チーズケーキと、元寮生
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お久し振りの更新です!
お話を忘れられてないか心配ですが、そんな時には再度読み直して頂ければ! とか図々しいお願いを言ってみたり。
それはそれとて、謎の怪異最終日。男子寮にあの人が参戦!
という事で、どうぞお楽しみ下さい。
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「それで。何でライジン先輩まで此処に居るんです?」
「冷たいなあパパっち。後輩の為に一肌脱ごうって先輩の心遣いって奴だよ」
男子寮の応接室、最も上座のソファーに何故か、ライジンが我が物顔で座っていた。五人の寮生からは呆れたような視線が向けられるも、本人は気にしてはいないようだ。
「ええー……助力が必要だったのは女子寮だけで、こっちは大丈夫だって部室でも言った筈なんだけど」
「アレだろ、イズミ先輩が女子寮に行ってるモンだから、仲間外れみてェで寂しくなったとかそんなトコなんだろ」
ナユタとカラハの言葉に一瞬気まずそうな顔をしたものの、ライジンは直ぐに乾いた笑いを上げる。
「ははは、やだなあカラハっち! 寂しいなんてそんな」
取り繕ったような笑いに、図星なんだな、と五人は揃って溜息をつく。
ローテーブルにはチーズケーキと紅茶が並べられていた。紅茶は当然ナユタが供したもので、ケーキは鳩座が伊勢市駅前の店で買って来た品だ。昨日の戦闘中にナユタと約束した物だったが、皆で食べた方が美味しかろうとわざわざホールで買い求めたのだ。
「まあまあ。戦力は大いに越した事無いでっしゃろ。でっかい蛇の方はともかく、ちっこい蛇がぎょうさん出て来るのを倒すのは人数多い方が楽やろうし」
「さっすが宮元っち、分かってるう!」
フォローした宮元にライジンがにんまりと笑う。その様子に肩を竦めながら、鳩座が紅茶を口に含んだ。
「確かにそれも一理ある。──期待してますよ、カラスマ・ライジン先輩」
「おお、鳩座っちまで! おっし、センパイ頑張っちゃうっすよ!」
上機嫌のライジンに、寮生長は苦笑を漏らした。──流石宮元と鳩座は上下関係の厳しい部に所属しているだけはある、『先輩』のおだて方を良く分かっているようだ、と内心肩を竦めた。
やいのやいのと会話が弾み、ケーキもあらかた片付いて紅茶も底を尽きかけた頃。
──ライジンが、すいと顔を上げた。
「……そろそろお出ましのようっすね」
その言葉に、皆の間に緊張が走る。それぞれがテーブルに茶器を置くと、途端にフッと漆黒が訪れた。
「さァて、戦闘開始だッ! 今日で終わりだってンだ、気合い入れてこうぜェ!」
立ち上がり叫んだカラハに同調し、皆がおおっ! と雄叫びを上げた。
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六人は三名ずつの二班に別れ、それぞれに探索を開始した。
A班は寮生長、ナユタ、カラハ。B班は宮元、鳩座、ライジンという編成である。寮生長と宮元は連絡要員だ。
片方の班が昨日のような膨大な数の蛇の発生などに行き合わせた際などに、速やかにもう片方が駆け付ける算段となっている。問題が無ければ神殿で落ち合う予定だ。
「しっかし、懐かしいね。俺っちは六班に居たんだけど、……やっぱ全然変ってないなあ」
廊下を進むライジンが灯り代わりの雷球を浮かべながら呟く。B班は北寮を巡回する役割だ。
「ライジン先輩も寮生だったんや? 知らんかった、マジっすか」
「ああ、俺っちが寮に居たのは一回生の時だけだったからね。二回生になる時に寮を出たんだよ」
「へえ。それはまた何でですのん? ……あいたっ」
ずけずけと踏み込んだ質問をする宮元に、鳩座が肘で脇腹を突いて非難の目を向ける。
寮は通常は二年間在籍するもので、途中で退寮するというのはデリケートな問題が絡んでいる事が多いのだ。無暗に踏み込んでいい話では無い。自分の失言に気付いた宮元が慌てて口を閉ざすが後の祭りだ。
しかしそんな二人の心配を他所に、ライジンはあっけらかんと宮元の問いに答えた。
「ああ、ホラ、イズミちゃん先輩がね、寮出て一人暮らしになるでしょ。イズミちゃん先輩って生活能力皆無だからさ、俺っちが面倒見ないと御飯もまともに食べられないもんで、俺っちも退寮して隣の部屋に住む事にしたっていう」
ああ……と二人から溜息が漏れる。じっとりとした目で宮元がライジンを見遣った。
「あの、つかぬことを伺いますが。お二人ってその、付き合ったりしてますのん?」
途端にライジンの顔が真っ赤に染まる。ブンブンと首を振り、慌てたように口を開いた。
「ち、違うって! ただの幼馴染だってば! つ、付き合ってなんか……もう、からかうのはよしてくれよ宮元っち!」
「……でもマンションの隣同士に住んで、食事の世話から何からしてますんやろ? わざわざ退寮までして?」
「だから世話してるだけだって! ホント、俺っちが面倒見ないとイズミちゃん先輩生きられないから! だから!」
宮元の追及にライジンがぶんぶんと腕まで振り回して否定する。その様子に溜息を吐き、鳩座がぼそり呟いた。
「……リア充爆発しろ」
「あー! もう! 鳩座っちまで! だから違う、違うって!」
喚くライジンに溜息をつき、二人は顔を見合わせた。肩を竦め合うと、さくさくと何事も無かったかのように雷球に照らされた廊下を進んでゆく。
ライジンはまだ耳が赤いままながら、そんな二人の後を慌てて追い掛けたのだった。
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さてさて女子寮組にはイズミ先輩が、男子寮組にはライジン先輩が参戦!
そんな感じでいよいよ戦闘開始です!
ホント更新が遅くなってすみません。今後はもうちょっと更新ペース上げたいと思います。
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それでは次回も乞うご期待、なのです!
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