第39話
『危険警告! 危険警告! 超高密度敵対反応出現。聖女強制再起動。システム再稼働まで三秒』
声に反応して、立ち上がる。
立ち上がることができてしまった。
つまりは、それだけの危機が、そこに迫っているということだ。
「どうしました?」
「……来るよ!」
アタシの声に反応したかのように、青空にビキリ、と亀裂が走る。
それは見る見るうちに割れ広がって、青空に真っ黒な空間を出現させた。
「……おっさん、みんなを下がらせろ!」
「何が起こっているのだ、これは……」
「早くしな! 魔王が来る!」
頭の中に響く声が、今までにない警戒信号を発している。
魔王四天王とやらを前にしても静かにしていたこれが、ここまで警告を発するというのだ、真なる神敵──魔王のお出ましに違いない。
黒い空間の淵を掴むようにして、何かが現れる。
真っ黒でボロボロのローブを着た、人型の生き物。
しかし、それが人でないのは……一目瞭然だった。
病的に白い肌には目がいくつもあり、鼻の位置には縦に裂けた口があった。
まるで水の中にでもいるように髪がゆらゆらと揺れ、その体の輪郭は強い魔力でぼやけている。
間違いない、魔王だ。
『魔王確認』
頭の中で、そう告げられれば確信もする。
「我が名は魔王ザ──……」
「ふっとべェー!」
薄汚い口が何か言いそうだったが、隙だらけだダボが。
くっちゃべってる暇があったら、さっさと死ね。
「き、貴様……我を誰と──……」
追撃の閃光が吹き飛んだ魔王に直撃した。
閃光と火柱が、魔王ごとモールデン平原を焼く。
「総大将がノコノコ出張ってダラダラと口上たれてんじゃないよ」
これで仕留められていればいいが。
どうやら、アタシってやつは燃費が悪いらしい。
頭の中ではしきりに『聖女稼働率低下』やら『システムエラー』やらとよくわからない言葉が響いているし、もう足に力が入らない。
「クカカカ……聖女め。このザダークの不意を二度も打った事、褒めてやろうではないか」
徐々に晴れる煙の向こう側から、声がした。
「しかして、後悔せよ。ここで貴様らを喰らいつくしてくれるわ」
煙の向こう側から、巨大な魔物が姿を現す。
それは竜のようにも獣のようにも見える異形の怪物。
「くぅ……ッ!」
仕留めきれなかったのは痛い。
聖女の力はまだ戻らない。
『聖女、軽損。このまま稼働を続ければ、崩壊の危険があります』
『救世システム、エラー。対象の脅威判定を修正。現状のリソースでの対応は困難です』
「セイラ。休んでいてください」
「エルムス……! ダメだよ、あんな化物、死んじまうよ!」
「さて、それをどうにかするのが、あなたの隣に立つ僕の役目ですから」
抜刀の構えで、エルムスがニコリと笑った。




