表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/32

14 初めての眷属

敵のダンジョン領域に空から侵入する。


不自然過ぎる小山だ。


住宅街の端に(そび)え立つ山。


草木が生えたシンプルな山のダンジョンだ。


木が邪魔で上からではダンジョンコアの部屋の入口が分からない。


そういえば俺のダンジョンに侵入してきた人間の中には真っ直ぐダンジョンコアの部屋を目指してた連中も居たな。


スマホで分かるのか?


そう思ってスマホを見てみると、この山ダンジョンのマップが表示されていた。


敵や他の侵入者の位置は分からないがダンジョンコアと入口のマークだけ表示されているシンプルなマップだった。


中央から少し北側にダンジョンコアの部屋があるらしい。


スマホの示す位置に移動する。


【速度】ランクDだけあってすぐに入口へと到着した。


山腹に穴がある。


魔王の剣を構えて闇のオーラを刃に纏わせる。


妙だな、入口に防衛設備が全くない。


罠を警戒しつつ、横穴みたいな入口を突き進む。


ヒュッ


「っ!?」


突如として通路の壁から矢が複数本飛んで来た。


恐らくこれはセンサー式(矢)という罠だ。


罠を警戒していたおかげで反応が遅れずに済み素早く屈んで回避出来た。


これも【速度】ランクDだからこその成せる技だ。


警戒を一段階上げて進む。


ズズズッ


頭上から石と石が擦れるような音がして上を見上げると、天井が開いて巨大な岩が落下して来た。


自由落下なので矢よりも避け易い。


前に走って簡単に躱す事が出来た。


遅れてドォンと大きな音を立て後ろに岩が落ちた。


先へと進むと、下へ降りる階段があった。


躊躇なく階段を下りる。


降りたりた先は開けた部屋だった。


中に入ると30体程のモンスターが待ち構えていた。


「えっ?、あっ、撃つのですっ!」


奥の男が俺の姿を見て一瞬怯んだ後に叫ぶ。


見た目は華奢な青年だが恐らく魔王だ。


部屋の全方位に配置されていたスライム、ブラウニーが一斉に攻撃してくる。


魔王の男もマジックウェーブを撃って来た。


ブリンク!


俺はブリンクで瞬間移動し、男の背後を取ると魔王の剣を首に突き付けた。


「降伏しろ!」


男は驚愕の表情を浮かべ、口をパクパクしている。


男の配下のモンスターは主人に当たるのを恐れて攻撃してこない。


「早くしろ!降伏するのかこのまま俺に殺されるのかどっちだっ!!!」


わざと耳元で大声を出し、どういう状況なのかを強調させる。


「こ、降伏します!」


案外あっさりと降伏を受け入れたな。


「よし、賢明な判断だ、そのまま少し待て」


男の首に魔王の剣を突き付けたまま、片手でスマホを操作する。


ホームメニューに進化して新しく増えた【眷属化】をタップし400DPを消費した。


足元に複雑な文字の羅列が浮かび上がりサークルを形成する。


「なっ、なにを…」


「落ち着け!お前は降伏するんだろ?違うのか??」


「そ、そうです、降伏します」


「つまりお前は俺の眷属になって死なずに済む、そうだよな?」


「えっ、あのっ、配下じゃな‥‥」


「そうだよなっ!!!」


「は、はいぃ、なりますっ!眷属になりますぅ!!」


足元のサークルから光が迸り、男に吸い込まれていく。


完全に吸い込まれるとサークルは消え去った。


男は意識が明後日に行ってるのか恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべている。


スマホを見ると、【ステータス】に男が表示されていた。


名前:コウヤ

種族:-(-)

LV:2

肉体:G

魔法:F

速度:G

魅力:G

効率:G

情報:G

状態:眷属

スキル:マジックウェーブ

    マジックバリア


ちゃんと【状態】が眷属になってるな。


400DPもしただけあって眷属化に成功して安心した。


ステータスを見て他にも気になる点は幾つかある。


まだレベル2だったのか。


世界が生まれ変わってから1時間ちょっとだからこのコウヤという元魔王の方が普通なのかもな。


【魔法】を伸ばしてる。


【魔法】特化にでもするつもりだったのか。


あと種族が魔王じゃ無くなってる。


だからか【創造】と【練成】の能力が消えているな。


コウヤの役割に【創造】と【練成】は必要ないから大丈夫だ。


俺が400DPも消費してまで眷属を求めたのには理由がある。


それは─


ピロロロロッ


俺のスマホが鳴った。


『侵入者を検知しました!』


ダンジョンマップで状況を確認すると、新たに5つの存在が侵入してきている。


元から4つの侵入者と交戦していたから現在俺のダンジョンに9つの存在が侵入してきている。


3体程配下もやられているな。


丁度良い。


「コウヤ!眷属化されてもAPのシステムがあるのかお前のスマホで確認しろ」


「はっ、ナギ様の仰せの通りに!」


コウヤが素早くその場で跪き、ハキハキとした口調で答えた。


あれ、こんなヤツだったっけ。


まあ良いか。


そういえばコウヤの配下はどういう状態なんだろうか。


俺のスマホで確認してみると、俺の配下になっていた。


ではコウヤのダンジョンコアはどうだ。


ダンジョンマップを見ると、俺のダンジョンとコウヤのダンジョンを切り替えて見れるようになっていた。


下の階層にダンジョンコアの部屋があるらしい。


コウヤのダンジョンコアはマップに表示されているものの四角いアイコンになっていた。


球体じゃなくなったということか?


