第10話「首飾り」
本職もあるため、更新遅めです……。
ご了承くださいませ<(_ _)>
「シュカが必ず戻って来るって、私は信じてるから。これ、あげる。どうしても挫けそうな時、私の代わりだと思って握り締めてみて。不思議と力が湧いてくるの」
何かを取り出したドルナがそれをシュカに差し出す。
どうやら白く煌めく石を首飾りに加工したものらしい。
それは人肌のような温もりがあり、彼女の言ったとおりに握り締めると、自分の体の中心から力が込み上げてくるような感覚があった。
「実はこの辺りで拾ったものなんだけど。シュカの翼みたいに白くて、とっても綺麗でしょ?」
彼女はすでに吹っ切れたようで、いつもの調子が戻ってきたように見える。
これで憂いなく、ゲオルキアに行くことができるだろう。
とばっちりを受けたテムには同情しながらも、シュカは安堵した。
「うん、とても綺麗だ。辛い時や挫けそうな時、この首飾りに力を借りるよ。そして、僕は必ずここに帰って来るんだっ!」
シュカは改めて声にすることで、自分のやるべきことを再確認した。
薬草を手に入れるだけではいけない。
この地に持ち帰って来なければならないのだ。
「万が一……途中でくたばったりなんてしたら、一生恨んでやるから‼ けど、シュカがいない間はこいつで我慢してあげるわ」
ドルナはテムのことをこいつ呼ばわりして指差した。
シュカにはなんだかドルナが強がっているように見えて、それは不安を押し殺しているのだろうか。
そんな彼女に真の笑顔を取り戻すことも、シュカの目的に加えられるのだった。
「我慢ってなんだよ。俺がいれば十分だろ」
テムはドルナに突っ掛かるが、器用にあしらわれている。
彼女がテムを見る目は、心の底から嫌そうだった。
その表情にはシュカも思わず、笑ってしまった。
ドルナの要件が済んだところで、テムが話しかけてきた。
これまでの特訓で気づいたことを教えるために話がしたかったのだという。
「まずは謝らせてくれ。俺がお前の力を引き出せなかったことを」
「ううん、テムのせいじゃないよ。それにテムとの特訓があったからこそ、決闘で父さんに勝てたんだから」
「確かに、それは俺のおかげだな。なら、少しくらい自信もついたんじゃないか?」
「うーん。ちょっとだけ?」
「せっかく勝ったのに、なんだかなあ……」
「まあ、そんなことは別にたいした話じゃない。俺はさ、お前が自信を持てない原因が何か、考えていたんだ。……でも、俺の凡庸な頭では答えは出なかったよ。悔しいけど、俺じゃあお前の悩みを解決するきっかけにはなれないんだ」
シュカもテムと特訓してるだけでは気づけないことがあるのではないかと考えたこともあった。
父との決闘がそのきっかけの一つだったのかもしれないが、それが正しいと言い切る自信はない。
どこか悲しそうで、どこか不満そうな面持ちで話すテムだったが、一度深呼吸して気持ちを切り替えたのか、わずかに表情が明るくなったように見えた。
「それでもさ、ゲオルキアに行けば、何か変わるかもしれないって感じたぜ。もしもシュカが今も悩んでたら、これだけでも伝えておこうと思ってたんだけど、まあ、余計なお世話だったかもな」
テムは面と向かってシュカに話していたが、急に照れくさくなったのか、翼をぱたぱたとはためかせている。
「昔からお前は優しすぎるんだよ。それがお前のいいところなんだけどさ。今回はジュナちゃんのためとはいっても、お前がずっと行きたがっていた場所に行けるんだ。その目でしっかり見て来いよ」
と言いながら、テムがその手を伸ばした。
彼なりにシュカを元気づけようという気持ちが伝わってくる。
「うん……! テムが僕の友達でよかったよ」
そこにシュカの手も差し出され、握手を交わした二人はこれからも変わらない友情を確かめ合った。
「おいおい。俺たちは親友だろ?」
「そうだね、親友だ」
シュカの心の中はテムへの感謝の気持ちでいっぱいだった。
だからこそ、今までの感謝を込めて強く握り返してみた。
「いっででっ! おい、力入れすぎだぞバカ野郎」
痛がって咄嗟に手を離したテムに軽く頭を叩かれてしまったが、照れ隠しにはなっただろうか。
彼にはどれだけ感謝しても足りないだろう。
「いつも、それぐらい力んだっていいんだからな」
その言葉は意外にも核心を突いているのかもしれない。
テムが言ったとおり、ゲオルキアで自分を変えられたらとシュカは思うのだった。
「ちょっと! 私もいるの忘れないでよ!」
自然と二人の空気を作り上げてしまったため、その間になかなか割って入ることができなかったドルナは、いつもの不機嫌そうな彼女に戻っていた。
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