第7話「やりたいこと」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
「まじかよ。出し惜しみしたら、絶交だからな!」
「うん……行くよ。『穢れなき天華の煌めき、白龍の目覚め』」
シュカは碧空の護り手に言われた自身の内に眠る力の使い方にようやく気付き始めた。まだその力を使い切れてはいないが、今できるありったけをテムにぶつける。
「『無に帰す、零凪』」
テムも対抗して大技を放つ。
二人が渾身の力で叩き込んだ術がぶつかった時、音がピタリと止んだ。
最後の力を振り絞ったシュカはもう立っていられず、座り込んだまま行く末を見守ることしかできない。
だが、シュカが大技によって生み出した荒れ狂う暴風は、テムの術によって掻き消されてしまった。
周囲は無風となり、テムはまだそこに立っている。
渾身の技を完璧に無効化されてしまっては、もう負けを認めるしかなかった。
「はあ……。やっぱり届かなかったかあ」
「まだ負けられねえよ。でも俺に勝てるようになるのも、時間の問題かもな」
そう言ったテムが頬をさすっている。
どうやらそこにはシュカがつけたらしい浅い切り傷があった。
勝つことはできなくとも、自分の成長を確かに実感できた。
「うん。必ず勝てるようになってみせるから」
「いーや、絶対そんなことはさせねえ。俺はもっと強くなるし、せいぜい頑張るんだな」
テムが自信満々に言ってのけた。
シュカがゲオルキアに行っていた間、彼も力をつけていたのだ。決して自分だけが強くなっているわけではない。
それでも、追う目標がわかりやすくそこにいてくれるのは有難かった。
その後、テムと別れを告げる際に江原の村で赤黒い肌の少年から渡されたという手紙を受け取った。
間違いなくホムタのことだろう。
一人になった後、何が書かれているのか気になってすぐに読もうと思ったが、一度気持ちを切り換えるためにも辺りを飛び回ることにした。
飛び回った結果、やはり今読むべきだろうと思った。
自分の性格を考えたら、後回しにしてもそわそわしてしまうだけだろう。
封を開けると、手紙は二通入っていた。
まず一通目の手紙に目を通す。
――シュカ。無事国に戻れたみたいで一安心したぜ。
元気にやってるか? お前ならまあ大丈夫だろ。
俺とヤヒコは馬威たちの力を借りて、
国を元に戻すために頑張ろうと思ってる。
どれだけ時間掛かるかはわかんねえけど、
やれるだけやってみるつもりだ――
ホムタらしい簡潔な手紙だった。
どうやら馬威たちの力を借りることになったようだ。
彼らはそのために氷都へ来ていたということだろうか。
だが、シュカにとってはそこに自分がいないことに寂しさを覚える。
共に過ごした時間は短くとも、生涯の友になる可能性を感じていたのだ。
そして、もう一通の手紙には何が書かれているのだろうか。
気になり過ぎて我慢していられなかった。
――シュカ。故郷以外にシャンすらも救ったお前が
ジストゥスにも来てくれたらどれだけ心強いか。
シュカならまた何か起こしてくれるかもって、
期待しちまうんだ。でも、俺は面と向かって、
手伝ってくれって言えなかった。
どうしても、また危険なゲオルキアの土地に
来てくれなんて言えなかったんだ。
もしだ。もう一度ゲオルキアに来る覚悟が
あるなら……その力を貸して欲しい――
ホムタが自分の力を必要としてくれている。
素直にそれが嬉しかった。
シュカはホムタに借りた剣を見つめる。
「……それに、この短剣も返さないと」
自分が行った所でできることは限られているだろうが、もしそれがホムタの役に立てるのならば、行かない理由は無い。
気持ちはすぐに固まった。
大陸の東に聳え、黒煙を吐き出す巨山はここからも見える。
そのどこかにホムタの故郷ジストゥスがあるだろう。
シュカにはずっとやりたいと思っていたことがある。
ドゥスートラ――つまり、ゲオルキア大陸のすべてをこの目で見て回ること。
命の危機に瀕しながら、自分の力に自信を持てるようになった今なら、それが可能かもしれない。
自分を必要だと言ってくれる人が待っているなら、そこに困っている人がいるなら。
「やっぱり僕は、ゲオルキアに行きたい!」
ホムタの力になるためにも、ジストゥスへ――。
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