28 神戸市の勇者達と連戦
俺が殺した勇者テルは強かった。
神戸市のモンスター達を駆逐して強くなったんだろう。
取り巻きのお仲間達はランクCかD相当の能力だったが、勇者テルの【肉体】ランクは俺と同じBはあった。
世界が生まれ変わってまだ3時間半ぐらいなのにトップ層はもうランクBなのか。
早い者勝ちのクエスト報酬を得た俺はトップ層だと思っていたが、今俺は独走してるのだろうか。
それとも追いつかれてるのか。
不安と焦りが心に募る。
「居たぞ!!撃てぇーっ!!!」
俺が勇者達の装備や素材を集めながら考え事をしていると、500人を超える大規模な武装集団が現れ遠距離スキルを一斉射撃してきた。
ブリンク!
間抜けな号令のおかげで隙が出来、何とか瞬間移動で回避した。
ファイアストーム!!
灼熱の炎が直径60m程の範囲で暴れ武装集団を襲う。
炎の中から輝く斬撃が2方向から飛んで来た。
中々の威力だ。
俺は横に飛んで回避する。
人間達を見ると、魔法使い達が魔法障壁でファイアストームの威力を減らし負傷者を回復させていた。
そして斬撃を飛ばしてきた2方向を見ると、淡く光る銀の鎧を着た剣士がそれぞれの方向に居た。
勇者が2人。
連戦続きでマナも体力もヤバい。
一旦隠れよう。
ブリンク!
俺は建物の裏に瞬間移動しスキル変身で人間の青年に姿を変えた。
暴虐の魔剣をアイテム収納袋に入れて、勇者テルに貫かれた右足を引きずりながら道路を歩く。
急がなければ、すぐに勇者達の捜索隊がこちらに来るだろう。
邪眼の指輪の効果でマンションに籠っている人間達を見つけた。
マンションに侵入すると2階に上がり人間が居る部屋のドアに手を掛ける。
ガチャガチャ
鍵が掛けられてドアが開かない。
なら力技だ。
バゴォオン
タックルでドアを破壊し、中に侵入する。
「ひっ、だ、誰だ!?不法侵入だぞ!」
リビングの奥に中年夫婦が居て、中年男が包丁を構えて叫んだ。
マナドレイン!
「なっ、なんだっ、妙な力が抜けていく…」
中年男から青い光が飛び出し、俺に吸い込まれていく。
「夫に何するの!出ていけ国勇軍のチンピラ!!」
中年女がパニックになりながらも近くにあった皿を俺に投げて来た。
国勇軍とはさっきの勇者軍団のことだろうか。
俺と勘違いするということはかなり市民から嫌われてるな。
中年男のマナを吸い終わり、中年女のマナを吸う。
「に、逃げよう!自警団に知らせてこんな奴は逮捕してもらおう!」
中年夫婦が逃げようとする。
レベルが低いせいで中年女のマナ総量が少なくすぐにマナを吸い終わり追いかける。
ドガッ
逃げる中年夫婦を殴り殺した。
「もっとマナが要る」
続けてマンションの数部屋に侵入し、マナドレインでマナを回復させ吸い終わった人間達を殺して回った。
次の建物に移動しようと思っていると、外の廊下からドタドタと足音が聞こえて来た。
「隊長!死傷者を発見しました!」
「こちらも発見した、先程の悪魔の仕業かもしれん、急ぎ勇者に連絡しよう」
恐らく誰かが通報したみたいだな。
勇者にチクる前に殺すか。
ガチャ
俺はドアを開けて廊下に出ると、スマホを持った戦士に魔法を撃つ。
スタンショック!!
「あ゛ぐぅっ」
1人は感電して倒れたが、他の数名は俺に向かって来た。
「捕らえて無力化しろ!」
スタンショック!!
俺は1人ずつ感電させていき、廊下に居る全ての戦士を倒すとマナドレインでマナを吸っていく。
「いたぞ!」
「隊長がやられている!」
「応援を呼びます!」
ぞろぞろと軍隊が集まって来る。
この人数を1人ずつ相手してられないな。
外廊下の開けた壁から外に飛び出す。
ブリンク!
向かいの細い路地に瞬間移動し、変身で中年男に姿を変える。
急いで人間が籠っているマンションを見つけて侵入し、マナを吸って回った。
死臭が漂う部屋の中でスマホを取り出しステータスを確認する。
「ダメだ、足らない」
レベルが21→23に上がっていたが、22APしか無いので【速度】をランクBに上げることは出来なかった。
スマホを仕舞い外廊下に出て外を見ると、偶然にも道路を走る勇者の部隊を発見した。
勇者は1人だった。
もう1人の勇者は見当たらない。
別々に行動してるのだろうな。
チャンスだ。
もうマナはフル回復してる。
やるか。
アイテム収納袋から暴虐の魔剣を取り出す。
人間の姿だと飛べないし、どうせ1発撃てばバレるから変身は解除しておく。
8階の外廊下から外に飛び出し、速攻で魔法を放つ。
インフェルノ!!!
勇者を中心にして地面から直径20m程の赤黒い炎が立ち昇る。
「敵襲!!攻撃を受けた!!」
「空に居るぞ!あそこだ!」
「サポートします!マジックシールド!ハイヒール!」
勇者の部隊は今の奇襲で半壊したが、すぐに残った魔法使い達が魔法障壁を展開し回復魔法を使う。
相手が態勢を整えてる間にこちらも準備をする。
ゴーストソード!
マナバーン!
俺が暴虐の魔剣を構えるのと同時に勇者も剣を構えていた。
ロングスラッシュ!!
「ホーリースラッシュ!」
俺の斬撃と、勇者の光を纏った斬撃が空中で交差しスパークする。
こうして俺と勇者の命を賭けた戦いが始まったのだった。