行かなければいけないようだ。
「それはとても有難いのですが、お言葉に甘えても良いのですか?」
「もちろんじゃ。さすがに氷都までは行けないが、これで恩を返せるというもの」
何かを企んでいるような人物には見えない。信頼しても良さそうだ。
「何から何まで、本当にありがとうございます! 南天から先は自分でなんとかしようと思います」
シュカは頭を下げて、感謝の意を示す。
「先ほど南天まで送ると言っといてなんじゃが……一つだけ頼み事を聞いてはもらえんか?」
「頼み事ですか……?」
頼み事と聞いて、シュカは顔を上げる。
それがシュカにできることなら、もちろん断る理由は無い。
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