それに何か意味があるのだろうか。


「ナギ様、【能力UP】の操作及びステータスのAPは健在でございます」


「そうか、ではコウヤとコウヤの元配下全員は少しここで待って居ろ」


「承知致しました」


コウヤが深々と頭を下げる。


俺は急いで階段を下りダンジョンコアの部屋に入る。


台座にダンジョンコアがあったが、マップのアイコン通り立方体になっていた。


取り敢えず触ってみると、一瞬で景色が変わり似たようで少し違う部屋になった。


「は?どういうこと?」


中央のダンジョンコアを見ると立方体が元の球体に変わっている。


もしかしてと思い、スマホで自分の位置を確認すると、俺は自分のダンジョンコアの部屋に居た。


ワープしている。


もう一度触ればコウヤのダンジョンに行けるのだろうか。


ダンジョンコアに手を乗せるが何も起きない。


一方通行だったりして。


いやそんなことないだろ。


スマホを操作してダンジョンマップを開きコウヤのダンジョンコアをタップする。


すると景色が変わり、立方体のダンジョンコアがある部屋になった。


スマホで自分の位置を確認するとコウヤのダンジョンコアの部屋に居た。


なるほどな。


俺のダンジョンコアを触って他のダンジョンにワープするにはスマホで操作しないといけないわけか。


俺にとって便利だが、敵にも便利だ。


敵がコウヤのダンジョンコアに触れれば俺のダンジョンコアの部屋に直接来てしまうわけだ。


それじゃ2拠点も守らなくてはいけなくなる。


潰してしまえるなら潰した方が良いかもな。


遠い敵地に侵攻する場合は中継地点として活用されることもあるだろうが、コウヤのダンジョンは俺のダンジョンからかなり距離が近い。


残しておくだけ不利だ。


しかしダンジョンコアと魔王は命を共有してるわけだからこれを壊すと俺かコウヤが死ぬ可能性がある。


保留だな。


俺は急いでコウヤ達の元に戻った。


「元コウヤの配下達はここに残りダンジョンコアの部屋を死守しろ」


「…ナギ様、私めは如何致しましょうか」


「お前は俺が連れて行く」


俺は魔王の剣をアイテム収納袋に戻し、背筋をピンと伸ばして立って居るコウヤを担いだ。


「なっ、ナギ様っ!?」


「黙っていろ、舌を噛むぞ」


【速度】ランクDの爆速でダンジョンコアまで移動し、コウヤを担いだままタッチする。


景色が俺のダンジョンコアの部屋に変わると、階段を飛んで上り外に出た。


少し遠くに配下達が戦っているのが見る。


良いタイミングだ。


コウヤを地面に立たせて質問する。


「コウヤのダンジョンマップに俺のダンジョンが表示されるか確認しろ」


「は、はいっ!…ありました!ナギ様のダンジョンを見ることが出来ます」


「侵入者の赤いアイコンが表示されているか?」


「はい、9つも表示されております」


「よし、コウヤは今から俺のダンジョンの防衛を任せる、そこにある木の家はお前にやるから自由に使え」


「なんと!あり難き幸せ!このコウヤ、必ずや責務を全うしてご覧にいれます!」


「そ、そうか、どういう防衛の仕方にするかはお前に一任するし配下も自由に命令してくれて構わないが、敵は全てお前が止めを刺せ」


「はい…、それは私が経験値を得るということでしょうか?」


「そうだ、それでもしレベルが上がってAPを獲得したら全て【情報】に振れ」


「なるほど、承知致しました」


「お前だけは絶対死ぬなよ」


「っ!ナギ様はそれだけ私の事を…」


何か勘違いしてないかコイツ。


「さっさと行け」


ナギが慌てて俺に一礼し戦場に向かうのを見て、俺は空へと飛翔した。


今はDPが溢れている状態だが【創造】のランクが低い俺が配下や防衛設備を増やしてもしょうがない。


【創造】ランクの高い魔王を眷属にして配下を奪えば良いのさ。


しかし優先順位は俺のレベルアップが先だ。


コウヤに防衛の経験値を全て集める方針だから早めに【創造】特化の魔王を眷属化しても経験値を獲得出来ずにその時の【創造】ランクのまま変わらないことになってしまう。


【創造】特化の魔王を眷属化にするのは後でも良い。


人類の平均レベルが低い内に狩れるだけ狩っておくべきだ。


俺は人が良く集まる高槻駅へと目指して爆進するのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