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新入部員と、立つフラグ


  *


 結局、その日の話し合いでは何も疑問は解決せず、様子見という事で会議は終了した。


 そして実りが無かった会議に対して、別の方面では大きな収穫があった。鳩座隼人と能古ののこが正式に神話伝承研究会に入部する次第となったのだ。成り行きというのもあるが、本人達も強く希望した故の決定で在る。


「以前は迷惑を掛けたし、それ以降は何度か共闘もしているしで何だか今更感はあるけれど……こんな僕で役に立てるなら。これから宜しく頼みます」


「鳩座が居りゃア攻撃にも幅が出るしな。何たって飛べるのはデケェよな」


「しかし男子寮の二回生だけ層が厚くなってるわねえ。もっと女子も増えてくれるといいのだけれど」


「女子寮は人員が少ないからな、能古が加入してくれるのはありがたい。サポート役が居る事でヒビキ・ヒトミも戦闘に専念出来るだろうし、何より一回生が増えるのは喜ばしいことだ」


「ははははいぃっ! わわ、私! 頑張らせて頂きますうう!」


「ノコノコちゃんこれからもよろしくね! 一回生部員があたし以外いなかったから嬉しいよ!」


「本音言えば男子寮でも一回生の能力者がいればいいんだけど。どっかに落ちてないかな」


「そんな犬や猫みたいに言っちゃ駄目ですよ、カラハ君じゃないんですから」


「そいやカラハは野良だったのをナユタに拾われたんやったっけ」


「あら、カラハさんが猫を拾ったって話の方じゃないんですか?」


「違う違う、それは猫じゃなくて実は虎って話っしょ」


「あー、……コホン」


 わいわいと騒ぐ皆を咳払い一つで黙らせると、教授が改めて口を開く。


「よし、今日はこれで解散だ。また何かあれば召集を掛けるからな、皆心しておけ。──イサミ・イズミとカラスマ・ライジンはもう少し卒論の相談だ、教授室で続きをやるぞ。寮生は明日も試験、頑張るように。以上!」


 号令に背を押され、ドヤドヤと退室しながら皆は薄闇の中を固まって歩いてゆく。何で俺っちまで、とライジンだけがぼやいているが、皆は当然のようにライジンとイズミはセットだと思っているのでその嘆きは華麗にスルーされた。様式美というものだ。


「ねえねえ、そういえばノコノコちゃんって他に何か部活入ってるの?」


「あ、私は漫研部員です!」


「へえ、僕の後輩の猪尻君もなんだ。知ってるかな」


「あっあっ知ってますあのひとゲーム上手いんですよ凄いんです! 私もゲームすきだけどなかなか勝てなくて悔しくて悔しくてグリグリすると半泣きになるの面白いんですよう!」


「そ、そうなんだ。ちょっと可哀想だからぐりぐりは手加減してあげて欲しいかな」


「ノコノコもゲームやンだな。なあ、今度の休みにでもうちで皆でゲームやんねェか? 猪尻も一緒にさ」


「いいなそれ! ワイも呼んでえな!」


「あら、それならわたくしもお邪魔したいですわ。ゲームってあまりやった事なくて」


「そう言えば僕も寮に入ってからめっきりご無沙汰だね。ゲーム大会、いいんじゃないかい?」


 テスト勉強という現実から目を逸らしたいが為に、皆はロータリーの辺りでたむろして下らない会話を続けようとする。そんな寮生達に教授は顔をしかめ、解散を促した。


「いつまでもだらだら立ち話続けてるんじゃない、みっともない奴らめ。ホラ解散だ解散! 早く帰って夕食食べて入浴して勉強せんか。神道学科は点数低かったら追加課題出すからな、覚悟しておけ」


「ええマジっすか殺生な、堪忍やで教授」


「それが嫌なら真面目に勉学に励むことだな。ホラ行った行った、シッシッ」


 その様子に寮生長が笑いながら皆を促す。黄昏時のキャンパスは人も少なく、どこかうら寂しい雰囲気が満ちている。


「今日は何も無ければいいんですがねえ」


「パパ、それフラグだから言っちゃ駄目」


 ナユタの発言にはははと皆が笑った。


  *


「ホラやっぱりフラグだったじゃないか! 畜生!」


 ナユタが暗闇の中で叫んだ。


「私のせいにしないで下さいよナユタ君。起こってしまった物は仕方ないじゃないですか」


「にしても出来すぎだね。さあ探索に出掛けようか、マシバ・カラハ」


「しゃあねェな。行くか」


 その夜、またもや寮は暗闇に覆われた。風呂上がりにナユタの部屋で茶を楽しんでいた皆は、やれやれといった様子で立ち上がる。


「ではカラハ君と鳩座君が先行して下さい。ナユタ君と宮元君、私の三名は様子を探りながらすぐ後を追いますので」


 寮生長が非常用の電気ランタンを掲げながら言う。ナユタとカラハが戦闘装束を纏い、鳩座が翼を生やした。


「そっちは戦えるのナユタだけで大丈夫か?」


「火が効くみたいだから、小さいのならば僕の浄化の炎でイケると思う。まあそんなに離れる訳でも無いけど……そっちこそ気を付けてね」


「了解」


 そして五人は部屋を出ると、慎重に行動を開始したのだった。


  *





鳩座君とノコノコちゃんが無事メンバーに加入しました。これで教授とレイアを入れて部メンバーは十二人、結構な大所帯になりましたね。

実は部には名前も顔も不明の謎の先輩(以前ちらっとだけ話に出てきた未来視のできる四回生)も居たりするのですが、その人物は能力の重要性から、存在自体がトップシークレットとなっているので今後も多分直接出て来る事はありません。


ちなみに冒頭の台詞の応酬は、

鳩座→カラハ→レイア→教授→ノコノコ→ツクモ→ナユタ→寮生長→宮元→ヒトミ→ライジン

という順番でした。イズミちゃん先輩以外の全員です。



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