5 創造と練成
俺はスマホの画面を操作して【ブラウニー創造 15DP】をタップする。
目の前のに小柄な人型の光が生まれた。
光は一瞬で消え、茶色い毛むくじゃらの小人が姿を現す。
まるで耳の小さいチェブラー○カだな。
あちらと違ってこのブラウニーの方が随分人相が悪いぞ。
あっ、目が合った。
「…。」
「…。」
何かよくわからないが握手でもしてみるか。
俺はブラウニーにそっと右手を差し出す。
ブラウニーは少し小首を傾げて俺の右手を見つめている。
人間社会の知識は持ち合わせていなさそうだ。
無言で差し出した右手をしまった。
スマホを操作して次は【ワーム創造 10DP】をタップする。
細長い光の塊が出現し、光が消えると白い巨大イモムシが姿を現した。
全長2mぐらいあり、鋭い2本の顎がある。
イモムシ型のモンスターだけあって少々グロいな。
俺が人間だった頃ならもっと嫌悪感を抱いたかもしれないが魔王となった今ではそれほど嫌な感情はない。
俺も同じモンスターだからかもしれないな。
2体のステータスを見てみる。
名前:-
種族:妖精 (ブラウニー)
LV:1
肉体:G
魔法:F
速度:G
状態:-
スキル:マッドフォール
ストーンバレット
名前:-
種族:昆虫 (ワーム)
LV:1
肉体:G
魔法:G
速度:G
状態:-
スキル:パワーカット
暴食
なんとブラウニーの【魔法】ランクがFだ。
他2体よりDPコストが高い分、優秀だな。
ワームの方は【暴食】が気になる。
ただの食いしん坊ということでは無いはずだ。
【暴食】をタップしてみる。
暴食 食欲が増す。死後間もない死体を食べると少量の経験値が入る。
スキルの簡易な説明が表示された。
うへぇ、死体食べるのかよ。
ワームが死体を食べてる姿を想像すると凄い絵面になってしまった。
だが、経験値が入るのは凄いな。
経験値という得難い利益を生み出すのだからな。
上手く利用したらワームの成長が早くなるかもしれない。
2体共に初期モンスターに相応しいステータスだった。
これで創造可能なモンスターを全て創造してみた訳だが、残りのDP67をどうするべきかな。
候補としては罠追加、配下増員、装備の練成だ。
武器については相手から奪えるかもしれないので積極的に練成はしたくない。
でも俺と同格の魔王や人類と突然相手をしなくてはならない時が来るかもしれない。
そうなると装備を持って居ない俺は負けてしまうだろう。
やはり最初の装備は大事か。
罠や配下は武器を練成して残ったDPから創造したら良い。
それと、ダンジョンリフォームの時に凶器となりそうな道具は消えてしまったから武器の代用は出来ない。
考える程に練成した方が良いと思えてきた。
俺はスマホを操作してホームメニューの【練成】をタップした。
DP:67/400
練成:G
【武器】
【防具】
【装飾品】
先に【武器】をタップする。
【木のこん棒 10DP】
【木の弓 10DP】
【木の矢 1DP】
【木刀 10DP】
【木の杖 10DP】
【木の槍 10DP】
【石の片手斧 20DP】
【石の槍 20DP】
【石の短剣 15DP】
【石の矢 2DP】
案外高いな。
Gランクモンスター1体以上のコストだ。
どれにしようか。
俺は【肉体】にAPを割り振っているから能力をフルに発揮出来るか分からない弓は選ばない。
槍はリーチがある分、安全に扱えそうだが小回りや機動力を落とす可能性があるので選ばない。
俺のスキル【隠密】とも相性が良く無いからな。
性能的に木より石の方が強そうだからこん棒も無しだ。
となると【石の片手斧】か【石の短剣】だな。
短剣は使いやすさと軽さが魅力的だが、武器が短いと攻撃が通っても仕留めきれない可能性がある。
チャンスな時にキッチリ仕留めきれそうな斧が良いかな。
通常サイズの剣があれば良かったが、木刀しかないし。
今は斧で我慢だ。
【石の片手斧 20DP】をタップした。
足元の地面に石の斧が出現する。
柄は木で斧刃が石で出来ていた。
俺は石斧を拾って軽く素振りしてみる。
ブンッ
「おっ」
モンスターになったからか【肉体】Fのせいか、人間だった頃より随分軽やかに振れる。
これなら人間や初期モンスターぐらい1発で殺せるかもな。
次は装飾品を確認したい。
防具は身体を動かしにくくなりそうだから今は必要ない。
今着てる白Tシャツと黒ズボンだけで大丈夫だ。
俺は【装飾品】をタップした。
【木の数珠(マナアップ極小) 10DP】
【木のお守り(耐久アップ極小) 10DP】
【木のネックレス(力アップ極小) 10DP】
【石の勾玉(魔力アップ極小) 20DP】
【石の指輪(魔法耐性アップ極小 20DP)】
【石の腕輪(スタミナアップ極小 20DP)】
【妖精のミサンガ(速度アップ極小) 25DP】
全部効果は極小か。
装備するのとしないのとでどれだけ差があるんだか。
色々な効果があるが、効果の差を一番実感出来そうな力アップにしようか。
【木のネックレス(力アップ極小) 10DP】をタップした。
瞬時に木のネックレスが地面の上に出現する。
俺は木のネックレスを首に掛け、石斧を素振りしてみた。
ブンッ
なんとなくさっきよりパワフルだったような…気がする。
まあ期待して無かったし、おまじない程度に思っておこう。
残ったDPはモンスター創造に消費することにした。
ダンジョンコアの防衛が3体だけなのは心許ないからな。
俺はスマホを操作してスライム、ブラウニー、ワームをそれぞれ1体創造した。
これで残りDPは2だ。
確か400DP上限丁度分だけ使ったはずだが、2DP残ってる。
これは自然回復しているのだろう。
時間を計算すると体感2分に1DP回復するみたいだ。
じゃあ上限400DPまで自然回復するにはどれだけ時間が…
ピロロロロッ
突然スマホから着信音が鳴った。
スマホ画面を見ると、『侵入者を検知しました!』とメッセージが表示されており、ダンジョンマップに切り替わっていた。
ダンジョンマップを見ると北東辺りに赤い丸印が3つ固まって動いているのが見えた。
俺達も青丸で表示されている。
転生してまだそんなに時間が経っていないはずだ。
来るのが早い。
人類かもしれないな。
「先に創造したスライム、ブラウニー、ワームの3体は外の防衛設備を駆使してこの部屋の入口を守れ!」
「後に創造した3体は俺について来い!一緒に侵入者を退治するぞ!」
俺は配下に指示を出すと侵入者の居る北東へと向かったのだった。