27 神戸市の勇者テル
現れた7人組の内1人は白金の鎧と槍を装備して他の6人より目立っていた。
もしかして勇者か。
インフェルノ!!!
出し惜しみや遊びは一切しない。
最初から全力で行く。
赤黒い炎が立ち昇り7人を焼く。
「う゛わ゛ぁあっ、マジックシールド!」
焼かれながら杖を持った魔法使いが即時に魔法防御を展開する。
「ハイヒール!!」
直にワンドを持った魔法使いが魔法で7人を回復させる。
耐えたか、これは手強いな。
マジックバリア!!
こちらも魔法に備えて魔法防御を展開し、次の準備に入る。
マナバーン!!
ゴーストソード!!
ロングスラッシュ!!
暴虐の魔剣の追加ロングスラッシュも発動する。
俺が剣技を発動させるのと同時に、相手も上空の俺へ攻撃を仕掛けて来た。
「ライトインパルス!!」
白金の槍から凄まじい速度で白い衝撃波が射出される。
魔法じゃないのかマジックバリアで軽減されず、避けきれなくて当たってしまった翼と足の一部に激痛が走った。
7人の人間達を見ると、俺の攻撃を躱せずにまともに喰らって戦士の2人が倒れ、他の5人も負傷している。
ゴーストソードの効果で鎧や盾をすり抜けた為に大ダメージが入ったみたいだ。
「プロテクション!!」
俺への対策なのか、すぐに杖を持った魔法使いがサポート系の魔法を発動させた。
「ハイヒール!!」
続けてワンドを持った魔法使いが回復させる。
これは消耗戦だな。
イリュージョン!!!
俺の分身が現れる。
以前使った時より【魔法】ランクが高くなったからか、9人分身出来た。
分身9人をけしかけ、ブリンクで一旦別の位置に移動する。
ロングスラッシュ!!
暴虐の魔剣の効果で追撃が発動し残像から追加のロングスラッシュが放たれる。
俺の分身と斬撃を防ぐことで人間の前衛達は精一杯だったが、弓を持った姉妹2人が俺に矢を放ってきた。
「「チャージアロー!!」」
黄色いオーラを纏った2本の矢が俺に迫る。
カァアンッ
1本は避け1本は暴虐の魔剣ではたき落とす。
ブリンク!!
再度位置を変えて違う場所から攻撃態勢に入る。
ロングスラッシュ!!
斬撃が当たり盾を持つ戦士2人の胴体が離れた。
「クソッ!コウキとソウタが!」
ようやく全ての分身を倒したところで戦士2人を失い人間達に動揺が走る。
「受けちゃダメだ!散ろう!」
ゴーストソードの斬撃がお気に召さないようだな。
斬撃のターゲットを分散させるようだ。
しかし盾役が居なくなったら勝ち筋は見えたようなものだな。
イリュージョン!!
新たな分身9人をサポートと回復の魔法使い達にけしかける。
ロングスラッシュ!!
斬撃が白金の鎧を着た男と弓を持つ姉妹に迫る。
「ブレイブランサー!!」
白金の鎧男が全身から神々しい光を放ち、槍で斬撃を打ち払った。
「きゃあああっ!!」
だが暴虐の魔剣の追撃までは届かず、弓使いの女を1人切り裂いた。
「カナっ!」
白金の鎧男が斬られた女を心配して振り向く。
隙あり!
ロングスラッシュ!!
「くっ」
反応が遅れた白金の鎧男の横腹に斬撃が当たり血を流す。
今だ!
レイジパワー!!
俺の身体が一回り大きくなり力が増す。
ロングスラッシュ!!
「ブレイブランサー!!」
俺と白金の鎧男が同時に技を繰り出す。
ギィィィンッ
俺の飛ぶ斬撃が白金の鎧男の槍を弾く。
軌道を逸らされ斬撃は白金の鎧男に当たらなかったが、隙が出来た。
ブリンク!!
白金の鎧男の後ろに瞬間移動すると、攻撃態勢に入る。
トリプルスラッシュ!!
俺を見失った白金の鎧男に高速の3連斬を叩き込む。
暴虐の魔剣の追撃を合わせれば6連斬だ。
「う゛わ゛ぁああっ!!」
白金の鎧男は仰け反り、鎧の隙間から血が見えた。
「テル!」
生き残っていた女弓使いの片割れが怒りの表情で矢を放って来る。
「グランドアロー!!」
カァアンッ
暴虐の魔剣で矢を弾くと激しくスパークした。
かなりの威力が込められた矢だった。
ロングスラッシュ!!
女弓使いの移動速度は速くないようで、斬撃をまともに喰らい身体が半分になって地面に転がり落ちた。
「くそぉお!ハナまで!」
白金の鎧男は一瞬、斬られた女弓使いの方を見たが、直に俺の方を向いて槍を構えた。
その一瞬を俺は逃さない。
「勝負あったな!」
トリプルスラッシュ!!
遅れて白金の鎧男が槍で高速の剣技を捌こうとするが、2か所に斬撃を受けた。
「く゛ぅっ、ソニックラッシュ!!」
白金の鎧男は踏ん張り、疾風のごとく素早い突き技を繰り出す。
「う゛っ!?」
俺は咄嗟に避けようとしたが間に合わず右の太腿を貫いた。
痛い。
だがそんなことは気にしてられない、命をかけて戦っているのだから。
トリプルスラッシュ!!
「サンダーダイブ!!」
俺の剣技に合わせて白金の鎧男が槍に電流を纏い踏み出す。
──が、白金の鎧男の技は発動しなかった。
「フハハッ!!やっとマナが枯渇したみたいだなっ!!」
俺はそう言いながら高速の剣技を振るう。
威力の高いパワースラッシュを使わなかったのはダメージよりマナバーンの効果を優先させたかったからだ。
より多く攻撃をヒットさせることが出来るトリプルスラッシュを使う方がマナバーンには適している。
白金の鎧男のマナが無くなるのを待っていた。
マナを使わない【肉体】系スキルもあるが、ゴーストソードなどの特殊なスキルはマナを使う。
「ぐぅううっ」
白金の鎧男は6つの斬撃に切り裂かれ片膝をつく。
まだ死なないとは随分タフだ。
チャージスラッシュ
暴虐の魔剣に黄色いオーラが出現し徐々に大きくなっていく。
「お前は勇者だな?」
「…」
「お前が答えないならお仲間の魔法使いに聞くさ」
まだ俺の分身達と戦っている魔法使いの方に身体を向ける。
それを見た白金の鎧男がようやく口を開いた。
「…そうだ、オレは勇者だ、お前を殺す勇者なんだっ」
「どうやって?魔法使いのマナも破壊してあるからお前を回復させて逆転なんて出来ないぞ?」
「何が何でもお前を殺すっ、それが勇者だっ」
「俺もどうしたってお前等勇者を殺したいんだよ、それが魔王だ」
「お前なんかに殺されるかっ!勇者は負けないっ!うぉおおおおお!!!」
傷だらけの勇者が立ち上がり、俺に向かって槍を突く。
俺は溜めていたチャージスラッシュを振り下ろした。
ブゥゥ──ンッ
溜め込んで巨大になった斬撃のエネルギーが勇者を斜めに分断し、アスファルトの地面を抉った。
「勇者も魔王も関係無い、強者が勝つんだよ」
分断された勇者の亡骸にそう言ってから俺はすぐに2人の魔法使いの元へ向かい、暴虐の魔剣でバラバラに斬り刻んだのだった。