1 まずは説明から
気が付くと白一色の世界に居た。
ほんの数秒前まで勤務先で仕事をしていたのに、なんでだ。
周囲には人が沢山居る。
俺と同じ状況らしく突っ立って周りを確認している人が多い。
チラッと見た感じ全員知らない人だ。
何が起きてるんだろう。
『ヤッホー、みんな息してるかな~~?』
突然耳に青年の声が入って来た。
まるで透明なイヤホンから聞いているかのようだ。
周囲の人達にも聞こえたみたいで皆驚いている。
『ハイハイ、みんな落ち着こうね~~、今からキミたちの状況を説明するからさ~』
いや落ち着けるかっての。
こんな訳の分からない空間で謎手段の声聞かされてるんだから。
『キミたちはボクが創り出した聖域に居まーすっ』
は?何言ってんだコイツ。
聖域だの創り出しただの、言ってる事が飛び過ぎて嘘としか思えない。
『地球から連れて来たんだ、ボクが決めた基準を満たす人だけをね。その理由は──…』
謎の声は俺達の状況とこうなった経緯について説明してくれた。
まとめるとこうだ。
俺達の地球は別世界から来た女神と邪神が管理することになった。
どちらが主神になるかを決めなければならないが、神が直接戦うと世界が崩壊するので地球人に代理戦争をしてもらうことになった。
今話しかけてきた謎の声の主は邪神。
今この空間に居る俺達は邪神側、俺達以外の全人類が女神側に分けられた。
代理戦争では神の力を受けた存在しか参加できないので邪神と女神、両勢力の全員が生まれ変わる。
俺達をこの場所に連れて来た理由はモンスターの王、つまり魔王に生まれ変わらせる為。
すべてが滅茶苦茶だ。
いきなりそんな事言われても信じられない。
自称邪神なんていう怪しい存在の為にモンスターなんてなりたくないし、元人間と人間が殺し合うなんて出来るわけない。
『キミたちの性格とか思考って魔王向きだったんだよねーっ』
は?、俺ってそんな残忍だったっけ。
思い出そうとしても何故か自分の事が思い出せない。
自分の名前が平田凪だということ等は分かるが、他人との交友関係や両親や兄弟などの自分以外の人間との経験が全て無くなっているみたいだった。
『無駄だよー、戦いを躊躇しないように不都合な記憶は全員消去しておいたからね、女神側の人間も同じだよーっ』
俺達の考えは邪神に見透かされているみたいだ。
記憶の消去といい、まさしく神の所業だがやられてる身としては気持ち悪い。
勝手に人の記憶を消すなよ。
『文句を言っても無駄無駄!寧ろ気兼ねなく戦えるようにサービスで消してるんだよね』
邪神というだけあって一方的だな。
俺達の意見は聞く気が無いらしい。
それに俺は戦いたくない。
『キミたちが生まれ変わったら必ず人類に敵対心が芽生えるようにするし、女神側の人間もモンスターに敵対感情が生まれるようになるから戦いは避けられないんだよー』
どうしても戦わせたいらしい。
俺達は自称邪神と女神の争いに巻き込まれてるだけ。
理不尽だな。
『あと魔王同士は仲間じゃないからねーっ、女神との勝敗関係無く最終的に魔王は7人までしか存在出来ないからさぁー、どんどん魔王同士でも戦ってねーっ』
7人!?少なっ。
軽く周囲を見渡すだけで数万人は居るのにたったの7人までしか生き残れないのか??
女神側の方が良かったじゃないか。
『魔王に厳しいと思ったぁー?そうでもないよ、新しい地球ではボクらの力を使って貰う為に銃みたいな現代兵器とか過ぎたテクノロジー全般が無力化されるから女神側の人類も多くは生き残れない』
銃が使えないとなると、一体何で戦えって言うんだよ。
『地球人に分かり易く言えば剣と魔法の世界になるのさ、詳しくは地球で実際に確認してねーっ』
魔法か。
ふざけてるのか本当なのか。
剣と魔法のファンタジーといえばフィクション作品にありがちなあの世界観だよな。
だとすると魔王と人類では魔王の方が優れたスペックを想像してしまうが、自称邪神が怪し過ぎてそんな都合の良い事にはならないとも思えるんだよな。
『説明は済んだしそろそろ地球に戻すよー、後は地球でプレゼントされる特別なスマホから確認してよねー』
スマホ?
過ぎたテクノロジー全般を無力化するって言ってたじゃないか。
『とにかくキミたち魔王は人類とモンスターを殺して強くなれば生き残れるから、それじゃ頑張ってねーっ!』
自称邪神が言い終わると同時に俺の身体から黒い粒子が噴き出し、瞬く間に視界が暗転したのだった。
この作品はダンジョンバトロワをガチでやればどうなるのか語りたいだけです