15 荒野のダンジョン攻略
俺のダンジョンから北東に2km進み高槻駅の上空へとやって来た。
大きな駅周辺はやはり人が多いな。
俺は片っ端から魔法をぶっ放す。
ダークレイン!!!
駅周辺を囲むようにダークレインを連発する。
突如として出現した黒い雲に駅周辺の人間達がざわつく。
ファイヤーストーム!!!
荒れ狂う炎が広範囲に人や物を吹き飛ばしながら焼き尽くしていく。
火柱は10m以上にもなり、渦巻く炎は直径30mもあった。
すかさずまだ無事なエリアにファイアストームを撃っていく。
流石にこれだけ広範囲の魔法だけあってファイアストームは1発で消費するマナのコストが大きい。
しかし【魔法】ランクDだからかマナにはまだ余裕があるし、いざとなればマナドレインがあるから心配なく撃てる。
空の俺に気付いた人類が魔法を機関銃のように乱発してくる。
マジックバリア!!
【魔法】のランク差が大きく影響して透明なバリアを突破出来ずに人間の魔法は全て消滅する。
まだ世界のシステムを呑み込めてない警察官が拳銃を撃って来るが当然無力化されて俺にダメージは無い。
俺は攻撃の手を休めずファイアストームを撃ちまくる。
駅周辺は火の海となり人間達の姿が消えた。
建物に避難していても隙間から火は入るし周りの熱に耐えれず中の人間は息絶えるだろう。
もうすぐ他の地域から消防隊が駆けつけるだろうが無駄だ、もう殆ど生き残って無い。
だから消火活動を阻止しようとも思わない。
また人が集まっていたら襲えば良いのさ。
俺は燃え盛る高槻駅に背を向けて北へと移動を開始した。
ここまで派手にやってしまうと情報は拡散されるだろう。
後1時間もすればダンジョンに人がなだれ込んでくるはずだ。
それまでに出来るだけ多くの魔王を殺すか眷属化しておかないとな。
北の空を飛んでいると住宅街がプツリと途切れ、枯れた荒野になってるエリアに来た。
荒野のダンジョンだな。
上から見た感じではモンスターの気配は無い。
コウヤみたいに戦力を地下に集中させているかもしれないな。
スマホで入口を確認し魔王の剣を構えてダンジョン地下へと侵入する。
通路を進むと幾つかの罠が作動した。
シュキィン
床の穴から槍が飛び出して来た。
俺は槍を見てから難なく避ける。
【速度】ランクDなら余裕だ。
確かあれはセンサー式(槍)という罠だったな。
薄暗い通路では罠を検知しにくいし初期レベルの人間相手には効果的だろうな。
通路の先へと進むと、突如として床が抜けた。
俺は翼を持っているので飛んでそのまま先に進む。
ドォゴォンッ!
大きな音がして振り向くと、後ろの落とし穴に巨大な岩が落下していた。
飛べなかったら喰らっていたかもしれない。
中々にいやらしい罠だ。
そのまま飛びながら先へ進む。
ビビビビビッ
壁から電気が放出される。
流石に電気の速さを超えることは出来ず俺に命中するが、少しピリッとしただけで何の痛みも無かった。
そのまま先へと進むと、後ろでボウッと炎が放射され通路が明るく照らされる。
なるほど、さっきの電気で感電する想定の罠だったんだな。
感電して動けない所に床から炎か、普通なら結構なダメージを負っただろうな。
俺には無意味だったが。
尚もセンサー式の罠等が続いたが全て回避し、ようやく通路を抜けて部屋へと侵入出来た。
部屋に居た石の槍を持つ人間サイズの木製人形が6体で襲って来る。
ブレードダンス!!
踊る様に魔王の剣を振い、周囲を滅多切りにする。
全ての木製人形が斬り飛ばされ、木の破片が壁に衝突した。
遅れて奥から銅の槍を持った石の人間と人の顔が彫られた木彫りのオブジェが2体ずつこちらに接近してくる。
ファイヤーストーム!!
部屋が炎の渦に埋め尽くされる。
やべっ
マジックバリア!!
自分で自分の魔法を喰らいそうになったので慌ててマジックバリアを展開した。
駅と違ってダンジョンでは燃え広がる物が無いのでファイヤーストームの効果終了と共に火が消え視界がクリアになる。
部屋で立って居るのは俺だけだった。
床には黒焦げになった石の残骸と消し炭になった何かの跡があった。
あの石人間は可燃性だったみたいだな。
ゲームで登場してたゴーレムというモンスターに似ている。
宙に浮いていた木彫りのオブジェは知らないな。
どちらも一瞬で倒してしまったのでランクは低いだろう。
俺は部屋から出て階段を下りる。
新たな部屋に侵入すると、先程の石のゴーレムと木彫りのオブジェが5体ずつ俺を包囲しており奥に魔王らしき30代ぐらいの男が叫ぶ。
「総員攻撃っ!!」
石のゴーレムが走り出し、木彫りのオブジェが魔法らしき黒いベールを俺に仕掛けて来た。
が、何ともない。
ファイヤーストーム!!!
