燃える炎と、黒い笑み
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今回は少し短いですが、ご勘弁を。
ちなみに猪尻もこの宮元も関西弁ですが、別に二人に特別な関係がある訳ではありません。
意外と関西人が多いので、そうなっているだけです。まあ一番多いのはやはり東海地方出身者ですが。
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「ああ痛あ、畜生、もう戻って来たんか……!」
ナユタが硝子戸の傍から転がり出たのを確認し、カラハが宮元から手を離し距離を取る。
途端、顔面を硝子に叩き付けられたにも関わらず、宮元は倒れるどころかまず悪態をついた。少しふらつきながらも大きな怪我はしていないらしく、些か頬が赤くなっている程度で竹刀も握ったままだ。
「まだまだ元気そうだなァ? そのドーピングのお陰ってか」
「その通り、お陰様でな! しゃあない、カラハから先に相手してもらおか!」
「自信満々だなァ。素人さんを相手にすンのは気が引けるんだが、ご指名とあっちゃア仕方無ェなァ!?」
そう言ってカラハはニヤリ牙を見せて笑うと、少し腰を落とし左半身を引いて斜めに構えた。ガンメタリックな色の燐光が身体全体から立ち昇り、肘から先と膝から下が淡く光っている。
対する宮元はまたもポケットから黒茶けた物体を取り出し、妖力の補給を図った。上段に構えた先割れ竹刀からは血の色めいた炎が噴き上がり、火の粉が宮元の周囲を舞う。
「素手たぁ舐められたモンやな? このチート野郎」
「素人相手ならこンでも充分、ってな」
「その鼻っ柱、へし折ったるわあっ!」
言うが早いか、宮元は長いリーチを利用すべく、素早く数歩踏み出すと燃える竹刀を力一杯振り下ろす。左肩を狙った少し斜めの軌道に合わせ、カラハは右腕で流すように竹刀を外側に逸らすと、そのままの流れ出左脚を踏み込み、低い姿勢で宮元の懐深くに踏み入った。
「んなぁ!?」
「テメェは踏み込み過ぎたんだよッ!」
一瞬の出来事に反応すら出来ず、驚愕に見開かれた宮元の目と、不敵に笑うカラハの目が合った。メタリックに光る鈍色の燐光が、後ろに引かれたカラハの右膝に集中する。
「俺らをコケにしたツケ、払って貰わねェとなァッ!?」
「ひっ──」
恐怖に引きつる宮元の悲鳴を、嗜虐と愉悦に満ちたカラハの声が掻き消した。
「──一撃で終わらせてやらァッ、感謝しろィッ!」
台詞と同時、カラハの右膝が宮元の鳩尾に叩き込まれる。尾を引く彗星めいた膝蹴りは紅の炎の膜を突き破り、黒銀の燐光が爆発の如く飛び散った。
余りの威力に宮元の身体は宙に浮き上がり、纏っていた深紅の炎が剥がれ空に散らばってゆく。勢いそのままに柱にぶつかり背中をしたたか打った宮元は、ずるずると滑り落ち床にくたりと倒れ込んだ。
手放された竹刀がカラカラと床を滑り、成り行きを見守っていた寮生長の足許に転がる。寮生長はそれを拾い上げると、ふむ、と少し思案した。
「取り敢えず一度、場所変えましょうか。幾ら人払いの結界があるといえど、少し騒ぎ過ぎた感がありますしね」
そして玄関ホールをぐるり見回し、肩をすくめる。気絶している宮元、シャツの右袖が破れ千切れたカラハ、更に着物全体がボロボロのナユタ。万一誰かに見られてしまったらどうにも言い訳が立たない状況だろう。
ちらり見上げた時計の針はなかなかの時間を指していた。寮生長は疲れた微笑で溜息をつきながら、今夜は眠れそうにないですね、と諦めたように呟いた。
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