第5話「命拾い」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
シュカが目を覚ました時、視線の先には見知らぬ天井があった。
植物を編み込んで作られたような天井だ。つまり、どこかの室内で横になっているということだが、そんな場所を訪れた記憶は無かった。
そこでようやく、大鷲に止めを刺した後、自分も一緒に墜落したことを思い出した。その時に気を失ったのだろう。
ハッとして身体を起こそうとするが、上手く力を入らず、立ち上がることができなかった。
「これ、まだ大人しくしていなさい」
声が聞こえた方を振り向くと、そこには優しそうな老爺がいた。
その顔は毛で覆われていて、獣のような見た目をしている。琥獣の民で間違いないだろう。
「すみません。ええと、僕はどれぐらい眠っていたのでしょうか?」
「安心しなさい、つい先ほど夜を迎えたばかりじゃ」
その朗らかな声は、逸るシュカの心を安心させてくれる。
「儂は柔鼬、この江原の村の長じゃ。村の傍にある林の中で倒れていたところを村の男たちが見つけたんじゃよ」
「僕はシュカと申します。危ない所を救っていただき、ありがとうございました。力が足りず、相打ちになってしまったようです……」
あのまま林の中で気絶していれば、他のビスティアに襲われた可能性もある。近くに村があって本当に良かった。
「あの獰猛なべラクイラと一騎打ちで戦うなど、危険なことをなさる。あやつが村の近くに巣を作り、ここ数年ずっと悩まされていてのう。空飛ぶ相手となると、儂らもなかなか手が出せず、感謝するのはむしろ儂らのほうなんじゃよ」
べラクイラというのは、シュカが戦った大鷲のことだろう。
シュカが自分の身体を眺めると、傷付いた翼も手当てされていることに気が付いた。重傷ではないだろうが、飛べるようになるには少し時間がかかるだろう。
「いえ、翼の手当てもしていただいたようですし、お互い様ということで」
「翼の手当てをしたのは孫娘の美貂じゃ。この子の父母は出稼ぎに出ておってな、今は儂と二人で暮らしておる」
村長に背中を押されて紹介された美貂は、黙ったままシュカのことを見つめている。
彼女はジュナと同い年くらいだろうか。村長と同じように、彼女も獣に近い見た目をしている。
「ありがとう、美貂」
シュカが彼女へのお礼を素直に言ったが、美貂はただ頷くだけだった。
「人見知りしてしまう子で、すまないのう」
柔鼬はそう言ったが、ジュナも知らない人に話しかけられたら、きっと黙ってしまうだろう。シュカも子供の頃はそうだった。
不意に良い香りが漂ってきて、空腹を報せる音がシュカのお腹から響いた。
「積もる話はさておき、まずは晩御飯じゃ」
美貂に支えられてシュカも身体を起こし、彼女が準備してくれていたというご飯を食べることになった。
隣に座った美貂は終始無言でご飯を食べている。
シュカが止めを刺したべラクイラはすぐに解体され、巨大な肉塊となったものを村の皆で等しく分けたようだ。
べラクイラの手羽肉、粟飯、木の実や果物、村で育てたという野菜など、様々な料理が並べられている。
べラクイラの果実風味の味付けはとてもシュカ好みだった。脂身のしつこさが緩和されて、より旨さを引き立てている。
初めて来たゲオルキアで、自力で食事にありつく必要が無いことにシュカはひたすら感謝した。
「美貂、とても美味しかったよ。ごちそうさまでした」
シュカは料理の率直な感想を美貂に伝えた。
「ん……」
そっけない返事をしてそっぽを向いてしまった美貂だが、どことなく嬉しそうに見えた。もしかすると、他人に褒められることにあまり慣れていないのかもしれない。
「さぞ疲れたことじゃろう。今日はゆっくり休んでくだされ」
ゲオルキアに着いて野宿の可能性もあると考えていたシュカは、この村の近くに落ちたことを幸運に思った。
慣れない長時間の飛行による疲労は想像以上だったようで、目を瞑るとすぐに眠りに落ちていた。
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