11 魔王の剣で侵入者と戦闘
走り初めて2分程で侵入者を見つけた。
自分でも驚くような速さだった。
流石は【速度】ランクFだ。
今度の侵入者は高齢者の3人だった。
俺は近くの木に隠れ3人を一応観察する。
「身体がよー動くわぁ~」
「はっはっはっ、本当に若返ったみたいやねー」
「お二人さん、浮かれてますけどこんな森になってたらワシらの家は無くなってますよ」
「かもねぇ、この辺は住宅街やったのに建物全部ありませんな」
また帰宅しようとしてたのか。
魔王みたく人類側も剣と魔法の世界で戦闘が出来るように身体を創りかえられたはずだから、高齢者は喜んで気持ちが強くなってるのかもな。
それに年寄りは周囲の意見を理解しづらいし、この人たちも世界がどうなったのか分かって無いんだろう。
俺は高齢者だからと情けをかけるつもりはない。
仕留めよう。
殺さず尋問して人類側が今どうなっているのか聞くという事も出来るが、時間が惜しいから俺はそんなのやらない。
魔法を高齢者に向かって念じようとしたその時。
ピロロロロッ
スマホが鳴ってしまった。
しまった!新手の侵入者か!
「何か鳴りましたよ」
「あそこから聞こえましたね」
俺の居る方向を指差しているだろうが、俺は木に隠れてスマホで新手の侵入者を確認する。
良かった、南東に赤丸3つだ。
最悪配下達だけで何とかなるはずだ。
素早くスマホを仕舞った。
接近されてしまったので魔法を諦め魔王の剣を構えて闇のオーラを刀身に纏わせる。
勢い良く木から飛び出し、手前の高齢者目掛けて剣を薙ぐ。
魔王の剣が簡単に首を刎ねた。
後ろの高齢者が何かリアクションする間もなく、高速の剣が2つの首を斬り落とす。
石斧と比べ物にならない程の凄まじい切れ味だ。
周囲に血が飛び散る中、俺は返り血を浴びるよりも早く動き出しその場から離れる。
南東に全速力で向かいながらスマホを操作してワームを北西の死体場所に配置した。
ピロロロロッ
「っ!?またか!?」
また侵入者の通知が来た。
南に4つの赤丸だった。
配下がまだランクGのモンスターだということを考えれば俺は数の多い方に向かうべきだ。
進行方向を変更して南に向かう。
2分程で南の侵入者達を発見した。
侵入者は4人の若者だった。
全員20台前半の男だ。
今までの侵入者達とは違い、明らかに周囲を警戒しながら進んでいる。
4人とも片手にスマホを持ち、もう片方に刃渡りの長い包丁を持っていた。
銃が無力化されていることを理解しているな。
モンスターとの戦闘を想定して行動している証拠だ。
接近戦はリスクがあるな。
スキル【隠密】のおかげでまだ俺の事はバレてない。
奇襲を仕掛けるべく俺は4人に向かって魔法を念じる。
マジックウェーブ!!
青い光の波が4人を弾き飛ばす。
「うぉっ!?」
前2人には重傷を負わせたみたいで蹲っているが、後ろ2人がすぐに起き上がりこちらを睨む。
「モンスターかっ!?」
「それしかないやろっ!見えんけどもう撃てっ!!」
マジックウェーブで軽傷だったのは想定外だった。
あの2人には魔法耐性がある。
倒れた2人には魔法耐性が無いから重傷だった。
何か仕掛けてくる宣言をされたし居場所がバレたから全速力で移動し左に回り込む。
「「ファイヤーボール!」」
2人同時に叫び、火の球が先程まで俺の居た場所付近に着弾する。
ボォウンッ
着弾した木が燃える。
火の魔法みたいだ。
俺の知らない魔法を使えるということは【魔法】の能力が高い可能性がある。
もし【魔法】の能力が高ければ【肉体】はそこまで高く無いだろう。
魔王の剣を構え全速力で侵入者2人に接近する。
「なっ!?」
俺に気付いた2人が包丁を持った手を動かそうとした瞬間、2つの首が宙を舞った。
「遅いな」
一言感想を漏らすと、内臓が潰れて蹲っている2人に魔王の剣を振り降ろした。
ブシュゥウッ
敗者の血が地面に飛散した。
初めてちゃんと戦闘を理解している相手と戦ったが全く問題無かった。
死体を喰わせる為、スマホを操作してワームをここに配置する。
急いで幾つかの包丁と骨、4つ全てのスマホを回収しアイテム収納袋に放り込む。
俺はダンジョンマップ南東へと走りだした。
スマホを確認すると、侵入者はまだ配下と出会っていない距離に居る。
「良かった、間に合ったか」
1分程で侵入者3人に合流した。
この連中も全員20代の男だった。
手にはノコギリ、包丁、ハンマーを持っている。
何しに来たのか知らないが服装からして土方だった。
マジックウェーブ!!
早速奇襲を仕掛け3人を弾き飛ばす。
「う゛う゛っ!?」
土方が呻き声を上げて地面に転がる。
【肉体】特化だったのかこの世界の仕組みを知らないからか不明だが、一撃で致命傷だ。
内臓をやられたみたいだな。
俺は魔王の剣を準備して飛び出し、1人ずつ首を刎ねた。
ダンジョンが平和になり俺はステータスでも確認しようとスマホを見る。
『進化が可能になりました、このメッセージをタップして進化先を選んでください』
運命を左右する様なメッセージが表示されていたのだった。