部屋は炎で満たされ、俺はマジックバリアで自分を守る。
炎が消えると、敵は全員焼かれて焼死体になっていた。
魔王が進化してなかったな。
恐らく罠で侵入者を倒してしまって経験値が入らなかったんだろうな。
それに木製人形と石のゴーレムの2種類同じようなモンスターが居たから【創造】のランクをF以上に上げてたんじゃないかと思う。
銅製の槍とか持ってたし【練成】もFに上げてたかもな。
そういう魔王自身が後ろに籠るタイプはもしもの事が頭に過って戦闘に参加したがらない。
だから罠で侵入者を倒してしまってることに加えて余計に経験値獲得のチャンスが減り成長が遅れるんだと思う。
こういう魔王を見ると俺の選択は間違いじゃ無かったと改めて思うよ。
焦げ臭い部屋を出て先に進むと、ダンジョンコアの部屋へと到達した。
魔王が死んでもダンジョンコアはそのままの状態みたいだ。
俺はダンジョンコアを手に取ってみた。
特に何も起きない。
俺はアイテム収納袋にダンジョンコアを突っ込み、スマホを確認する。
『クエストを達成しました』
やった、またクエスト達成だ。
【フリークエスト】をタップして報酬を受け取る。
『【人類を10000人討伐する】を達成しました』
『以下の報酬を受け取りました
500DP
6AP
邪眼の指輪』
なんと1万人も殺していたとは。
確か高槻市は105k㎡の面積に対して人口が34万人程だったはずだ。
まぁ大きな駅を襲撃したわけだしそりゃそうか。
地面にカランッと落ちた指輪を拾う。
「うげっ、何だこれ」
指輪には宝石の代わりに蛇の目みたいなのが付いていた。
眼球丸ごとではないが、瞳を含む球体の一部が指輪の装飾として取り付けられている。
そしてこの眼がギョロギョロと動いているのだ。
スマホで指輪の詳細を確認する。
邪眼の指輪 周囲30m圏内のあらゆる存在を看破する。
看破するということは逆に不可視の存在だったり身を隠すスキル等があるということだな。
初見殺しになる前に入手出来て良かった。
俺は邪眼の指輪を左手の人差し指に嵌めた。
周囲には特に何もいない、当然だが潜伏してる者はいないようだ。
コウヤ達はどうなってるかな。
【ダンジョンマップ】で俺とコウヤのダンジョンを確認する。
両方共に侵入者は3つ以下で配下も十分残ってる。
コウヤも無事だ。
少し安心すると、ステータスを確認する。
レベルが6→10に上がっていた。
う~ん、10000人以上は殺したのにレベルが4しか上昇していないのか。
どうしてもJRPG基準の感覚で捉えてしまい、もっとスイスイ上がるイメージがあった。
思ったよりレベルアップによる必要経験値に幅があるのかもな。
俺だけじゃなくて魔王全員そうなんだろうから、別に文句は無いけどさ。
レベルが上がったことでAPが増え現在は29APある。
次は【能力UP】でAPを割り振り、【肉体】をランクD→Cに上げた。
ランクD→Cに必要な10APだった。
続いて【魔法】をランクD→Cに上げた。
残り9DPなので後は振らずに残しておく。
【肉体】と【魔法】のランクが上がったのでステータスからスキルを確認する。
新しいスキルを3つ習得していた。
レイジパワー スタミナを消費して肉体を強化する
ロングスラッシュ 遠くまで斬撃を繰り出す剣技。
スタンショック スタン状態にする闇の電気エネルギーを放出する。
早速この元ダンジョンコアの部屋で試してみる。
レイジパワーを発動すると力が膨れ上がるが、常にスタミナを消費するようになった。
ガス欠に注意だな。
ロングスラッシュはより遠距離に斬撃を飛ばせる技だ。
全力でやって30mぐらい先まで斬撃を飛ばす事が出来た。
スタンショックは黒紫の電気を飛ばす魔法だった。
発動から着弾まで素早いが単体にしかヒットしそうにない。
使いどころは限られるかな。
新技の確認を終えたところで、俺はダンジョンを出たのだった。